見出し画像

心の扉を開く

幼い頃、アニメを見ていて本当に空が飛べるのではないか、手からビームを出せるのではないかと信じて疑わなかったことがあります。

子どもは大人に比べて人を疑いません。善悪や、現実と虚構の判断力がまだない、と言ってしまえばそれまでですが、これは「心の扉が開いているから」ではないでしょうか。

心の扉

心の扉が開いていると、自分の気持ちや想いを出すことができ、そして相手の言動や目の前で起こったこと、見聞きしたこともダイレクトに心に届きます。良いものもそうでないものも取捨選択する間もなく受け取ってしまう、という特徴があります。
良いものを受け取ると心が豊かになったり温かくなるのですが、悪意や憎悪など負の要素の場合、心に傷を負ってしまい、そうした経験があまりに多いと「心の扉を開けておくことは危険だ」と判断し、扉を固く閉めてしまう可能性があります。

そのため、心の扉の開閉やその判断力の基礎は幼少期に培われます。

自分の意思で上手に心の扉を開け閉めできるようになれるのが成長であり、大人になることなのかもしれません。僕はそれが凄く苦手で、必要ないところで開けっぱなしにしてダメージを受けて自滅しそうになったり、開けるべき場面で怖がって閉めてしまうひねくれ者です。反省してはやらかして、の繰り返し。ホントになんとかしたいし、そういった意味では全然大人になれません。

相手の話を耳で聞くか心で捉えるか

相手が自分に向けて伝えてくれた想いや言葉を、単なる情報として耳だけで受け止めるのと、心で受け止めるのではその先のストーリーが全然違います。

例えば、嬉しいことがあったと友人から聞かされた時、「ヘー嬉シイコトガアッタノカ」と事実を情報で受け止めたら、「あ、そう」とだけの返しになるでしょうし、少し慣れていればそれにプラスして「ヨカッタネ」が追加される程度で会話は終わるでしょう。相手もこの反応の悪さに「話さなきゃよかった」と感じて距離が遠のくかもしれません。

では、心で受け止めた場合はどうなるでしょうか。相手から聞かされた情報は自分の過去の体験や相手の立場に立ってイメージすることで心が共鳴し、「それはよかったね!(表情付き)」などと心から言葉が生まれてくることでしょう。
心のすごいところは、相手の体験したことをあたかも自分も同じ体験をしたかのうようなイマジネーションやシミュレーションの補填によって感動できる力を持っていることです。

音楽を聴く時の心の扉

演奏会や音源を聴く時、自分の心を開いていると、演奏者の気持ちや作品の素晴らしさに心が反応します。演奏者のほとんどはその音楽や自分の演奏に対して相当集中しているし、良い音楽を作ろうとする気持ちでステージにいるので、そうしたパワーをダイレクトに受け取れるため、「聴いてよかった」「感動した」と、心の充足感を得られます。

音楽を聴くと心が豊かになったり、イヤな事を忘れたりするのはそういったことから生まれるものだと思います。

一方で、聴く側が心を閉ざした状態で音楽と向き合うと、BGMのようにスルーして記憶が残らなかったり、その音楽に対して批判的な気持ちを持ってしまいます。ミスしたことやピッチが悪いことばかり気になったり、挙句「自分の音楽性と合わない」など、勝手なことばかりが思いついてしまうのです。


演奏する時の心の扉

演奏する側も、心の扉が開いていなければ本当の意味で音楽はできないと思います。自分の演奏に向けた想い、作品に対する想い、それらを演奏する仲間と共有して、客席に届けようと強く想う、そんな心の扉を全開にしないと聴く人に共感してもらう音楽はできません。

演奏を聴いてくださる方の中には、心の扉が閉ざされた状態(に感じる)の人も少なからずいると思います。しかし、そんな人の心の扉を開けられるくらいのパワーが演奏に欲しいです。
これは、自分の演奏に自信がなかったり、その作品に愛情がなさすぎたり、知らなすぎたり、共演者を思いやる気持ちがなかったら伝わりません。自分勝手すぎる演奏や自己満足だけの演奏、八方美人で媚びを売るような姿勢でも無理でしょう。

音楽に敵はいない

一緒に演奏をする人も、その演奏を聴く人も敵ではありません。陥れてやろうとか、玉子を投げつけてやろうとか、この演奏会をボロクソに言い広めてやろうとか、裁判で訴えてやるなんて思っている人は音楽の世界に絶対にいてはいけないのです。もしそんな人がいたとしたら音楽の世界から永久追放すべきです。無限に増える栗まんじゅうと一緒に宇宙に飛ばしてしまえばいいのです

ですから、まずは共演者を信じること。そしてお客さんを信じること。自分自身を信じること。心の扉を開けることは無防備で危険な時もありますが、音楽をする時は勇気を出して開けておきましょう。心から音楽と向き合い、みんなで良い共有をするためにここにいるのだ、と思ってください。

心の扉を開くのは恥ずかしい、苦手、と想う人もいると思いますが、心が通った時のたかぶりや、人の心の暖かさを感じられたら、そっちのほうが絶対良いとわかるはずです。勇気を出して最初の一歩を踏み出しましょう!


荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。