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テストドライバー的異音の確認方法 その2

音で危険を察知する

テストドライバー時代の経験を、守秘義務に反しない範囲でいろいろと書いていますが、異音の確認方法などという、マニアックな内容なのにたくさん読んで頂いたようです。やはり、当ブログを読んで下さる人は技術レベルが高いのだと思います。
ブログには様々なものがありますが、当ブログは正直言って地味な内容です。まずは”その1”を読まれていない方は、参考になると思いますので読んでみて下さい。

実際にあった話ですが、近所の70代のおばあさんが「車から音がするから見てくれ」と来ました。車には長く乗っていますが車の事は全く分からない、何かあると知り合いである私に頼る。一番の問題はお金がない、だから私を頼るのです。
このような場合は、現在の状態を正確に相手に伝えないと、故障探求の入口を間違えてしまいます。病院で診療を受ける時も同じですから、イメージ出来るでしょう。
まずは聞き取りを始めました。「どこから音がするのですか?」、「分からないけど、音がする」。「どんな音ですか?」、「分からない」。「どんな時に音が出るのですか?」、「分からないけど、音がする。直して欲しい」。だいたいこんな感じでした。これが車ではなく、体の痛みだったらどうでしょう?医者も困ってしまうでしょう。

とにかく、らちが明かないので、仕方なく「じゃぁ、助手席に乗りますから、音が出た時の走り方をして下さい」となりました。本当は詳しい状況を聞いて、自分一人で再現するのが望ましい。理由は、車の前側に1人乗るか2人乗るかで音の出方が変わる場合もあるからです。
2名乗車で音が出た時の走り方を再現してもらいましたが、異音は全くなし。今度は私ひとりで再現してみますが異音はしません。「音が出ない事には判断しようがありません」と言うと「とにかく音が出るのだから、直して欲しい」と言います。
音というのはとても厄介で、詳しい状況を知らせてもらっても判断は難しい。余りに面倒だから「ディーラーならたくさんデータを持っていますから、ディーラーに行って下さい」と言いました。でも行かないのです、そこそこいい金額を取られるからでしょう。
何度乗っても異音はありません。「もしかしてお歳もあるし、異音が聞こえちゃっているのかも?」と、失礼ながら思っちゃいました。

最近はディーラーに電話で症状を伝えて指南してもらうというのは難しくなったと思いますが、昔は聞くと「それなら○○の可能性が高いですね」と指南してくれる場合もありました。
ただし、前述のような「とにかく音が出るからどうすれば直るのか?」みたいな言い方では「それでは判断出来ないので、車を持って来て下さい」としかなりません。
例えば私なら「Dレンジでアクセル開度3/5、2,500回転で緩やかな坂道を登りながらハンドルを15度位左に切った時に、フロント左の足周りからコツコツ音がする」というふうに、出来るだけ具体的に伝えられる数値も含めてメカニックに伝えます。
どうでしょうか、全然違いますよね。このような伝え方をすると、電話の向こうでメカニックの声が変って来るのが分かります。「あっ、この人、素人ではないな」と分かるからです。正確に、詳細に伝える事で相手がこちらを信用してくれるようになるのです。

ディーラーは膨大な事例を共有していますから、その中から当てはまる可能性が高い事例を教えてくれるはず。ただ、伝え方が下手だったり、「こうに違いない」と思い込みの激しいような場合は、やはり「車を持ち込んで下さい」となります。
ディーラーからアドバイスを受けても解決しなければ、もちろんディーラーに持ち込みます。コンピューター・OBD診断で大体は分かります。
ただ、異音はやはり乗って確認しないといけません。”その1”で書いたように、「シャンシャン」、「カラカラ」は小石が挟まっているとか、乗っかって振動で動いている音で危険度は低いです。
「グー」、「ゴー」や「ゴロゴロ」の連続音はベアリングの異常が考えられるので、すぐにディーラーや整備工場に持ち込んで下さい。タイヤの回転数に応じて音の出方も変わります。

エンジンで言えば、ガソリン車なのにあるアクセル開度で「カラカラ」音がする事があり、ノッキングの可能性が高い。坂道などのエンジンに負荷がかかる時に毎回発生するならほぼ間違いがありません。昔は自分で点火時期をずらしたりしましたが、今は下手にずらせないので、これも業者さんに任せましょう。
FF車で良くあるハンドルを大きく切った時の「カラカラカラ」という大きな音は、ドライブシャフトのベアリングの音なので、早めに交換するしかありません。
これを防止するには、フル転(駐車等で目いっぱいハンドルを切る)をしない事です。駆動しながらハンドル操作もするFF車では、ベアリングの負担が大きい。フル転を減らせば、寿命が長くなります。

