![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160351531/rectangle_large_type_2_f20932df6b8d0b4d453c9a4cc96c67c9.jpeg?width=1200)
【旅して取り戻す、あの頃の私】-島ごと美術館-(エッセイ小説)
![](https://assets.st-note.com/img/1730561436-WTGiIYhxkaPcBJnQ7q2O98vy.jpg?width=1200)
TRIP STORY とは?
何かと忙しい
日常を過ごす主人公たち。
そんな主人公が“旅”へ行き
「本当にしたいこと」
を見つける明日への
希望を描いた
[エッセイ小説]です。
この物語があなたの人生にとって
大切なきっかけが見つかる
“旅のガイド”
となりますように。
物語の舞台
-企画-
島ごと美術館
-住所-
瀬戸田町内(生口島・高根島)各所
-営業日-
年中無休
-入場料-
無料
※観覧無料
※生口島にある「飛石」は瀬戸田小学校中庭にあるため事務所へご連絡お願いします。
-お問い合わせ-
瀬戸田支所しまおこし課しまおこし係
TEL:0845-27-2210
-Trip Story-
主人公紹介
美咲は、30代半ばの女性で、
尾道市にあるカフェで働いている。
都会の喧騒から離れたこの街で、
忙しい日々を送っている。
毎日忙しい仕事に追われる中、
ふとした瞬間に心の中で
「もっと自分らしく生きたい」
と感じることが増えてきた。
尾道市から生口島への小さな船旅が、
彼女の心に新しい風を吹き込むきっかけとなる。
地元の人々との交流や、
島の自然に触れながら、
美咲は自分を見つめ直し、
少しずつ変化していく。
彼女が迎える新たな一歩とは、
一体どんな未来が待っているのだろうか。
《耽りて、考えふ》
![](https://assets.st-note.com/img/1730596638-R1ZPDfW9CXtYJj7nBxSi0LM3.jpg?width=1200)
仕事に追われる日々の中、
美咲はふと
「生口島に行こう」
と思い立った。
尾道市瀬戸田にある
この島には、
美しい自然と共に
点在するアート作品があり、
ずっと心の片隅に残っていた場所だ。
週末、フェリーに揺られて
生口島に到着すると、
心の中の重みが
少しずつ溶けていくのが分かる。
![](https://assets.st-note.com/img/1730597714-YEjT7cwG8Nu0JyDo9dSHF5bh.jpg?width=1200)
柔らかな潮風が頬を撫で、
空には雲がゆったりと流れている。
日々の喧騒から遠く離れたこの場所は、
時間の流れさえも異なるようだった。
美咲が最初に目にしたのは、
広い空の下にぽつんと
立つ彫刻作品だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1730596877-SlncqRLxhQ1sp2AWTPdjOU9o.jpg?width=1200)
曲線が美しく、
どこか温かみを感じるその作品は、
風にそよぎながらも、
確かにそこに「在る」存在感を放っていた。
作品名は「一羽の鳥の為に」
作品の前で足を止め、
じっと見つめる。
![](https://assets.st-note.com/img/1730597164-unUBNA19WHxp4GcEhCRDPZqK.jpg?width=1200)
何も語らない作品の中に、
美咲は自分の思いが
投影されていくのを感じた。
「こんなふうに、ただここに在り続けるだけで、意味があるのかもしれない」
日々の忙しさに押し流されるように、
美咲は自分の存在意義を
見失いかけていた。
しかし、
この彫刻が語る無言のメッセージに、
少しずつ心が解きほぐされていく気がした。
次に訪れたアートは、
「風の中で(瀬戸田)」
巨大なサクソフォンが目印の作品
![](https://assets.st-note.com/img/1730597195-VvwlMyUe2HjXRYx3iEokZ7Kt.jpg?width=1200)
力強く空に向かって伸びるその姿は、
音楽が視覚に変わったかのように見えた。
格子の中で無限の音楽が
響き渡り
心の中に何かが、
解き放たれていく。
そう感じさせられた。
![](https://assets.st-note.com/img/1730597306-gCtAqwRVBDT3Q0vUG5e8zES7.jpg?width=1200)
美咲はこのサクソフォンに
向かって小さくつぶやいた。
「こんな風に自由に、思うままに音を奏でることができたら、どんなに素敵だろう…」
立ち止まって見上げる彼女の姿は、
まるでサクソフォンが
心の内に眠る本音を
響かせてくれるかのようだった。
美咲はその場で深呼吸をした。
![](https://assets.st-note.com/img/1730597636-Q15mSlOvp3bncfgGsHCeWFrT.jpg?width=1200)
仕事や生活に追われ、
息苦しさを感じるときもあるけれど、
こんなふうに自分を
取り戻せる場所があるのなら、
また明日も前を向いて歩いていける。
![](https://assets.st-note.com/img/1730597516-fTIESK7joq3PLZ10VyGnhO4R.jpg?width=1200)
夕方の空が赤く染まり始めた頃、
美咲は島を離れるため
フェリー乗り場へと向かった。
心の中に灯った小さな明かりが、
穏やかに美咲の未来を
照らしているようだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1730597556-QlIiNx7jVCsXq1uZ9tdbkTJP.jpg?width=1200)
※使用した写真は実際の生口島の写真です。