ああ言えばこう言う丁々発止。 ~ 舞台 骨と軽蔑 ~
舞台を観劇に行きますと、現在上演またはこれから行われる舞台のチラシを頂くことが多いです。
こちらの舞台も確か頂いたチラシを見ていて、小池栄子さんと水川あさみさん宮沢りえさんが共演となればチケット争奪戦に参戦せねば!と思いました。
争奪戦の2戦目位で無事にゲッツ!
張り切って日比谷シアタークリエへ出掛けました。
ここからネタバレを含む感想となります。
これから観劇予定の方は後日お読み頂けましたら幸いです♪
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東西に分かれて戦争をしているとある国が舞台。
戦争は双方の男が少数となっており、女子供が戦地に駆り出されている状態となっています。
西側に住んでいる峯村リエさん演じる母は、軍需工場を経営している病床の夫のことを秘書であり愛人の水川あさみさんが付きっ切りで介護しているため、精神的に不安定でそのためアル中。
その娘の姉妹である姉の宮沢りえさんは売れない作家であり、結婚していたけど出て行った夫は行方知れず。
妹の鈴木杏さんは特に何をするでもなく家にいます。
ストーリーテラーを兼ねている犬山イヌコさんはお給金の遅延がありながらも、調子良くこの家のメイドさんをしています。
戦争は日々厳しい状況となりつつありますが、その中で宮沢さん宛に元夫から手紙が届きます。
犬山さんはその手紙を「いつも通り」鈴木さんに手渡します。
なぜなら鈴木さんは出て行った元夫のことを思い出し、宮沢さんが心を痛めると案じ、手紙を代読しているのです。
元夫に横恋慕している鈴木さんが、宮沢さんに手紙を見せたくないのが本心ですが。
元夫は悪筆であり手紙にも住所を書いていないため行方は分からず、一方的な手紙で返事は書けません。
手紙を封じているシールがずれていることにふと気付いた鈴木さんが、犬山さんの盗み読みを指摘しますが、お調子者の犬山さんは何のかんのと言い訳して認めません。
写真が三枚入っていると書かれた手紙に一枚しか封入されていないことを鈴木さんが問い詰めても「数え間違いですよ、きっと」と口答えし、「三枚を一枚と数え間違いすると思うの?」と言っても犬山さんは認めません。
本当は思うところのある犬山さんが一枚を抜き取り、その際に一枚を紛失していました。
宮沢さんと鈴木さんも常に小競り合いをしています。
私のものだから返してもらったと宮沢さんの部屋にあったクッションを抱いている鈴木さんへ、宮沢さんはもともとは私があなたに貸したものだから私のだ!と言い、鈴木さんはその前に私が持っていたんだから・・と、小競り合いに余念がありません。
とにかく誰も彼もがああ言えばこう言う状態で、その小競り合いが面白くてたまりません。
そんな家に宮沢さんの本の大ファンである小池栄子さんが訪ねて来ます。
宮沢さんへファンレターを送ったことをきっかけに、リップサービスな「今度訪ねて来てね」を真に受けて、異国からはるばるやってきたのです。
出した本を全て読みこんでいるため、感激した宮沢さんは遠くから来てくれたんだから家の納屋に泊まると良いと提案し、小池さんもちゃっかりその通りにします。
その小池さんは宮沢さんと文通している内に、元夫のことで気落ちしている宮沢さんを元気づけるため、まさかの元夫のフリをして手紙を書き送る行為をし続けていたのです。先に届いた手紙も小池さん作で、異国の人であるため字が汚いはずでした。
その納屋にはアル中の峯村さんから隠すために大量のお酒がありました。
アル中のことを知らない小池さんはうっかり峯村さんに「納屋にお酒がたくさんありますね」と口を滑らせます。
その晩、納屋に忍び込んだ峯村さんはしこたまお酒を飲み泥酔します。
そこへ小池さんがやってきた日に持っていたカバンで押し潰され、瀕死の状態を犬山さんが川に投げ捨てて殺してしまった虫の精霊:堀内敬子さんが現れ、泥酔の峯村さんがおしゃべりをします。
結局死んだけど、一旦は人間に助けて貰えたから、お返しに何か願いを叶えてあげると犬山さんは言います。
峯村さんは「みんなを幸せにして欲しい」とお願いします、幻覚と知りつつ。
そんなある日、瀕死だった峯村さんの夫が急死します。
