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英語の時制(tense)に関する説明

時制(tense)は中学英語から習う用語です。そして、学校英語に触れたことのある人であれば、誰もが一度はきいたことのある用語であるといえるでしょう。

時制の説明では、時間軸を示す数直線を横方向に引き、「現在」と「過去」という目盛りをつけた、次のような図をよく使います:

図 1

図 1 はもちろんあっていて、時制とは何かを明確に表しています。ですが、以下のような疑問に対して、図 1 ではクリアに回答することはできません。

疑問 1:
現在から1秒前は現在と過去のいずれか?10秒前、1分前、1時間前、1日前は現在と過去のいずれか?現在と過去をわける閾値はいったいどこにあるのか?

疑問 2:
I am Japanese. という文は現在形だが、これには、1 秒前には日本人ではない可能性がある、というニュアンスがあるのか?

疑問 3:
I went to the the park in the morning, ran a bit, had some coffee at a nearby cafe with chilling for an hour, and wen back to my place.
という文がある。ところで、カフェで 1 時間コーヒーをしたなら、ランニングと帰宅には互いに(少なくとも)1 時間のひらきがあるはずである。動作が発生した時刻があきらかに異なる 2 つの動作を、おなじ「過去形」であるとして、図 1 にある「過去形」の目盛りの一点に配置するのはおかしいのではないか?

ここで重要になるのは、図 1 の「時間軸」は、厳密には時計の針で示されるような時間(time)とは異なるということです。以降でこの点について説明します。

時制(tense)は時間(time)ではない

時制(tense)は動詞の形で表現されます。そして、時制は相(phase)や法(mood)と並ぶものであり、これらはまとめて TAM (tense-aspect-mood)と呼ばれます。

ポイントは、「時間が過去だから動詞を過去時制にする」ではなく「過去時制にして動作が過去に発生したことを表現する」ということ、そして、時制を表現するのは話し手であり、どの形で表現するかは話し手の心理に 100% 依存する、ということです。後者は、現在時刻から何分前だから過去時制です、のように、時間差が時制を定めるわけではない、と言い換えることもできます。

たとえば、過去時制で表現された動作と現在時制で表現された動作が同じ文にある場合に、現在時制で表された動作が過去時制で表された動作よりも実際は先行していることがあります。たとえば:

Tom, who is an undergrad, went to a coffee shop yesterday.
学部生のトムは昨日コーヒー屋に行った。

という文は:現在時制の形をとる is と、過去時制の形をとる went がひとつの文に共存しています。この文をみて、コーヒー屋に行ってから(過去)、その後にトムが学部生になった(現在)と解釈する人はいないでしょう。そうではなく、以下の図:

図 2

のように、現在形がカバーする範囲(赤色)が結果的に過去形で表現される動作が起きたタイミング(青色)を内包している、と解釈するのがふつうです。現在形で表させる学部生としてのトムの存在が、過去形で表されるコーヒー屋にいったという過去の事実よりも、部分的に先行していることになります。

まとめ

時制は基準(現在)から見た場合の心理的な距離感を表します。そして、話者が感じる距離感と実際の距離(時間差)の定量的尺度は関係ありません。

疑問 1 と 2 に対しては、「話者が 1 秒前に対してどう感じているかによる」と回答できます。疑問 3 に対しては、「すべての動作に対して等しく距離感を感じているから過去時制になっている(時刻は関係ない)」と回答できます。

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