F.J.ハイドン/トランペット協奏曲 変ホ長調より(荻原門下生発表会演奏曲ご紹介)
来年1月13日(土)に開催します荻原門下生トランペット発表会。出演される方の演奏曲目が決まりましたので、このブログでも少しご紹介したいと思います。
紹介というか僕の勝手な視点と経験で書きますので、発表会でこの作品を演奏される方については、このブログでは触れませんので、ぜひ当日会場にいらして生の演奏をお楽しみください。
今回ご紹介するのは、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン作曲「トランペット協奏曲」です。
トランペットの作品で最も有名で最も演奏される機会の多い協奏曲です。
音大生になるとオーディションやコンクールでも頻繁に課題曲になるため、演奏したことがない学生のほうが少ないかもしれません。
さてそんな協奏曲ですが、ハイドンといえば古典派(およそ1700年後半から1800年前半)と呼ばれる時代の作曲家で、100以上の交響曲を作曲するなど、大変多くの作品を残しました。
この時代のトランペットはナチュラルトランペットと言って現代のピストンやロータリーといったバルブが付いていません。
だいたいこんな感じです。動画の作品はハイドンよりも前のバロック期の曲です。
今のトランペットとは見た目も音もかなり違うのがわかると思います。
バルブがないので基準となる音の倍音しかでませんから、出せる音にかなりの制約があります。ですので、倍音の音程間が狭い高音域部分でメロディを演奏する必要がありました。
一方でこのハイドンの協奏曲。半音や音階など、中低音域で隣り合う音を出すことが不可能なトランペットが使われていた時代の作品にしては現代楽器の音域で音階も半音階も出てきます。なんだかおかしいですね。
その理由はこの動画を見ていただけるとわかります。
初めてご覧になった方も多いと思いますが、これはキィ・トランペットという楽器です。まるで木管楽器のように管のあちこちに穴が開いています。この穴の開閉で音階や半音といった音程が出せるようになっています。
トランペット奏者であり楽器製作者であったヴァイディンガーという人が発明したこの楽器を広めるためにハイドンに作品を委嘱したというのがこの協奏曲誕生の経緯なのです。
簡単に言えば楽器のプロモーションでしょうか。倍音しか出せない当時のトランペットに対して「音階が吹ける!」「半音階も出せちゃう!」「でもトランペットです!」「見て見て見て見てジャーン!」が凝縮されたのがこの協奏曲です。
これを知ってもう一度作品を聴いていただけると面白いかと思います。
ですから、現代楽器でこの作品を演奏する際、「ただの音階」「ただの半音階」と思わずに、当時は非常に画期的だったことを理解して大切にひとつひとつフレーズを披露していく気持ちを持ってほしいとレッスンでは伝えています。
1月13日に開催します荻原門下生トランペット発表会では、この作品の2楽章を披露していただきます。ちょうど上のキィ・トランペットで演奏している動画がその曲です。
発表会はどなたでもご来場いただけますので、ぜひ当日生徒さんの演奏を聴いていただきたいと思っております。
詳細はこちらに掲載しております。
荻原明(おぎわらあきら)
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