ロンドン・シェフィールド滞在日誌:中国人パートナーが一週間過ごした感想
今回は、少し記事の趣旨が異なりますが、当社の創業者の一人、銭氏がイギリス出張に出た際に記録したジャーナルを共有したいと思います。ジャーナルでは、普段は上海で生活する一人の中国人がイギリス滞在期間中に、イギリス生活・市場について、どのように感じたのかをざっくばらんに述べています。
以下は彼女の感想日本語訳になります。
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先月、私はロンドンとシェフィールドに数日間滞在しました。その間、知人やその知り合いとアポを取り、地元のコーヒーショップで、現地に少なくとも 2 年間住み働いている10 人以上のさまざまな立場の現地在住の方とお話をしました。また、移動中にUberの運転手や、レストランなどでオーダー受け取り待ちの際にコーヒーショップのオーナーや地元のレストランのオーナーともイギリス生活などについて雑談を楽しみました。以上の会話を通して、イギリスの生活習慣や考え方における私の気づきを皆さんと共有したいと思います。
【イギリス人の生活習慣】
時代は変わりつつあるようですが、イギリス人の方は、依然として過去を懐かしみ、新しいものを受け入れる敷居が高いと感じました。
例を2つ挙げると:
まず第一に、車・乗用車が挙げられます。ロンドンとシェフィールドにおいて、私は移動の際に、路上のEV(電気自動車)の台数に意識的に注目しつつ、EVについても会話の中で取り扱ってみましたが、私が話した多くの人はEVに好印象を持っていないように感じました。彼ら・彼女らは、依然として安全性を懸念しており、レクサスやトヨタのガソリン車を購入することを好むようです。
第二に、レストランでのオンライン注文が挙げられます。今、私の住む中国で非常に普及しているオペレーションフローは、客が卓上のQRコードをスキャンし、メニューをスマホ上で注文し、支払いも先にWechat Payなどで済ませるといったフローになるのですが、このような仕組みをイギリスで実装し、普及させていくのはハードルが高いのだろうと感じました。モバイルアプリや中国で普及するWechat Mini Programのようなものを通して、イギリス人の消費者が、レストランの商品を購入することには心理的ハードルが高いように感じました。会話の中でも大手企業が、そのようなアプリの宣伝に多額の費用を投じたが効果は乏しかったと言われていたました。イギリス人の方は、このような決済機能を持つアプリからプライバシー情報が漏洩するのではないかという懸念を強く持っているようです。この各国の消費者におけるプライバシーへの感度・関心は研究課題として非常に興味深い対象になると感じましたし、今後、特に中国企業が海外市場に進出する際に考慮すべき要因になってくるのでしょう。
ただし、イギリスの若者の間では、低価格戦略と組み合わせることで、“低価格+Grab-and-Go”といったようなモデルが実験的に展開される可能性はあると考えています。オンラインで注文して店舗で受け取ることが便利なので、比較的裕福ではなく低価格帯を好む若年層は、その利便性を受け入れる可能性は高いと感じました。(Grab-and-Goの詳細につきましては、前回の記事をご参照ください。: 中国カフェチェーンの海外進出“Grab-and-Go”でシェア拡大を狙え)
【伝統を重んじる】
10年前と比較しても、イギリスは今でも同じイギリスであると言え、基本的にはあまり変わっていないと感じました。イギリスの高齢者は、スマホのアプリでフードを注文するのが当たり前になった中国人高齢者と異なり、今でも電話でフードを注文したり、紙媒体の新聞を読んだり、テレビショッピングを行う習慣を持っているようです。この点を考えると、スマホアプリを駆使したデジタルマーケティングが主流となっている中国市場とは異なり、特に長年の顧客データベースを持っている店舗や企業にとっては、そのデータに基づき従来のマーケティングを行う方がより適している可能性があります。
【従業員採用の課題】
店舗運営の視点から、イギリスにおける従業員の採用は、難しい状況にあるように見えました。画材店のオーナーと話をすると、パートタイムでしか働けない人が多く、週5日間働く人はほとんどいないとのことです。また、法定最低賃金は時給10.5ポンド(約2,063円、11月20現在)ですが、一般的なサービス業においては、イギリスのEU離脱以降、人件費はさらに上昇しています。中国企業・海外企業がイギリス市場に参入する際には、企業は採用活動に力をより入れる必要があると言えます。
【健康志向の高まり】
イギリスでの健康意識は高まっていますが、特にロンドンとマンチェスターシティ以外の都市では、健康的な食品の選択肢はあまり多くないのが現状と言えそうです。イギリス市場参入の成功例としては、デンマークのブランド、JOE & THE JUICE (ジョー アンド ザ ジュース)が挙げられます。 健康的で栄養価の高い野菜ジュースとサンドイッチに焦点を当てたカフェ・レストランは、2009年にリージェントストリートに最初の店舗をオープンして以来、現在英国に67店舗を展開し、2022年の売上高4,500万ポンド(約88億4,197万6,201円、11月20現在)となっています。(上海では、このブランドは一度参入撤退しています。健康志向が高まりつつある今なら参入成功するかもしれませんね。)
一方で、一人の中国人として、イギリスにより多くの美味しい中華レストランがオープンすることを心から願っています(笑)皆さんは、イギリスで滞在中は何を食べられましたか?
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いかがでしたでしょうか。
日本人の私が、彼女のイギリス出張でのフィードバックを聞いた時に感じたこととしては、以下の2点がイギリスと日本は共通するのかもしれないなと感じました。
まず、上海で生活する彼女にとっては、EVの普及率は低く見えてしまうようです。一方、逆も然りで、多くの外国人の方が上海に来た際には、路上のEVの数に驚くことになると思います。また、デジタル化がすごい勢いで進んだ中国で暮らす彼女にとって、イギリスの消費習慣は10年前と変わらないように映るようです。この点は、上海で長く生活する私も日本に帰った際に感じることになります。どちらがいいと言った話ではないのですが、そのような違いを楽しむのも出張・旅行の際の楽しみになるのではないでしょうか。
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