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ライダーマン事件
こんにちは。
日本のコスプレは、文化として定着したのみならず、芸術的な側面も評価されていますね。
その反面で、コスプレが著作権侵害になるかどうかが気になるところでしょう。
この点に関して参考となる事例として、「ライダーマン事件」(東京地判昭和52年11月24日裁判所ウェブサイト)を紹介してみたいと思います。
1 どんな事件だったのか
おもちゃ製造業者が、改造人間ライダーマンのお面を無断で作成し、販売していました。「仮面ライダーV3」の映画の著作権を有する東映は、無断でライダーマンのお面が販売されていることを知ったことから、そのお面の製造・販売の差止めを求めました。すると逆に、おもちゃ製造業者は、東映に対して差止請求権の不存在確認を求めて、訴えを提起したのです。
2 おもちゃ製造業者の主張
わしらが作ったお面は、ライダーマンを参考にしたわけでも、模倣して制作したわけでもあらへんで。どうみても、お面の表情はライダーマンの表情と似とらんで。
ほんでな、映画の著作物の複製ちゅうのは、その物が一個の思想を表現する記述的内容のものでないとあかんねん。けど、お面が何らかの思想を表現する記述的内容を有するものではあらへんで。そもそもライダーマンは、サブキャラなんやから、東映に商品化の権限はないんと違うか。
3 東映側の主張
販売されていたお面は、仮面ライダーV3に登場するライダーマンの本質的特徴をすべて備えています。ライダーマンのキャラクターを製品化する権利は、著作権者である我々にあるはずです。このように我々の許諾なくライダーマンのキャラクターを利用する行為は著作権侵害にあたるので、お面の製造販売行為を差止める権利が当然にあるはずです。
4 東京地方裁判所の判決
「両者は、口及びその周辺部を残すのみで、頭部及び顔面のその余の部分を全体的に覆う特異な構成のヘルメツトを被つていること、そのヘルメツトは、大きく前面に膨出した楕円半球状の赤い眼をもち、その中央部に大、中、小の三つのV字状輪郭を描き出していること等、部分的に些細な相違は見られるが、全体的観察においては、ともに昆虫を連想させる一種独特の印象を与え、児童幼児に映画に登場する「ライダーマン」と認識させるに十分な容貌を有している」として、おもちゃ製造業者による著作権侵害を認めました。
5 コスプレと不正競争防止法
今回の事件では、顔の酷似によって著作権侵害が認められました。衣装のみで著作権侵害が成立するかどうかは不明な点が残っています。
またコスプレイベント等では、主催者側が不正競争防止法違反に問われる可能性もあります。
いずれにせよ、権利者に問い合わせておくことが必要でしょうね。
では、今日はこの辺で、また。