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ひとつのナゲットから考える - おいしいだけじゃない、カラダにやさしいだけじゃない、今の私にやさしいだけじゃない、これから生まれる君たちにやさしいだけじゃない…だけじゃない秋川牧園
息子が認めた!
「…うん、これおいしいね。また買って」
おお!気に入ったか。
ハンバーガーやナゲットが大好きで、中にどんな化学物質が入っているかなど、てんでかまわない我が子。
その子がこの味を認めるとは!
当時私はまだ秋川牧園の名を知らず、購入したのは単なる勘。きっかけは東都生協の申し込み用紙に載っていたからか、それともスピード宅配のONIGOを利用したときだったか。
そう、東都生協に加入していることから想像がつくかと思いますが、私は食の安全には関心がある方で、オーガニックとか無農薬とか無添加とか平飼いとか幸せな牛というワードに弱い。
味が多少落ちたとしても、そちらに軍配を上げる方。
その傾向は母から受け継いだものかもしれませんが、我が息子の方は安全にはまるで無頓着。自分がおいしいと思えばいい派なのです。
結果、わたしはなるべく安心安全で、しかも家族の口に合うものを見つけるために勘を磨くことに。
素材そのままで購入し、安心できる調味料を使い、自分で一から作れば安心は安心ですが…いつもそんなことやってられないのが正直なところ。
そんな私にとって、秋川牧園と出会ったおかげで心強い味方ができました。安全に気を配るだけではなく、味にも妥協していないんですものね。
それ以来ナゲットに限らず、秋川牧園さんの商品を愛用するようになりました。ニワトリだけではなく、季節の野菜、ブタ、ウシも育てているのですね。
秋川牧園のあらまし
改めて株式会社秋川牧園さんのホームページを訪ねてみると、本社は山口県。関連農場や加工工場も多くは近隣の県にあります。事業所は大阪にも。さらに中国でも生産や販売を行っているようです。
現在の場所で健康な食べ物作りを始めたのは1972年ですから、「オーガニック」という言葉が日本で使われ始める前ですね。
そして、それをさらに遡ること40年、1930年代から中国の大連でも有機農園を営んでいたというから、草分け中の草分けです。
最初の農園は、リンゴや野菜のほか、ニワトリ、ブタ、ウシを飼い、ワインやチーズも作る人気のスポットだったそう。
当時の農園主、秋川房太郎さんは、
「口に入るものは間違ってはいけない」
というのが口癖だったようです。
その精神は今も脈々と受け継がれているらしく、パッケージにもちゃんとプリントされています。
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中国での秋川農園は今で言えばベンチャーで、軌道に乗るまでは相当なご苦労があったようです。水の確保からして簡単ではなかったそう。掘っても掘っても水が出ず、資金が尽きるギリギリになってようやく出てきたのだとか。
戦後、房太郎さんはすぐには帰国がかなわず、日本に引き揚げてからの生活も楽ではなかったようです。波乱万丈の人生は、まるで大河ドラマ並みです。
それでも房太郎さんの息子さんである実さんは、正直な食べ物作りを続けていました。
実さんが現在の秋川牧園を立ち上げた1970年代には、公害が社会問題となっていました。農業や畜産でも多くの化学物質が使われていました。コストを削減するために短期間で成長させた「ブロイラー」方式の鶏肉がスーパーに並んでいました。
私もこの時のことはよく覚えています。ブロイラーの鶏肉にはまるで味がなく、恐ろしいことだと感じました。
その頃
「一羽の鶏、一個の卵から健康で安全なものにしたい」
という思いから、秋川牧園が誕生していたのですね。
秋川牧園の取り組み
ホームページには、これまでの成果と残る課題に関して明確に記載されています。どこまで実現できているか、何が途上かを明らかにするのも信頼を生むものですね。
数ある成果のひとつとして、私が特に感銘を受けたのは「飼育用米プロジェクト」。
日本の食料自給率、ちょっと心配じゃないですか?2024年はカロリーベースでわずか38%。ニワトリやウシに与える飼料の自給率は、それをさらに下回ります。生産国で紛争とか起こったらどうするの?という私のかねてからの懸念は、ロシアがウクライナに侵攻したことで現実のものとなってしまいました。
そういえば、ドイツのメルケル氏が脱原発のために、ロシアからのガス輸入に舵を切った時にも「はて」と思いました。元はといえば、日本の原発事故がきっかけでしたが。原発はリスクが大きいからといって、プーチン氏のロシアに依存するとは…相互依存によってプーチンの暴走を予防するという目的があったかもしれませんが、理屈が通じる相手ならともかく…はて
さて話を戻すと、
秋川牧園さんは、飼料用米を地域の田んぼで生産し、それを食べて育ったニワトリの糞から堆肥を作り、飼料用米の栽培に役立てています。
その中には耕作放棄地だった田んぼも含まれているとか。
放ったらかしだった田んぼに水が引かれ、稲穂が風にそよぐ風景が蘇りました。
それによって、輸入への依存を減らしているというわけです。
賢い!
無駄がない!
循環してる!