実体験であるのは、走っているとフロントの足周りから小さな「コン、コン」という音がたまに出たり出なかったり…。「コツッ」という感覚がハンドルに伝わる。これはテスト走行でも経験がなく分かりませんでした。
修理をしている人に見てもらっても分からない。タイヤを動かしたりハンドルを動かしても止まっていると音は出ない。会社の社用車だったのですが、ある日乗っていてうねっている道を20km/h位で走っていたら、いきなり急停止しました。
もちろんブレーキを踏んだ訳でもないですし、何かと衝突した訳でもありません。とにかく急停止したのです。車の荷物が前方に飛ぶなどして驚いて外に出ると、何と左のフロントタイヤが外側に90度開いていました。あわてて車を引き揚げてもらったのですが、原因は何とロアアームのボールジョイントが摩耗して、脱臼のように外れてしまったのです。
まだ低速だから良かったのですが、もっとスピードが出ていたらどうなったか分かりません。

写真の〇で囲んだのがボールジョイント

ずっと気になっていた音で、そういえば、3人乗車では音は出なかった。
ガタはあったものの、重量で上から押さえていたので音が出にくかったのです。ロアアームはこのようなものです。
上からの写真ですがボールジョイントは○の部分です。

ロアアームのボールジョイント

修理後にメーカーに連絡しました。「その部品を送って下さい」となり、しばらくして報告書が届きました。すり減ったボールジョイントをレーザーでスライスした画像も添えられていました。結果は、ボールエンドは消耗品で、グリスは封入されているものの、場所的に水が浸入し易い。水が入ると錆びてやせ細るのと、定期交換部品との事でした。まぁ、おっしゃる通りです。

その後、自分の車でもフロントから「コン、コン」と感覚が伝わって来たので、すぐに部品を注文。アッパーアームのボールジョイントは自分で交換しましたが、ロアアームのボールジョイントはどう頑張っても外れなかった。足回りをバラしているのを見て、隣のご主人に「なんか、すごい事やってますね」と褒められたのか呆れられたのか。
結局、プレス機が無いと無理なので、純正部品と共にディーラーに出しました。

コンコンという音は、クランクシャフトのメタル打音というのもありますが、オイル管理をちゃんとやっていれば、通常走行ならばまずありません。ちなみに様々なテスト走行がありますが、車の内装の音というのもあります。主にキシミ音で、プラスチックが擦れて音が出る事があります。これも品質悪化になるので、どこから音が出ているかを特定しないといけません。どうやって特定すると思いますか?
正解は音が出ている状態から、一つ内装の部品を外して同じ走り方をする。まだ音が出るならもう一度、というふうに部品を外しては走るを繰り返すのです。それで音が出なくなれば、「この部品」と特定出来て、削れ方や擦れた場所を確認して対策する。とても地味な作業です。

ドイツのテスト基地にあったベンツを動かすのに、フット式のサイドブレーキを解除するのを忘れて、ゆっくり動かしたら「パキン」という音がした事がありました。そっと戻して置いたけれど、何の音だったのだろう?
おそらく、今の時代は車の状態を確認しながら運転する人は少ないと思います。車のメーターの中で最低限、水温計はメーター(針式)式がいい。整備に詳しい人ならご理解頂けるでしょう。
メーター式なら微妙な変化を掴みやすい。いきなりランプが点灯するよりずっといいですよね。

なので、車には水温と電圧計が表示出来るレーダー探知機を付けています。それらをチェックしながら走る事で、故障が起こる前兆を知る事が出来ます。
転ばぬ先の杖ですが、もう一つ、実は除電もそのような一面があるのです。例えばベアリングにはグリスが封入されています。静電気がオイル・グリスに帯電すると粘度が上昇します、簡単に言えば粘りが多くなります。
トヨタの特許によると、帯電する電圧は何と1,000V以上にもなります。
いくらベアリングとはいえグリスが固くなると、動いたり回転させるのに余計に力が必要になります。
除電すれば少ない力で動きますから、部品が長持ちする。いい走りになるだけではなく耐久性が増すので、部品交換のスパンが長くなり節約にもなります。転がり抵抗が減るから、タイヤも長持ちします、理に適っていますね。
体感出来る除電効果は、タイヤからどうぞ。

お知らせ
10月13日(日)
モビリティーリゾートもてぎで開催される、Honda エコマイレッジチャレンジにてマジ軽ナットシリーズが展示されます。
高校生のクラスに参戦する神奈川県立平塚工科高等学校のエリアで、マジ軽ナット タイヤ用や、マジ軽ボルト・ナット・バンド等をご好意により展示して下さるそうです。
今のところ、マジ軽ナットをエコランで採用している高校は3校。除電の効果はまだまだ知られていません。

社会部はソーラーカーレースで優勝経験もある優秀校

工業高校の先生なら、まさか知らないはずは無いと思いますが、一応転がり抵抗と燃費の関係です。

横浜ゴムのエコタイヤのホームページから引用
マジ軽ナットのパンフレット(表面)

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