集客なくして収益なし。数と愛を両立する強いビジネスのつくり方【第14回 池田紀行のマーケ飯】
「マーケ飯」第14回のゲストは、損害保険ジャパン株式会社 執行役員ビジネスデザイン戦略部長の中村愼一さん。
今回のテーマは「ユーザーを常に増やし、愛され続けるマーケティングとは?」。パナソニック時代には会員サイト「CLUB Panasonic」の創業期に参画、現職の損保ジャパンでは「LINEほけん」のリリースや「SOMPO Park」のローンチなど6つの新規事業の立ち上げを行ってきた中村さん。そんな中村さんとともに、全マーケターはもちろん事業者・ブランド担当者も必見の熱い議論をお送りします。
1分で読める記事のまとめ
・新規事業の創造は、社会課題を自社の強みで解決すること
・他社とのアライアンスでスピードを手に入れる
・ユーザーとコミュニケーションを図るうえで大切なのは「シナリオを描く」こと
・データ取得にもシナリオ作成にも必要な「集客」
・集客のポイントは「インセンティブ」とその「見せ方」
・いかにメッセージを届け、態度変容させるかが「マーケティング」
・マーケターとしての視座を上げるには「日経新聞を読む」こと
・並外れて優秀なマーケターの共通項は「人脈の多さ」と「コミュニケーション能力の高さ」
データをもとに、ストーリー・シナリオを描く
池田:「SOMPO Park」や前職の「CLUB Panasonic」など、数多の事業においてユーザー・ファンを増やすことに成功してきた中村さんと、やっと対談できることになり心からうれしく思います!
さっそく最初の質問ですが、前職であるパナソニックから現職の損保ジャパンへフィールドを移した経緯を教えてください。異なる業界へ舞台を移し、どんなことを担当されているのか気になっていました。
中村:損保ジャパンから「新規事業を担当し100億円の利益をあげて、保険と介護に次ぐ柱をつくってほしい」というオファーをいただき、2017年11月にジョインしました。自動運転技術を筆頭に続々と新しい技術が生まれ、自動車保険が主力ではなくなるかもしれないという現代。そんな状況下で新規事業を任されることになり、これまで7つの事業を立ち上げてきました。世界初の“贈れる保険”である「LINEほけん」を立ち上げたり、アメリカのワン・コンサーン社と一緒に洪水の予測や地震が起きた後の被害の予測を行うシステムをつくったり、駐車場シェアリング大手の「akippa」に出資してグループ会社化したり、DeNAと個人間カーシェアやマイカーリースの合弁会社を設立したり、新たな事業を起こし軌道に乗せるため奮闘し続けてまいりました。
池田:約4年の間で7つの新規事業立ち上げですか......! 中村さんが損保ジャパンで立ち上げたサービスのひとつに「SOMPO Park」がありますが、ほかの事業同様好調ですよね。
中村:そうですね。おかげさまでローンチから2年半で会員数500万人、アクセス数は月間8,000万といった現状です。前職で担当した「CLUB Panasonic」で培ったノウハウをベースにPDCAを回していることもあり、非常にいい結果を出し続けられています。
池田:そのノウハウが非常に気になるところなのですが、「CLUB Panasonic」が好結果を残すために最も大切にしていたこと・ノウハウの中で肝となっていることは何でしょうか?
中村:ユーザーとコミュニケーションを図るうえで「シナリオを描く」ことをとにかく大切にしています。損保ジャパンがもつユーザーの契約者情報(データ)は約2,000万件。その情報をもとにしてユーザーが抱える悩みや困りごと、置かれている状況をまずは探っていきます。
例えば、自動車保険を解約した人がいたとするならば、「自動車保険を解約」=「車を所有することを諦めた」と仮定できます。かつて車を所有していたのならば、その車を停めていた駐車場は現在使われていないかもしれない。そこで「かつて車を停めていた駐車場はいまどうなっていますか?」「車を諦めたことで空いてしまっている駐車場を誰かに貸しませんか?」「akippaというサービスがあるのですが……」と全国の5万店・20万人の保険営業員からユーザーへリアルに声をかけるのです。そうすることで、自動車保険を解約したユーザーと別のかたちでつながっていられる、損保ジャパンのユーザーでい続けてもらえるのです。さらに、そのユーザーの子どもや孫が車を買うときに、そこでまた新たなつながりを生み出すことができる。保険に入ってもらうまでのシナリオだけでなく、その先ユーザーの身に起こり得る展開まで想像して未来のシナリオを描けば、可能性はどんどん広がっていくんです。
池田:駐車場を舞台に繰り広げられる人生のシナリオを描くんですね!
