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中古ゲームソフト事件

こんにちは。

 1986年に発売されたアメリカ版「スーパーマリオブラザーズ」のソフトが未開封の状態でアメリカのオークションに出品され、約7300万円で落札されたというニュースを見て、小さい頃のワクワク感を思い出させる+希少性で大儲けできるのかあと考えている松下です。

 さて今日は、中古ゲームソフト事件(最判平成14年4月25日民集56巻4号808頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 中古ゲームソフトの販売をめぐって、ゲームソフト会社のスクウェア、コナミ、ナムコ、カプコン、ソニーコンピューターエンタテインメント、セガなどが、中古ゲーム販売店「わんぱくこぞう」を経営する株式会社アクトに対して、ゲームソフトの販売差し止めと廃棄を求めて大阪地裁に提訴しました。その一方で、中古ゲーム販売店「カメレオンクラブ」を運営する株式会社上昇はエニックスに対して、契約で売り上げの7%を支払うとの約束があったにもかかわらず、エニックスのソフトの差止請求がされたことについて、差止請求権が存在しないことの確認を求めて東京地裁に提訴しました。すると、大阪では中古ソフト販売店が敗訴したのですが、東京では逆に中古ソフト販売店が勝訴するという、東西で判決がねじれた状態になりました。大阪高裁と東京高裁では、どちらも中古ソフト販売店が勝訴しましたが、この判決に納得できないゲームソフト会社は最高裁に上告しました。

2 メーカー側の主張

 ゲームは、その表現方法が映画と類似しているので、映画の著作物にあたる。映画の著作権者には、頒布権という有料無料に関係なく公衆に譲渡したり貸与したりするなど、広い範囲に配布して行き渡らせる権利が認められています。ゲームも、映画の著作物であれば頒布権に基づいて、中古ソフト販売店によるソフトの販売(譲渡)を差し止めることができるはずだ。

【著作権法2条】
十九 「頒布」とは、有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物 又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物 の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
【著作権法26条】
① 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。
② 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。

3 中古ソフト販売店側の主張

 ゲームは映画の著作物ではありません。万が一、ゲームソフトが映画の著作物であり、頒布権が認められるとしても、頒布権は第一頒布に適用されるのみで、その後の再頒布には及びません。なぜなら、もともと頒布権は、映画製作会社がオリジナルネガフィルムを複製して、映画館経営者に貸し渡し、上映期間が終了したときに返却させるといった、映画フィルムをコントロールするために映画の著作権者にのみ認められた強力な権利です。映画の配給制度に関係なく、大量の複製物が製造され、その1つ1つが少数の者によってしか視聴されないゲームソフトは、頒布権の対象にはならないと思います。

4 最高裁判所の判決

最高裁判所は「家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は、いったん適法に譲渡された複製物について消尽し、その効力は、当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばない」として、ゲームメーカの訴えを退けました。

5 中古ゲームソフトの販売は適法

 不要となった映画のDVDやゲームソフトを中古品を扱うお店や知人に売却しても、著作権法上は問題になりません。ただし、違法に複製したり録音したものを売却すると違法になりますので、くれぐれも注意しましょう。

 では、今日はこの辺で、また。


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