本多正信 上司と部下をまとめてフォローする話
徳川家康の腹心として知られる本多正信。
大河ドラマ『どうする家康』で松山ケンイチさんが良い味出していましたが、私は『真田丸』の近藤正臣さんも好きです。
それはさておき、彼は本当に良い補佐役なんですよ。
こんなエピソードがあります。
ある時、家康は部下のミスにブチ切れます。
ホトトギスが鳴かないとき「鳴くまで待とう」なんて評される家康ですが、実は割と短気です。普段は意志の力で押さえつけている感じでしょうか。
とにかく家康、ブチ切れて部下を怒鳴りつけます。
そこに通りかかった本多正信。
「おや殿、どうなさったのですか?」
「おお正信、実はこやつがこんなミスをやらかしてな」
事情を聞いた正信は、家康以上の剣幕で部下を叱りつけます。
「なんてことしてくれたんだ! 自分が何をしたか分かってるのか!? 殿のお怒りもごもっともだ。っていうか、殿はご寛容だから大目に見てくださっているけれど、他家なら切腹モノの大失態だぞ! ねえ殿!?」
「え? いや、いくらなんでも切腹は」
「それにしても殿はご立派ですなあ!」
「は? なにが?」
「本当は怒ってなどいないくせに、こやつが同じ過ちを繰り返さないように、敢えて怒ったふりをなさるなんて」
「え、ふり?」
「なあおまえ、殿が怒ったふりまでする理由が分かるか? それはな、殿がおまえを高く評価しているのだ。だからこそこのように厳しい態度をとられる。ねえ殿?」
「お、おう……」
「だからそんなにしょんぼりする必要はないぞ? 失敗に気を付けて、これまで通りお仕えすれば良いのだ。殿はおまえの忠義を忘れるようなお方ではないぞ。
ところで殿、大声を出してのどが渇いたのでは?」
「え、喉? いや別に」
「渇いてますよね! おいおまえ、今すぐ殿のためにお茶を持って参れ」
上司の怒りをなだめつつ、部下との間にわだかまりが残らないようケアも欠かさない。
腹黒い策謀家みたいに描かれることも多い本多正信ですが、実は気遣いの人なのです。
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