中村:その通りです。じゃあ先ほどのユーザーのお子さんがマイカーリースの契約を実際にしたとするならば、「その車をカーシェアリングサービスのAnyca(エニカ)で貸してみませんか?」「カーシェアで得られる収益を踏まえると、お持ちの軽自動車に乗る金額とほぼ同額でアルファードに乗れますよ!」とさらに声をかけてみる。シナリオをさらに描くことで、ユーザーとのつながりもどんどん広がります。また「若者のクルマ離れ」などの社会課題も解決できる可能性があります。
Anycaもakippaも類似サービスはまだまだ少なく、いまのところ競合がほぼいない状態なので、プラットフォームを確立させるために一人でも多くのユーザーのシナリオを描いて提案し、たくさんの人に会員となってもらうことで独占状態になれるという狙いもあります。
池田:「保険を解約したということは車を手放した可能性が高い」→「自宅の駐車場が空く」→「駐車場を貸してもらう(Akippa)」→「Akippaの駐車場を解約する」→「車を買う可能性が高い」→「マイカーリース契約と自動車保険を提案する」→「乗っていない時間が生まれる」→「乗っていない間は誰かに貸すことを提案する(Anyca)」というように、損保ジャパンがもつサービスの中でぐるぐる回遊してもらうわけですね。こりゃすごい! このシナリオを描くための想像力がとても重要な能力ですね。
中村:そうですね。とにかくビジネスはシナリオが重要なんです。高齢者の方が車に乗るならば、やっぱり安心して乗ることができる車を選びたいはずですよね。加えて、ご家族も「この車なら安心して乗せられる」と思いたいはず。それが実現できれば、高齢者の運転寿命が伸び、結果保険の契約期間も自ずと伸びる。その未来を現実にするために、損保ジャパンはユーザーに対しいま何をするか……とシナリオを描くんです。もちろんすべてが想像通りにいくわけではないですが、シナリオを描かないことにはビジネスは始まらない。どういうシナリオを描いたら相乗効果を得られるか、を常に考えることがユーザーの獲得につながるのです。
池田:高齢者の運転寿命の話でいうと、この間、父にサポカー(※1)を買ったのですが、2年で免許を返納してしまったんですよね。先ほど中村さんがおっしゃったシナリオを、僕の父の人生で実現させるシナリオだってあったわけですね。
中村:「ある一定の年齢を超えたらサポカーに乗ろう」「〇歳以上はサポカーでないとダメ(サポカー免許)」という時代に今後なっていくと言われています。そうすると、マイカーリースの免許返納オプション(2年経てばマイカーリース契約を無料で解約できる特約)やサポカー保険が必要になってきますよね。すでにマイカーリースの免許返納オプションはリリースして好評を得ています。これも損保ジャパンが想像できる社会課題解決のシナリオの一つです。
池田:もうその未来を想定して動き出しているわけですね! シナリオを描くためには、先ほどもお話されていた“データ”が必要不可欠ですよね。
中村:はい。シナリオを描くための環境づくりもやはり大切で、その点損保ジャパンには「この人は9年間軽自動車に乗っているな」「この人は70歳を超えているけれど、いまも軽自動車に乗っているぞ」などの膨大なデータがあります。データがあるというのは相当の強みです。そしてデータをもとにシナリオを描き、損保ジャパンの5万店の代理店から実際にユーザーとコミュニケーションをとっていくのです。こうして高齢者の運転事故の多発や免許返納問題などの社会課題を解決できるのです。
「データは強み」「シナリオを描くことが大切」という話をしましたが、その2つを行うために欠かせないのは「集客」です。人がいないことにはデータも集まらないし、誰かを対象にシナリオを描くこともできない。「集客ないところに収益なし」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。つまり、「いかに集客するか」にも注力しないといけません。
ユーザーの声を聴き、支持されるためのマーケティング
池田:「集客」のワードを聴き、データの源流となるユーザーを「SOMPO Park」ではどのように集めているのだろう、という興味がわいたのですが、中村さんは集客のノウハウをパナソニック時代に蓄積してきているんですもんね……!
中村:まさしくそうですね。前職のパナソニックで総括責任者を務めていた「CLUB Panasonic」へは、サイト立ち上げから半年後にジョインしました。僕が入ったときにはすでに会員数10万人とそれなりの数がいて、「さあここから会員をどう集めていこうか?」という状況の真っ只中でした。
池田:10万人からの集客についてももちろん気になるのですが、なぜパナソニックという大企業が「CLUB Panasonic」のような会員サイトを立ち上げたのかにも興味があります!
