なぜ働いていると、本が読めなくなるのが? 感想
質問:働いていると、本当に本が読めなくなるのか?
※タイトルは、ベストセラーの新書タイトルを意図的に変えている。
(上の問への私の答えは「NO」で、詳しくは後述する)
📕三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
https://amzn.asia/d/ilnFPJB
(本の内容)
本書は(良い意味で)題名と内容がかなり異なる。
「忙しいビジネスマンが、いかに時間を捻出し、人生を豊かにする読書をすべきか?」を提言するビジネス書だと思ったら、
結論は「仕事にフルコミットしすぎて、レジャーを楽しむ余裕がない働き方を肯定する社会が間違っている。
労働と文化的な生活を両立させるよう、意識を変えよう」というメッセージで、どちらかというと文芸書に近い。
前半は「明治時代以降の日本の読書史」を振り返っている。
🔴長時間労働は戦前から日本の社会問題だった
🔴だが知識人はプライドのため、労働者は教養への渇望により、本を読んでいた
🔴自己啓発書(努力すれば出世できますよ系の本)は、明治時代から売れていた
🔴日本で紙の本が最も売れていたのは高度経済成長期で、その後は減る一方
🔴だが、自己啓発書の売上だけは今も増えている
後半は
🔴教養のための読書(純文学など)と、仕事で役立つ情報を得るための読書は、違う
(著者はどちらも否定していない)
・・・という、読書の根幹の意義を掘り起こすもので、自分の読書に対する姿勢を顧みることになった。
(※余談だが、日本は「純文学(芥川賞)」と「大衆文学(直木賞)」を分けている点でユニークだと、知り合いのアメリカ人の小学校の先生が話してくれたことを思い出した。)
さて、冒頭の質問に戻る。
私自身は「働き始めてからも、読書量は減っていない。」
高2の時から現在まで読書日記をつけており、毎年末、読んだ本の冊数を数えているが、
大学4年と社会人1年目で読書冊数に変化はなく、60冊前後だった。
だが、三宅香帆さんの本が、現在これだけ売れているのは、
「社会人になってから本が読めなくなった」
=「仕事が忙しすぎて余暇が楽しめないことに焦燥感を募らせる」人が増えていることを示唆しており、問題だと思う。
自分の読書量が減らなかった理由について、理由を考えた。
(1)読書はストレス発散法
仕事が忙しすぎて休む暇がない時、自分にとって最大のストレス解消法は
「読書」そして「日記(ブログ)に文を書くこと」である。
本を読むことで静かな時間を持ち、自分の心を見つめる。
つまり自分にとっての読書は、瞑想(座禅、写経)に近い。
仕事が忙しい時ほど、「どうするの、自分?このままじゃ、終われない」と焦りながら、
ひたすら読書量が増えるように思う(私のような人は、たくさんいらっしゃると思う)
(2)職業上、読まざるを得ない
語学教師をしている以上、生徒さん達に
「日本語でも英語でも、たくさん本を読みましょう」
「語学は、読書をしなければ、伸びません」
と毎日のように話す。
先生が本を読まないなんて、あり得ないし、
(日頃から本を読んでいないと、英検などの長文読解問題で高得点を取るのは難しいだろう)
生徒さんたちにも良い本を勧めたいから、本はあらゆるジャンルを読むようにしている。
私の場合、スクールの生徒さんに良い本を勧められたり貸してもらったりすることも多い。
(本が生徒さんとのコミュニケーションの最高の手段になる)
ただ、これは私の職業だから言えることで、
著者の三宅さんのように、リクルートの営業をバリバリやっている人の場合
「営業の仕事は楽しいが忙しすぎて、休日は疲れ切って読書の余裕がない」という話は大いにうなづける。子育てや介護をしながらフルタイムで働いている方々にも、同じことが言えるだろう。
(3)読書家の先生との出会い
大人になって、恩師の先生に出会った。彼の有名な口癖を紹介する。
「いいですか、皆さん。1年に、100冊以上の本を読めない人は、猿(さる)と、一緒です!」
この先生の一言が出ると、泣き叫びながら頭を抱えてうずくまる受講生を複数見かけたことがある。(受講生全員が、100冊以上読めているわけではないようだ)
先生と出会って月に1冊の読書感想文を投稿する生活を約7年(途中で休むこともあったが)続けたお蔭で、
高2~アラサーの頃は年間60冊前後だった読書量が現在では150冊前後になった。
(1)~(3)の他、KindleとAudibleを活用し始めて、さらに読書が楽しくなった。
文明の利器を利用できること、周りに読書家が多い(夫と母は特に読書家)という恩恵も大きい。
(三宅さんの本を読んで決意したこと)
もちろん、「冊数をたくさん読む=偉い、すごい」わけではないだろう。
私の友人はカズオ・イシグロのファンで、“Remains of the Day”を生涯で6回読み直し、原文を暗唱できるという。
彼女は、年間読書冊数はそれほど多くないだろうが、頭が良く、言葉や知恵にあふれ、私の尊敬する知識人の一人である。
あるいは、本でなく漫画をたくさん読んでいる人だって、すごいと思う。日本の漫画はクオリティが高く、学びが大きい。大切なことを漫画から教わる人も多いだろう。
本でなく、映画や音楽でも同じだ。仕事や家庭以外に、何か一つ、自分のもう一つの深い世界を持つことが、どれほど人生を豊かにしてくれることだろう。
私は子供の頃から本が好きだ。本は最高の娯楽で、自分の人生を豊かにし、心を解放してくれる。
でも、今後の人生「好き」なだけの読書じゃ駄目なのだろう。
自分が本を読んで得た素晴らしい学びを、周りに還元したい。
私に一番合う自分磨きの方法が読書である。大人になったのだから、「好き」なだけでなく「周りに恩返し・恩送り」できる読書にしていきたい。
三宅さんのベストセラーを読んで、そんなことを考えた。
💖そして、この感想文を書くことも、私にとって豊かな時間だ。
その上、この感想文に目を通してくれ、自分の心の叫びを受け止めてくれる、温かくて素敵なお友達や家族がいることも、私にとっての大きな幸せだと思う😍
ここまで読んでいただいて、ありがとうございます💖