遺言書には「水川さんに全部相続させる」と書かれていたはずが、虫の精霊:堀内さんの魔法で「峯村さんへ相続させる」と書き換えられており、水川さんはキレまくりますが、出来る女であるためシレっと峯村さんの秘書へまたも収まります。
そんな中、宮沢さんが権威ある文学賞を取り本も増刷が掛かり、そのおかげで犬山さんもお給金を貰えました。
取り敢えず峯山さん一家は束の間「幸せ」になります。
しばらく「幸せ」に暮らしていました。
ある日、小池さんが庭を歩いていた時、足元にいた三匹の虫を踏み潰しそうになりますが寸でのところで回避します。
お詫びに虫たちに納屋にあるお菓子をご馳走しようとしますが、拾い上げた虫たちを手のひらから納屋の横へ移動している最中、そこに止まっていた鳥が全てついばんで食べてしまい飛び去ります。
その晩、眠っていた小池さんの枕元へ、怒った三匹の虫がお詫びして欲しいと迫って来ますが、小池さんは自分のせいじゃない鳥が悪いと誠意を見せません。三匹は「それなら人間を酷い目に合わせてやろう」と言い残します。
三匹の虫が去った日以降、宮沢さんと二人三脚で頑張っていた編集者が「あなたの作品に興味が無くなった」と去り、水川さんに来ないと思っていた招集命令が下って戦地へ駆り出され、信頼して仕事を任せっきりだった峯村さんは再びアル中に戻ってしまいます。
その最中、本物の元夫から宮沢さん宛に手紙が届きます。
焦った小池さんは「今までのは自分が書いていたけど、今回は違う」と告白し、ついでに鈴木さんも実は元夫を自分も好きだったから手紙を横取りしていたと正直に告白し、今まで届いていた(小池さんが書きまくった)76通もの手紙を宮沢さんに差し出します。
そんなみんなに怒りつつも、何だかんだで本物の元夫からの手紙が嬉しい宮沢さんは手紙を開封し、読み始めます。
そこには元夫は東側の出身であり、西側から東側を攻撃する訳に行かないため家を出たこと。自分は諸事情で軍の上層部の情報を耳にすることが出来るため、軍需工場である宮沢さんたちの家が標的になっていることを知った。この手紙を投函した十日後に攻撃があるからそれまでに家から逃げて欲しいと綴られていました。
手紙を読んでいるこの瞬間がその十日後であり・・
ざっくりとラストシーンまで書いてしまいました。
戦時中であり、女子供までが駆り出される末期的な状況下が舞台なので、物凄く暗い話に感じられますが、舞台は丁々発止の会話が続き、常に笑いっぱなしでした。
常に誰かと誰かが小競り合いをし、揚げ足を取り合います。
特に犬山さんと小池さんがすっとぼけているため、場をかき乱しまくる原因となっているのですが、それぞれのウソは底意地の悪いものではなく、誰かを思いやってのことでありお茶目なキャラクターが憎めません。
ストーリーテラーの犬山さんはちょいちょい観劇者であるこちら側を「日比谷の人はわからないだろうけど・・」と客いじりをします。途中から同じく小池さんも「みなさんは・・」と話しかけて来ます。
姉妹のやり合い、母との親子間、家族と愛人と、バラエティに富んだ笑える会話が展開します。
舞台上もプロジェクトマッピングの映像が随時流れ、戦時の雰囲気を作り出し、音響は怖く臨場感がありました。
それでいてカラフルな衣装や小道具がオシャレで華やかであり、戦争の暗さとの対比が演出されていたように思います。
そして差し挟まれる虫の幻覚。
「一寸の虫にも五分の魂」のセリフもあったので、市井の民も念ずれば大きな出来事を動かせるといった暗示なのかなぁと思いました。
昨今の世界的な戦況や国内政治、社会的な出来事にも通じるものがあるように思います。
小さな声も上げて行けば大きなうねりになる・・といったような。
またはそうあって欲しい「希望」かもしれません「幻覚」でしたから。
演者の皆さんが生き生きとしていて、とても引き込まれました。
「会話(文通・手紙)」は楽しくもあり、思いがけなくもあり、でした。
とても楽しい舞台でしたので機会がありましたら、ぜひ足をお運び下さい!
日比谷駅の地下鉄から出たらゴジラも一緒に出て来ました。
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