中村:立ち上げの理由は大きく分けて2つあります。一つ目について、昔は街の電器屋さんがリアルにCRMをやっていたので、お客様の子どもが幼稚園に入学したら運動会を撮るためにビデオムービーをおすすめしたり、お客様の使い方や製品の評価などをパナソニックにフィードバックしてくれ、その内容を製品開発に役立てたりしていました。が、街の電気屋さんの販売比率が落ちてきて製品評価などが入らなくなってきたのです。それで直接パナソニックがお客様とつながり、お客様の声を聞き、CRMする必要があったのです。
もう一つは、テレビからインターネットにお客様の接点が変わってきて、テレビCMだけでなく、ネット上でもお客様とつながる必要があったからです。
池田:そんな背景があったのですね。「CLUB Panasonic」がローンチされた頃を思い返すと、当時「コカ・コーラパーク」「サントリータウン」そして「CLUB Panasonic」の3社がCRM系のオウンドメディアとしてとくに目立っていた印象があります。
中村:そうですね。そんな状況下で集客をしていかなければならなかったのですが、ただ運営していても当然人は集まってきません。なので、ユーザーに対しインセンティブをしっかりともたらしながら運営をしていきました。結果的に、月間のアクセス数が最高で2億以上は獲得できていましたね。メディアとして十分よい数値が出ていたと思います。
池田:もちろんKPIとしていた数値はあったとは思いますが、あそこまで会員数やアクセス数が増えた理由・集客が成功した理由がインセンティブにある、ということですか?
中村:インセンティブとその“見せ方”ですね。会員数が100万人くらいになってきてから、製品認知をさらに高めるような仕組みをつくりました。「CLUB Panasonic」から製品サイトへ遷移させることを目的に、例えば毎日「エアコンの新製品」をテーマにクイズを出し、「ヒントはこちら」で商品サイトへリンクさせる。それだけで400万近く商品サイトのPV数が増えるんです。
さらに、クイズに回答することでエンジョイポイントを貯め、抽選に申し込める仕組みもつくりました。ここで注目してほしいのが“換金性のないポイント制”にしたこと。忙しい合間を縫ってクイズに参加して一生懸命回答したのに、その見返りが「2ポイント(=2円相当)プレゼント」だとちょっとがっかりしますよね。「エンジョイポイント(会員を対象とした抽選で景品が当たるポイントサービス)で5,000ポイントもらえます!」の方が「頑張って貯め続ければVIERA(ビエラ)プレゼントの抽選に応募して当選できるかも⁉」とユーザーのテンションが上がります。ゲームのような感覚で参加してもらい、ポイントが貯まっているという充実感を得てもらうことが、「CLUB Panasonic」がユーザーを獲得するために大切にしたことです。
池田:貯まる充実感と、抽選に応募する楽しみ、そして欲しかった製品に手が届くかもという期待感……たしかにワクワクしながら「CLUB Panasonic」会員でい続けられますし、非会員にも教えたくなりますね。
中村:さらに、年間3,000万セッション程を製品サイトに遷移させるような仕掛けをつくりました。YouTubeに「CLUB Panasonic」のチャンネルをつくり、クイズをおこなったり、最後まで動画を見たらポイントがもらえるようにしたり、「CLUB Panasonic」というプラットフォームをより充実させる工夫を施しました。動画も当時全体で約2,000万回再生されていたのではないでしょうか。
これらのノウハウは、「SOMPO Park」でも活用し、しっかりと良い結果が現れましたね。
池田:「ポイント目当てで集まってきた会員は顧客としての質が悪いのでは?」といった、ネガティブな意見が社内から挙がっただろうな……と推察したのですが、そのあたりはいかがでしたか?
