「鶏鳴狗盗」からはじまるエトセトラ

今年に入ってちまちまと、故事成語の本を読んでいる。

2冊借りてみたうち、簡単そうな、日常で割とよく使われる言葉をそれなりにわかりやすく解説してくれているのだろう本を先に読んでみているのだが、それでも聞いたことのない言葉は割とある。

中国の歴代国名や歴史は、学校で習った「ぼんやりなんとなく」の知識しか無い。言葉の元になっている出来事あれこれに関しては、読んで「へー」と思うしエピソードの大筋は覚えられるかもしれないが、国名とか人名は全く覚えられそうにないなぁと思う。

それでも読んでいて面白いから、まぁ良いのだけれど。私が今、故事成語の本を読んでいると知った夫が、たまに目に入った人名や国名について解説してくれるようになった。

夫は学生時代、世界史が得意だったらしい。世界史全般によく知っているので、中国に関しても知っている。人名も国名も、何でそんなに覚えているのか不思議なくらいスルッと出てくるしわかりやすく解説してくれる。感心するばかりである。

世界史だけでなく、野球やサッカーの歴代記録等々も覚えていたりして、この人の記憶力はどうなっているんだろう?と思う。本人は「こんなの覚えてたって使い道ないけどね」と言うけれど、私にはできないし、十分、すごいことだと思う。

そんなこんなでその日も故事成語の本を読んでいたのだが、「鶏鳴狗盗(けいめいくとう)」という言葉が出てきた。この言葉自体は知っていたから本の内容は特にどうということも無かったのだけれど、ふと思う。

鶏の鳴き真似、犬のような盗み技術。そんなくだらないとされる特技。私は何か持っているだろうか?

夫の世界史や野球やサッカーの知識は、「鶏鳴狗盗」というほどくだらなくはなく、すごいことだと思う。よしんば他人がくだらないと思うことだったとしても、特技があるってすごいことだし、大事にしたらいいと個人的には思う。思うのだが。

自分の特技、くだらないことでも全く思い浮かばない問題。

そりゃあもちろん、今まで生きてきた中で、できるようになったことはそれなりにあるけれど。特技というと何か違う気がする。尖った部分を思いつかない。

というわけで、参考までに。職場の何人かに聞いてみた。

「くだらない特技、何かありますか?」

Aさん「これかなー(手のひらを合わせてうにょうにょと動かした)」
私「え、すごい!でも確かにあんまり使い道がない!」

Bさん「…。火起こしですかね?」
私「それは普通にすごい特技ですね?というかそんなことできるんですね!?」

Cさん「んー。サザエさんのご先祖様の名前なら言えますよ」
私「おぉ、さすが!いい感じのところを攻めてきましたね!」

みんな何がすごいって、すぐに答えられる所がすごい。世の人々は皆尖って生きているのか。自分の特技を認識しているのか。

その後も考えてみるものの、相変わらず自分の特技が思い浮かばず。そんな中、手がうにょうにょのAさんが助け舟を出してくれた。

「『利き酒』ってあるじゃないですか。好きな食べ物の違いがわかるとか、そういうのでもいいのでは?」

「好きな食べ物…」

私はお酒は飲まないので利き酒は無理だ。好きな食べ物。お刺身?そこで閃いた。

「あ!オリーブハマチとひけた鰤は、お刺身なら違いがわかると思います!」

オリーブハマチとひけた鰤、どちらか当てろと言われたら、お刺身ならたぶん当てられると思う。どちらも美味しいがそれぞれ特徴のある味なのである。しかしそこを意識している人は関係者でないとそこまでいないと思うので、一般人ならそれなりに希少性があるのではないだろうか。

なかなかに使い所のない良い塩梅の特技だと思う。私にも特技があった。大変喜ばしいことである。

あなたがどこかから逃げる際、「利きオリーブハマチ」な特技が必要になったら、ぜひ私を呼んでください。お刺身専門です。きっとお役にたてると思います!

…と、今日の記事は、我ながらくだらないことを書いているなぁと思うものの。身近な人に「くだらない特技」を聞くのはとても面白かった。聞かないとわからないその人の一面を知れるというか何というか。これからもいろんな人に聞いてみよう。


ではまた明日。