映画『海の沈黙』の感想
『パーフェクトデイズ』ぶりに映画を観てきました。
モッくんこと本木雅弘さん主演の『海の沈黙』。
一言で言うと、終始、重いトーンの映画でした。
本木さんがインタビューで話していた通り、スッキリする瞬間は最後までなかったです。
加齢のせいか、涙腺崩壊気味でしたが。。
また、壮大なストーリーが、2時間弱にギュッと詰め込まれているので、あと30分でも伸ばして、大切な場面や回想のシーンを丁寧に入れ込んで欲しかったなぁと言う思いも。
でも、2時間はあっという間でした。
さて、主人公は、謎を秘めた天才画家であり、刺青士でもある1人の男性。それを本木さんが、昔の恋人をキョンキョンこと小泉今日子さんが演じています。
細かいストーリーは書きませんが、この映画に出てくる世界は、自分が生きてきた世界とは、あまりにもかけ離れていたため、完全なるフィクションとして楽しみました。感情移入してしまうような登場人物も、なぜか1人も出てこず、ある意味、わたしにとっては、なかなか出会えない映画だったかもしれません。
ですが、そんな私でも、この映画のテーマをこんな風に受け取りました。
それは、『美とは何か』です。
美とは、有名な人が作者だから、高額だから、著名な芸術家やら権力者が高く評価したから、みんなが美しいと言うから、などで測れるものではないということ。
自分が、何か(または誰か)に対して感じた『美』を、他の人に証明する必要はない。ただ己が感じた『美』を心に留め、慈しむことで、心が満たされたり、自分の一部になるのではないか。
『美』とは、有名でも、無名でも、富があっても、貧しくても、それに全く関係することなく、どこにでも存在するのだと。
また、絵画でも絵画でなくても、人が作った作品には、表面的に見える美しさだけでなく、そのモノの隠された美しさや、作者の想い、生き様さえも顕になってしまう。
そして、観る人によっては、その内包された美しさを、否応なしに本能で感じとってしまうのではないかと。それって、当たり前のことかもしれないし、でも恐ろしくも感じました。
この二つが、この映画から私が印象を受けたテーマでした。
確かに、わたしも、自分の好きな人や著名な人が評価した作品を疑うことなく、素晴らしい、と思ってしまうことはあります。でも、本当は、何か(または誰か)に対して美しい、素晴らしいと思うモノサシは、一人一人違うのだから、先入観を捨てて、なにが自分の心の琴線に触れたのか、己の体の感覚に耳を澄まして対峙した方が、自分にとってのホンモノの美と出会えるかもしれません。
また、もう一つの別テーマとして、純粋な美を追求する実力のある表現者が、社会的通念であったり、誰かの利権や忖度などつまらない理由によって、世に出てれこれない、または、平等に評価してもらえない現状も多々ある、と言う事も伝えたかったのかなと。
いずれにしても大人なテーマですね。
生きていると理不尽だと思う経験はいやでもするので、そのあたりの痛みは、ある程度の年齢の方であれば、感じ取れるかもしれません。
まとまりのない感想ですが、映画には美しい自然の風景や甘美なシーンもあり、視覚的にも楽しめます。
個人的には、清水美沙さんの色気溢れんばかりの妖艶さにゾッとするくらい惹かれました。
歳を重ねても色気のある人とは、ああいう方なのかと。私には一つもない要素なので、清水さんの爪の垢でも煎じて飲みたいとまで思ってしまいました。くぅ、憧れる。
中井貴一さんの忠誠心の強さがゆえに、醸し出す不気味さも怖かった。。
あざみ役の菅野恵さんもえげつなく美しかったです。若さならではの美しさとエネルギーが眩しかったな。
まとめ
暗めなトーンの映画です。
『美』とは何かを問いたい方ににオススメです。 また、本木さんと小泉さんファンの方も、お二人の外見だけでなく内面の美しさや、美しい年の重ね方をじっくり鑑賞することができ、それを観るだけでも価値のある映画かもしれません。