中村:たしかにそのような声もありました。とはいえ、ポイントを貯めている人だって家電は買いますよね。「テレビでバラエティ番組を見ていて、その間に挿し込まれるテレビCMを観た顧客、またYahoo! のトップページにエンタメニュースを見に来て広告バナーを見た顧客の質は良いと言えるのか?」と言っているのと同じです。
ザイアンス教授の法則(単純接触効果)では「接触頻度が高いとそのブランドに好意を寄せる。接触させる方法は関係ない」と定義づけられています。テレビCMが最たるものですが、「CLUB Panasonic」の手法も同じことなのです。
そのような社内の声は、ユーザーの質とロイヤルティーを見せることで変わっていきました。新宿でVIERAの展示体感イベントを行った際、「CLUB Panasonic」会員に案内して、誰が来場したのかをQRコード提示で分かる仕組みを取り入れたところ、来場者の8割が「CLUB Panasonic」の会員だったんです。
また、地方での商品展示会に「CLUB Panasonic」会員も呼んだところ、リアル店舗が集めたお客様よりも「CLUB Panasonic」会員の参加数が多かったんです。
2例とも、目に見えるかたちでNPS・ライフタイムバリューの高さが実感できる結果を得られたことで、少しずつ社内の見方も変わっていきました。具体的な数値を見ると顕著で、年間の世帯あたりの家電購入の平均額が約10万円のなかで、パナソニック製品の購入額が非会員だと約26,000円なのに対し、会員は約77,000円だったんです。
そして決定的に社内からの評価が一変したのは、東京ドームで「CLUB Panasonicファンフェスタ」を行ったときですね。
池田:一体何があったのか気になります!
中村:まずはわかりやすく来場者数ですが、抽選による完全招待制・2日で6回の入れ替え制にしたところ、4,000人もの会員が来場してくれました。招待する会員を獲得しているポイントやロイヤリティを考慮したうえで時間帯を分けて招待したら、通常お客様の足がもっとも遠のく夕飯時ですらしっかり会員が来場してくれたんですよ。
怪訝そうな目を向けていた社員にとってこれまで「ネットの中の住人」という位置づけだった会員が、「CLUB Panasonicから来ました」と目の前にやってきたことで「CLUB Panasonic会員はちゃんとお客様である」と実感できたようです。
池田:多くの会員たちがリアルなイベントにちゃんと来てくれたことが、社内からの風向きを変えたんですね!
中村:加えて、ファンフェスタの内容を商品体験メインにしたことも功を奏したんです。クチコミで「商品をちゃんと知りたい」とか「量販店だけでなく、ちゃんとメーカーであるパナソニックの方の声を聞きたい」という要望が結構あったので、リアルでイベントを行うなら商品を体験できるようにしたいと思っての内容だったのですが、来場した会員が商品について熱心に質問してくれたり、商品のことを社員も驚くほど調べてきてくれたりして。
池田:最初はポイント目的で会員になっていたとしても、「CLUB Panasonic」を通して製品の興味喚起ができていて、それが成果としてリアルの場で表れたんですね。
中村:これは非常にうれしい結果でしたね。何より上層部が認めてくれたのは、『PV数2億だとピンとこないけれど、リアルにこれだけの熱心なパナソニックファンが「CLUB Panasonic」によって動いた』というところ。そこにぐっときたみたいです。
算数よりも人を見る。マーケターに必要なのは“コミュニケーション”
池田:大企業での数々の事業を成功に導いてきた中村さんのような思考性をもった事業家になるために、30歳前後の若いマーケターは何をしたらいいですか?
中村:デジタルマーケティングに固執しない方がいい、ということをまずは挙げたいです。お客さまへいかにメッセージを届け、態度変容させるかが「マーケティング」です。保険を例にすると、お客さま宛ての郵送物の余白部分に「SOMPO Park」の案内を記載する、などの工夫をしています。目的はメッセージを届けることなので、その方法を模索するうえでデジタルに捉われすぎない方がいい。デジタルマーケティングにこだわらず、広い視点で物事を見た方が人一倍成長できるような気がします。
池田:若いころはどうしても自分が知っている範囲での手法に捉われてしまいますもんね……。
“視野”と“視座”という言葉があって、視座というものは責任ある立場や経験によってしか上げられないように感じられるのですが、若手が意識的に視座を上げるにはどうしたらいいでしょうか?
