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休日/ローマ

ロンドンに留学してはじめての友達はイタリア人のクラスメイトだった。

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やや小柄だが鍛えられた身体の色男で、自身に満ち溢れている。美味しい料理とレーシングバイクが大好きで、ローマに残した女優のように美人な彼女がもっと大好き。典型的な”熱血イタリア男”といった風だ。

留学当初、すっかり自分に自信を無くし塞ぎ込んでいたぼくとは対照的で、いつも一緒に過ごしてくれるのはありがたくもありながら、当時のぼくの捻くれた心境にあっては、どこか心を開ききれないところがあった。


そんな彼から、週末を使ってローマの実家に行こうと誘ってもらったのは、留学開始から二ヶ月が過ぎた頃。彼の大親友が大学院の卒業を迎え、一緒にお祝いをしようと言う。

これほどありがたい誘いはないとOKしつつも、やはり、ぼくは言葉も文化も通じない中で新しい環境に飛び込むことに恐怖心すら覚えており、出発まで、何度も断ろうかと自問した。

結果的に、このローマ旅行からぼくの留学生活が多少いい風向きになった。

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ついた初日はやることがないからと、彼は自前のバイクの後ろにぼくを乗せ、ローマの街中をたっぷり一日かけて案内してくれた。

イタリアの朝はこれで始まるんだと、カフェでillyのエスプレッソをグイッと飲み干しバイクにまたがると、クラクションの絶えない渋滞を縫いながら、主要な観光地を次から次へと案内してくれる。

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いま、これを読んでくれている方と同じように

「まんま、ローマの休日じゃん!」

と心の中でツッコんだ。あまりにベタな展開にすっかり不安は失せて、早くこのエピソードを誰かに話したくてたまらなくなっていた。

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美しい調度の並ぶリビングでゲームに興じたと思えば、食卓ではイタリアのマンマ特製の手料理をいただきながら政治談議。

さてそろそろ宴もたけなわ…とは、いかず、卒業記念パーティのためにVIP席をおさえたクラブへは、マリオカートのように車を走らせ向かった。(クラブに車で行くって…どうやって帰ってきたのかは覚えていない、ことにしておこう。。)

・・・


めちゃくちゃで、大騒ぎした二泊三日はあっという間に過ぎていった。

帰路の飛行機で、思い切って、なんでぼくにここまでよくしてくれるのかと尋ねてみた。

「周りに日本人が沢山いる環境で、頑張って俺たちといようとしてくれるからだよ。お前はチャレンジャーだ!」

彼は、ぼくの悩みや心配をわかったうえで敢えてこうして連れ出してくれていたらしい。

語り尽くせないほどのおバカな土産話を抱えると、留学に抱いていた不安や自信のなさが、その分だけ手からこぼれ落ちていった。

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