こんな取り組みが増えていくといいですね。
まだすべての飼料が国産になっているわけではありませんが、今の段階で100%国産・無農薬にしたら、経費が跳ねあがり、手の届かない価格になってしまうのではないかと想像します。
秋川牧園では飼料を輸入する際にも、収穫後に農薬が添加されないトウモロコシを確保しているそうです。
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伯父が飼っていたヤギ
私の伯父は、生前長野県で兼業農業を営んでいました。
売っていたのは米と野菜でしたが、ヤギも飼っていました。
東京に住んでいた私にとって、見るもの聞くもの新鮮で、伯父の家に泊まりに行くのが楽しみでした。ヤギさんにも会える!
ヤギは草食動物ですから、畑で取れた新鮮な野菜のほか、東京では捨ててしまう野菜くずやお茶ガラなども食べていました。
私はバケツで餌を運んでいき、丈夫な歯でトウモロコシの芯もバクバク食べてしまうのを、感心して眺めていました。
すごいなあ!
伯父の家では、東京の家で毎週山のように出る生ごみが、ほんの少し。
そして、毎朝搾りたてのヤギの乳が飲める。
ムダがない!
回ってる!
当時東京ではすでにゴミ問題が深刻でした。
私はさっそく両親にヤギを飼うことを提案!
しましたが、却下されました。
小学生の時だったので、おそらく1970年代の初めです。
ちょうど山口で秋川牧園さんがスタートした頃と重なります。
ヤギの乳の味は、実はほかの子どもたちには不評でした。しかし、私はその独特な味が大好きでした。
後にフランスに住むようになってからは、パリでもヤギのミルクが買えました。
因みに、フランスの食料自給率はカロリーベースで約125%だそうです。だからといって、輸入食品が無いわけではありません。
ヤギのミルクは、どこのスーパーにもあるというほどではありませんでしたが、ヤギのチーズならたいていどこのスーパーにもありました。今は、日本のスーパーでもヤギのチーズを見かけますよね…
…秋川牧園さん、ヤギ飼いませんか?
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啓蒙活動
啓蒙っていう言葉には、どこか偉そうな響きがありますが、そうでなければどう言ったらいいんでしょうか。
とにかく、秋川牧園さんの絵本には、エラそうな臭いはしません。
そして、何も購入しないでもサイトから無料でダウンロードできます。
現在のところ4冊あり、食の安全や食育、秋川牧園のルーツや考え方について、やさしくまとめられています。
わかりやすいから易しいし、イラストも語り口も優しい。
SNSやホームページでは、旬の食べ物を存分に楽しむためのレシピも発信しています。
それは啓蒙活動であると同時に、安全な食べ物全体のプロモーションであり、秋川牧園とそこで働く人々の紹介・宣伝ともなっています。
ホームページのデザインや食品パッケージのデザインもいいですね。主張しすぎず、オシャレ過ぎず、本物感があります。
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食の安全と価格の関係
安全な食べ物というと「高価」という印象があるかもしれません。
そもそも、化学肥料や農薬は、安く大量生産するために作られたものです。
無農薬野菜、無投薬の畜産と言っただけで、「うちにはそんな余裕ない」とか「お金がある意識高い系の人たち専用」という反応をする人もいるようです。
でも、スナック菓子なども、必須ではないのにチリツモでけっこうお金がかかるのでは。
ONIGOで販売している秋川牧園のナゲットは、200gで500円くらい。味と安全性からして、適正価格ではないでしょうか?
ちなみに、私が動物性たんぱく質の支出を調整するためにやっている工夫のひとつは、植物性たんぱく質を一緒に使うこと。例えば、肉料理に厚揚げを加え、一緒に調理します。そうすると栄養のバランスもとれるし、肉の味がしみ込んでおいしく満足でき、肉の量も抑えられます。
もちろん豆腐や豆もいいですね。タンパク質の量を抑えたければ、こんにゃくもお勧めです。
安心安全な食をCO2出しながら運んでもらうってどうなの?
秋川牧園さんは取り組みが完全ではないことを認め、さらに前進し続けていますが、買う私たちの方はどうなのか。
幸せなニワトリの卵をCO2を排出しながら運んでもらい、おいしい料理を作るのって幸せなことなんでしょうか?
安全な食品は体にいいだけではなく、生産時の環境への負荷も少ない。それは事実としても、都市生活者がすばらしい食品を求めて遠くから取り寄せるのって、それこそ、意識高い系の自己満足になるリスクをはらんでいるのでは。
遠い無農薬野菜か近くの農薬野菜か?
私もいつも無農薬の野菜を買うわけではなく、近所のスーパーで地元野菜コーナーを漁ったり、畑の無人販売を利用することもあります。
実は、正直な取り組みをしている生産者は、各地にいるのではないでしょうか。ただやはり、ネットワークづくりとか、組織化とか、発信力って大切なのですね。そこにこそ、秋川牧園が企業である意味も、あるのではなかろうか?
ナゲットを食べながら、そう考えました。
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参考文献:秋川牧園ホームページ
https://www.akikawabokuen.com/