中村:とてもシンプルなことかもしれませんが、僕は「本を読む」とか「日経新聞を読む」といったことが重要だと思っています。経済のトレンドを見て自分の意見をもつ・疑問をもつ。その訓練を若手がするには、やはり日経新聞を読むことが基本になってくると思うんですよね。
池田:なかなか若者は日経新聞を読まないですよね……! あの文字量にはなかなか耐えられないと思います(苦笑)。
中村:新聞は一覧性があるので、自身が興味をもっていない情報も自然と目に入ってくるんです。ネットは自分が興味あるものや心地いい情報しか入ってこない。関心がなかったニュースに興味をもち、そこから想像力を働かせる訓練をすることが、発想力やシナリオを描く力につながるのです。仮説を立てる練習を日頃からするためにも、新聞を読むことはうってつけです。
池田:ネットの情報は、自身が関心をもっていそうな情報ばかりが手元に集まるような仕組みになっていますもんね。俗的な方に寄って行ってしまっているし、アクセスを増やすため読者に迎合しているなと感じます。一方で、新聞は違う。レコメンドもへったくれもない新聞が、もしかしたら今一番おもしろいかもしれませんね。
中村:それぞれに良さがあるんですけどね。とはいえ基本はやはり日経新聞です。経営層と話すなら、なおさら日経新聞を読んでいないと会話ができないですからね。
あとは、やはり何事もチャレンジすることが成長の糧になりますよね。いまの時代はすごく恵まれていると思います。自分がこの時代の若者だったら起業していたかもしれません! 昔は新卒で大手企業に入らないとその後の人生で大手の道に進めない、なんて時代でしたが、いまは優秀な子が進んでベンチャー企業にいく時代。自分のアイデアで起業できるし、仮に失敗しても「起業した経験があります」という箔があることで、大企業に入る道が拓く可能性がある。つまりは挑戦したもの勝ちです。
池田:すばらしい経歴を積み上げてきたマーケターを見ると、どうしても(誰かに丁寧に教えてもらって育ったというより)勝手に育った人が多いように思えるんですよ。再現性がないというか……異常値の人たちばかりで、そういった人たちの共通項って何だろうと疑問に思うのですが、中村さんはどう思いますか?
中村:僕が思う共通項は、社外の人脈をたくさんもっていることだと考えます。分け隔てなく人と付き合い、ネットワークが広い人は優秀であるケースが多いですね。要は、コミュニケーション能力が高いということ。損保ジャパンのビジネスデザイン戦略部の行動指針も「コミュニケーション・スピード・トライ」です。
池田:社外の人脈をつくるために、若手マーケターが外部のコミュニティーに潜り込むにはどうしたらいいのでしょうか?
中村:方法ではなく性質のアドバイスかもしれませんが、とにかく先輩からかわいがってもらうことだと思います。男女関係なく、先輩の行く場所に付いていったり、自分から話を聴きにいってみたり、かわいがってもらえるのは若者の特権なので積極的に行動に起こしてみるのをオススメします。僕も、若いころは後輩より先輩の方が付き合いがあった気がしますね。
池田:僕は、いっぱしの人間になって初めて目上の方のコミュニティーに入れてもらえると思っていました。が、振り返るとたしかに駆け出しのころは若さだけを武器に先輩たちの輪に混ぜてもらいながら、その場の空気感などを学んでいた気がします。
中村:怖がらず積極的にコミュニティーへ入っていくことが大切です。「人なつっこさ」は武器になる。コミュニケーション能力が高い人がマーケターとしても勝つんですよね。
池田:ずばり、中村さんが思う「人なつっこさ」の磨き方とは⁉
中村:おしゃべりであること! 会話をしているうちに自然と人は仲良くなるものです。おしゃべりな人はしゃべることを努力だと思ってない。まずは近くの先輩や社内の人と会話を増やすことから始めてみてください。
池田:優秀なマーケターにとって重要なコミュニケーション能力を高めるには、まず自分がおしゃべりになることですね! 中村さん、本日はありがとうございました!
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★いますぐできることをチェック!
・どんなシナリオでユーザー(消費者)を獲得できそうか?
・ユーザー(消費者)にもたらされるインセンティブはあるか? ユーザーの声を聴いたうえで適切なインセンティブになっているか?
・今日、誰かとコミュニケーションをとったか?
「ユーザーを常に増やし、愛され続けるマーケティングとは?」をテーマに展開された今回の議論。ユーザーの「シナリオを描く」と言われるとつい難しそうなイメージをもってしまいますが、その真意はユーザーの人生を深く考え、自社が寄り添えるよう可能性を想像することである、と中村さんの歩みから学ばせていただきました。また、マーケターの武器になる「人なつっこさ」は、マーケティングの知識や実務経験に関係なく誰もがすぐに実践できる能力なので、若手マーケターの皆さんがポジティブに成長する勇気になったのではないでしょうか。
また中村さんの著書の『ユーザーファーストの新規事業 社内の資産で新たな成長の種をまく』が3月28日に宣伝会議から発売されます。現在予約受付中です。ぜひ読んでみてください。
「マーケ飯」では、今後もさまざまなフィールドの第一線で活躍されている方と池田のトークを発信していきますので、どうぞご期待ください!
過去の「マーケ飯」記事は、以下のマガジンよりご覧いただけます。
※新型ウイルス感染症防止対策に配慮したうえで2021年12月頃に収録、撮影時のみマスクを外しています。