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Au オードリー・タン 

〜天才IT相7つの顔〜

アイリス・チュウ 鄭仲嵐(ていちゅうらん) 著

文藝春秋


天才、に対する一般人のイメージとしては
「何を考えてるか分からない、とっつきにくい人」

だがタンさんは違う。

類い稀なその才能を、人々の問題解決の為に
惜しげもなくフル活用する。

人と協調して成し遂げる事を得意とし、
アンチに対しても議論での解決を信条とする。

自身のドイツへの留学経験や諸外国のハッカー
(もちろんホワイトハッカーの意)との交流から
非常にグローバルな視点を持ち、ユーモアに
溢れている。

読み始めて数ページでタンさんのことを
好きになった。

まさに現代版のヒーローだ。

アニメや映画のヒーローが、超人的な身体能力
や武術を強みとして人々を救う代わりに

タンさんは、インターネットやプログラミング
の知識、能力を武器に人々を救う!

以下、特に印象に残った2点を書き留めて
おこう。

①「協働」について

《IT業界ですでに共通の認識である「協働」の
概念を導入》p.39

《徹底的に理解し、攻防を放棄して「ゼロサム
(一方が勝ち、一方が負ける)」を「共和(両者が
共に勝つ)」にしなければ、互いに納得できる
共通認識に達することは難しい。》p.40

《タンさんを導いた先達の1人、デービッド・
ダナ・クラークの名言「いかなる議論の場でも、我々は王も大統領も投票も認めない。我々が信じるのは、ざっくりした合意と、動いているコードだけだ。」

コミュニティにあっては権威を拒絶し、投票で軽々しく結論を出さず、専門性をもって問題を解決するべきだ、という意味。

「ざっくりした合意とは、『満足ではないにせよ、みんなが受け入れられる』ことを表しています。そういうコミュニケーションには、完敗の人も完勝の人もいません。でも投票すると、少数の方が負けることになります。」

だから、コミュニティで常に対話することの目的は、討論して各人が受け入れ可能な結果を出すことにあるのだ、と。》p.104-105

② 食卓での家族会議

父親の注意に対するタンさんの反論から
有意義な議論を展開出来る、ご両親の教養の
高さに敬服した。

p.76〜p.78
お父さんが好ましくないゲームに、タンさんと
弟さんが夢中になり、それを禁じたことが発端
で家族会議が始まる。

タンさん「お父さんは自分がお父さんだと思って、それに子どもたちを養ってるからって、えらい存在だというの?」

タンさん「もしお父さんが養ってくれなかったら、お腹がすいて死んじゃうから、お父さんに偉そうにされても自分たちにはどうしようもないよ。」

父「地位の高さは、ある時は知識と道徳から、
ある時は権力から生まれる。ここで言いたかった
のは権力ではなく、知識と道徳だよ。」

母「今日話しているのは権利についてで、
権威や権力の話じゃないと思う。
お父さんはお金を稼いで家族を養っているから
子どもに命令できるか、といえば、それはできないと思う。私たちは子どもを持ったら育てるのは
当たり前で、そうじゃなかったら育児を放棄する
ことになる。」

親権というものは、お金を稼いで子どもを養うからあるものではなく、両親が子どもの身体の安全と
財産を監督保護する権利だ、と付け加えた。


タンさんがマスクマップアプリによって
日本を含めた海外で知られるようになった事もあり、
台湾の新型コロナウィルス感染史についても
ページを割いている。

巻末特別付録「台湾 新型コロナウィルスとの戦い」は非常に読み応えがあった。

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