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「その仕事が存在する意義はなんですか?」と聞いてくれた中学生の君へ。

「珈琲焙煎士の方へ質問です。その仕事が存在する意義はなんですか?」

“虚を突かれた”というのはきっとこんな時のための言葉なのかな。

珈琲焙煎士としてこれまで数回参加している「キャリア教育プログラム」のオンライン授業での一コマ。中学生の子からの質問タイム。思わぬ質問に、僕は内心そんなことを思っていました。

「キャリア教育プログラム」とは、コロナ禍で社会見学が出来なくなった小中学生が社会人講師とオンラインで触れ合うプログラム。中高時代の同級生が始めた事業です。社会人講師の職種は様々で、医者、イラストレーター、スクール経営者、ヘルスコーチ、司会業、エンジニアなど、僕自身もお話を聞いてみたい(というか飲みにいってみたい)方ばかり。そんな授業に、僕も珈琲焙煎士として参加しています。

初めての授業はすごく緊張して、生徒も僕もガチガチだったのですが、回を重ねるごとに徐々に慣れてきて、生徒の子たちの緊張を和らげてあげたいなと思えるぐらいにはリラックスして臨めるようになりました。

そんな時に、とある授業のなかでもらったのが冒頭の質問です。

「珈琲焙煎士の方へ質問です。その仕事が存在する意義はなんですか?」

zoom越しですがその場で思わず「うお」と声が出ました笑

これまでは「珈琲焙煎士になるために必要な資格や勉強はありますか?」「焙煎している時はどんなことを考えていますか?」など答えやすい質問しかなかったのですが、この質問には面喰らいました。

最高の質問だと思った

なぜ面喰らったか。一番の理由は、僕自身が「僕が珈琲焙煎士である意義は何か」を何度も考えていたからです。

コーヒーが流通する1過程として、珈琲焙煎が存在する意義。これは簡単で、焙煎しないとコーヒーが飲めないからです。

では、「珈琲焙煎士」として“人”がそれをする意義は?

そして“あなた(僕)”がそれをする意義は?

家業に入ってから日々考えていました。なぜこんなことを考えるか。その答えこそが、珈琲焙煎屋として僕がお客様にご提供できる価値であり、自分の確固たる軸になると思ったからです。これはどの仕事にも通ずることですが、自信を持ってその答えを持つことや言葉にすることは簡単ではなく、しかもその答えは千差万別。人によって答えが違いますし、正解のない問いです。だからこそ学生の子が今後のキャリアをイメージするために社会人にする質問としては、これ以上無い最高の質問だと思いました。

この質問をくれた中学生の君へ、心から感謝を伝えたいです。

珈琲焙煎士の存在意義に対する答え

この最高の質問に対する答え。そのときは咄嗟にこんな発言をしました。

「珈琲の焙煎は、誰が、どんな機械を使って、どんな豆を、どのように焼くかによって味が変わります。同じ機械を使っても、焙煎する人が変わればやり方が変わって、味が変わることもあります。だからお客様から求められる味を変わらずご提供するためには、人間が様々な変化を感じ取りながら焙煎をすること、そしてその変化を感じ取ることが出来る人間が焙煎をすることに意義があると思います。」

 この答えがどう届いたかは分かりませんが、僕自身腑に落ちなくて、この授業以来何度も考えるようになりました。

オンライン授業の場では、なるべくイメージしてもらいやすいように「職業:珈琲焙煎士」として参加しています。実際僕自身は、珈琲焙煎もやりながら、広報や企画、営業などもやっており、何より後継者として自分の会社を見つめています。その立場から考えた時に、何故自分が焙煎をするのかを考えると違う答えが見えてきました。

 日々仕事をするうえで、僕が一番価値を発揮できることは、自分の言葉を誰かに届けることだと思っています。珈琲焙煎屋として、自分の言葉が届いて欲しい人達に、より広く、より深く届けたい。そのためには自分で焙煎を経験することが大きな価値を持ちます。自分で焙煎をしているからこそ分かることが沢山あります。このブログのように日々発信をするうえで、伝えたいことも増えますし、言葉に厚みがでます。言葉の厚みというと尊大な感じもしますが、読書家の書く文章にそのエッセンスが滲み出る感覚に近いです。

僕は、珈琲焙煎屋として、言葉を伝えたい。だから焙煎をします。

そして、珈琲焙煎屋として、今は後継者として発信をすることが何より楽しいです。いずれは経営者として発信することも楽しみです。だから僕は家業に入り、今この仕事をしています。

そう考えた時、自分の中でストンと腑に落ちたような気がしました。つくづくこの質問をくれた君に感謝です。

この質問をくれたあなたに一つだけ知って欲しいことがある

 この質問をくれた君へ、君がくれた最高の質問はもっと色んな大人にしてみて欲しいです。中学生のみんなが社会人のことを知るだけでなく、聞かれた社会人にとってもすごく意義のある問いだと、僕は思うからです。

 最後に、この質問をくれた君へ、一つだけ知って欲しいことがあります。今後この質問をした時、もしかしたら、不快感を表す大人もいるかもしれません。意義を改めて聞くことは、その仕事は必要ないのではないかと尋ねているように捉えられる可能性もあるからです。それでもこの質問をやめる必要はありません。この質問にはそれでも続ける価値があります。しかしながら不快感を表されるのは辛いでしょう。だからそこで表現を工夫する力がつきます。相手を不快にさせずに、自分にとっても相手にとっても良い質問をする。きっとその力は自分を、相手を、助けます。

 なによりこの質問のお陰様で、僕は大事な気付きを得て、少し成長させてもらいました。本当にありがとうございました。珈琲焙煎士、まだまだ頑張ります。


※「キャリア教育プログラム」についてはこちら

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