魂の通り道
かつて
添乗ガイドをやっていた時
移動の機内では、いつもほろ酔いして熟睡していた
僕は長距離のフライトの時には
搭乗前から結構飲む
離陸後 最初の食事をしたらすぐに寝るため
なので成田や羽田などの空港内で
どこでお酒が買える/飲めるかはだいたい把握している
時間やお金がないときのためのコンビニの場所も把握している
そのため
大体は予定通りに食事後に眠りに落ちる(大抵は映画の途中だ)
もちろん食事中も最大限飲む
ある日
確かエチオピア航空でインチョン経由アフリカへ向かっているとき
たぶん深夜2時ころだと思う
いつも通り気持ちよく眠っていたけど
突然
ものすごく寒くて目が覚めた
CAさんが間違えて冷房を強くし過ぎたのかと思って
周りを見たけど
誰も騒がず、みな気持ちよさそうに熟睡している
あれ?
僕だけ寒い?
毛布を追加でもらおうとしたけど
声が出ない
手も動かない
何だこりゃ?
マラリアかなにかに罹ったか?
まずい
まだ行きのフライトだ
今マラリアが発症したら仕事にならない
どうしよう?
悩んでいたら
突然 スーッと 楽になった
手も動く
そして何故か
汗がドバーって出てきた
その後は寒くも、暑くもなく全くいつもの機内になった
その時 気が付いたのだけど
機内特有の”ゴーッ”という低い音が小さく聞こえてきた
誰かがトイレを流す”ブシュー”という音も聞こえる
この数分はなにも聞こえてなかった・・・
改めて周りを見るが
なにも変わっていない
寒さに震えていたのは
5分くらいだろうか・・・
あるいは1分?
よくわからないけど
そんなに長い時間ではない
昔 何かで読んだけど
空の上には
”魂の通り道”
というものがあるらしい
飛行機などで うっかりそこに入ると
死者の魂に導かれて そのまま
”あの世”に行ってしまうこともあるらしい
(紅の豚でも”そういう”シーンがあった)
今のが”それ”だったのか?
だとしたら
一歩間違うと全員”あの世”行きだったのか?
機長が霊能力に優れていて 全員助かったのか?
あるいは
反応した者(僕だ)だけが連れていかれるのか?
それならば なぜ助かったのだろう?
いろいろと考えているうちに
ふたたび深い眠りについたとさ