音楽に大切な間(ま)の話
演奏で重要なのは何か、という話はレッスンでも頻繁に出てきますが、その答えはひとつではありません。ただ、その中で僕が中でもとても大切にしていることのひとつに「間」があります。
音楽ですから音符を生み出すための意識は当然必要だし、大切です。だからと言って最初から最後まで音符で埋め尽くされて鳴りっぱなしの音楽というのは聴いていてストレスなりがちで、往々にしてそうした音楽は無意識に耳が拒否し始めます。
リズムも音符でできるように見えて、実は休符があるから生まれていますし、素敵なメロディに心を奪われるのと同じくらい、一瞬の静寂や、G.Pによる沈黙、フェルマータによる停止。そうした瞬間にも人間は強く心を動かされます。
休符を演奏する
僕の独特な言葉の使い方ですがレッスンで「休符を演奏しましょう」とよく言います。休符が活きるための音符の表現。音符が活きるための休符の表現。音を発生させることで音符が生まれるのであれば、音符を終わらせることで生まれる休符の存在にも明確な意識を持っていて欲しいのです。
また、休符=停止とは一概に言えません。例えば音から音へジャンプしている滞空時間だったり、パワーのある音を発生させるための「溜め」の時間だったりと、何かが運動していることで発生する音のない時間のほうが実は多いです。休符という言葉はどうしても「休」という言葉を使っているために運動をしないで力を抜いてしまう時間と認識されがちですが実際はそうではないことのほうが多いのです。
世の中にある「間」を探してみよう
ご自身の演奏を録音して聴いた時、なんだかずっとせわしなく、騒々しく喋り散らしている落ち着きのない印象を受けたら、そこに休符や間があるかを確認してみると良いでしょう。
間というのは、音楽だけのものではなく、すべてにおける表現に重要視されています。例えば演劇とか落語とか漫才とか朗読とかは音楽と同じく発音による声と間ですし、バレエやダンス、歌舞伎にも間があります。絵画やデザイン、マンガにもあります。ぜひ世の中に存在する人の心を動かす「間」を見つけ、そして感じてみてください。それに気づけるようになったら演奏表現もワンランクアップするかもしれません。
荻原明(おぎわらあきら)