#026.楽譜を読むための基本 1「音符/音の高低」
前回の記事で、楽譜を読むのが苦手という方へ記事を書きました。
楽譜は絶対的な存在ではなく、作曲家が書き残した最低限の情報が書かれたメモのような存在、記号の羅列です。その中から音楽を生み出すのが私たち演奏者の使命ですから、楽譜に対して苦手意識を持たず見方を変えてみましょう、という内容でした。こちらの記事もぜひご覧ください。
とは言え、楽譜に書かれていることが何を意味するのかを把握していないことにはその話もできませんから、今回から数回に分けて楽譜を読むための基本をお話してまいります。
楽譜に書かれている基本的な情報を理解する
楽譜に関する情報はたくさんありますが、まずはこれらの役割を覚えることが必要です。その中でも特に、音楽が音楽と理解できるための最低限必要な3つの情報がこちらです。
どれが欠けても音楽は成立しません。その中でまず今回は「1.音の高低」についてお話します。
音の高低
楽譜のルール上、五線の上に書いてある音ほど高音で、下に行くほど低音です。
五線のどの位置が何の音なのかを決めているのは、常に五線の左側に書かれている「音部記号」というもので、トランペットの楽譜には「ト音記号」が書かれています。この記号は音部記号の中の「高音部記号(ヴァイオリン記号)」と呼ばれています。
音符記号は他にもたくさんあって、同じ五線上の同じ位置であっても音部記号が変われば音の高さが変化します。
これは楽譜浄書ソフト”finale”にある音部記号選択画面です。若干違うものや特殊なものも含まれていますが、とは言え五線の左側にはこれだけいろいろな記号を書き込むことができる、ということだけは頭の片隅に置いておきましょう。
トランペットに用いられるト音記号は、以下の線の位置が「G(ソ)」の音と定められています。
そもそもト音記号は「G」の文字をオシャレに変形させた記号です。Gの水平部分にあたるところをG音に定めていて、ト音記号では書き始めのクルッと巻かれた渦の中心部分がG音にあたる、という結構シンプルな考え方です。ちなみに「ト音」の「ト」は日本語での音名(イタリア語のドレミファと同じように音の高さそれぞれにつけられた名前)の呼び方です。イロハニホヘトの「ト」です。日本音名では「ハ」がいわゆる「ド=C」を指しますので、CDEF「G」→ドレミファ「ソ」→ハニホヘ「ト」ということになり、「ト音記号」と呼ばれるようになりました。
音がひとつでもわかれば、そこから上下していけば、どこが「ド」なのか、どこが「ラ」なのかがわかると思います。下から上へドレミファソラシドレミファソラシ…ずっとこの順番です。
運指表と当てはめてみる
音の高さがわかったら、次はその音をトランペットではどの運指(フィンガリング)で出せるのかを把握します。運指については過去に大変詳しく解説していますので、そちらを参考にしてください。
変化記号(シャープとフラット、ナチュラル)
音符には、それぞれドレミという音名(ドレミはイタリア語)が付けられています。例えば「ド=C」の音はここです。
そして、「レ=D」の音はここです。
では、「ド」と「レ」の間にある黒い鍵盤は何かと言いますと、「ドのシャープ」であり、「レのフラット」です。
お分かりでしょうか。鍵盤での隣り合う音との関係をすべて「半音」と呼びます。西洋音楽は原則「半音」を音程(=2つの音の隔たり)の最小値としていますので、半音上げる記号「シャープ」や半音下げる記号「フラット」という「変化記号」を用いてすべての音を表しています。その中で調号と関係なく音符に個別に付けられているものを「臨時記号」と呼びます。臨時記号はその小節内の同じ高さの音に対して全て有効です(同じ音名であってもオクターブ以上違う音には無効です)。
五線左側に書かれる「調号」にもシャープとフラットを使いますが、これは臨時記号ではなく音階を構成している音なので「音階固有音」と呼びます。調については後日詳しく解説します。
また、シャープやフラットによって半音変化している音を戻すときには「ナチュラル」という記号を用います。ナチュラルも変化音のひとつです。ちなみにナチュラルが付くと音は必ず鍵盤で言うところの白鍵になります。白鍵部分を幹音(かんおん)と呼び、黒鍵の部分を派生音(はせいおん)と呼びます。
あと一応書いておきますが、理論上「半音のさらに半音」上下する必要が出てくることがあります。そのときには「ダブルシャープ」「ダブルフラット」という記号を使います。
いかがでしょうか。五線に書かれた音符がそれぞれどの音なのか、おわかりいただけたかと思います。あとは慣れるしかないので、たくさんの楽譜に触れ、最初のうちは時間がかかってもいいので正確に読めるよう経験を積んでください。
全部をいちいち覚えるよりも五線上の特定の音、例えばいくつかの「ド」と「ソ」の場所だけでもあらかじめ把握しているとその前後がすぐに導き出せます。自身が一番読みやすい方法を工夫して見つけてください。
ということで今回はここまでです。
次回は「テンポ」について詳しく解説してまいります。
荻原明(おぎわらあきら)