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10年ぶりに背中を押してくれた、軽やかなピンクのランシュー

ナイキのアウトレットショップで買った薄いピンクのランニングシューズ。一歩一歩踏み込むたび靴底から軽やかに跳ね返ってくる感覚が心地よくて即決した。

妊娠出産のイベントを挟んで、10年ぶりに再開したジョギング。少しぎこちないけれど新鮮だった。呼吸のリズムに集中していると、心の中に巣食っていた不安や焦りが蒸発して、穏やかさが戻ってくる。足音が「タッタッ」とリズムを刻むたび、雑念がそぎ落とされ、頭の中がクリアになっていく。ジョギングは、ただの運動の手段じゃない。自分に向き合う時間だと改めて思った。

私たちは毎日何かに追われながら過ごしている。仕事に家事、地域コミュニティの連絡、子供達の習い事のやりとり、山のような調べもの、遠くに住む家族や友人への連絡、英語の勉強だって、スマホですべてこなせてしまうから、気付けば四六時中スクリーンとにらめっこしている。不思議なことにタスクは次から次へと沸き続ける。

手を止めること、立ち止まることに罪悪感を抱いてしまうのは、きっと私だけではない。

ジョギングは、押し寄せるタスクや情報を断ち切り、自分本位で過ごすことの心地よさを思い出させてくれる。鳥のさえずりやひんやりした風を全身で感じていると、いつしか自然のなかに溶けこんでいくような気がする。

ここのところ悩む局面もあった。けれどこのまま進めばいいんだって、思いを新たにできた。何かを断ち切り立ち止まる勇気は、心に余白をもたらして、さらに遠くへ進むパワーをくれる。

私はまた走り出す。一歩一歩、地面を踏みしめながら、少しずつ前へ。
軽やかなピンクのシューズが、私の背中を押してくれるように。

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