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口先だけの優しさをつむぐ -ボウキョウによせて- 第三話
3.9
「俺ぁもう長ぐねぇがらよ……たまにぁ遊びに来てけろなぁ」
ぽつりとそう呟くど、ミッちゃんは眉毛八の字にしながら「これからは私も仕事休んで来れるように頑張るからさ。元気出してよね」と言ったんだ。
ミッちゃんは優しいげんとも、きっと会いに来ではぐれねぇ。春香と雪菜だって嫁さんの実家さ行ったままで去年の盆がらずっと会ってねんだ。あん時から何もかもが変わっちまったんだ。丈(タケシ)のごどだって不憫でならねぇ。家族と故郷を二回も失ぐしたんだ。あの震災がながったらなあ。あの事故がながったらなあ。
神様は本当に酷なお方だ。何度も何度も俺だぢに試練与えるんだ。もう涙すら出ねぇよ。
こちらは南葦ミトさんが連載されている長編小説「ボウキョウ」第三話から発想を得て書いた二次創作物となります。
「ボウキョウ」第三話はこちらから
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今回は主人公である中村充希の祖母の視点でサイドストーリーを書かせていただきました。方言についてほぼ無知な私は、こちらのサイドストーリーを書くにあたって少しばかりではありますが福島弁について調べました。福島弁は音が濁ることが多く、福島県全域だけでなく、浜通りや会津など地域限定で使われる方言もあるようです。標準語しか使いこなせない私にとっては色々と奥が深い・・・。方言一覧と照らし合わせながらサイドストーリーを書かせていただきましたが、合っているかかなり不安です。福島弁をご存知の方で、もし上記のサイドストーリーに違和感のある箇所などを見つけられた場合は、遠慮なくご教示いただけますと幸いです。
*2020/8/18追記
ミトさんよりアドバイスをいただき、上記のサイドストーリーの一部を変更しました。ミトさんの地域では「さ」は方向を指す時だけ使っていらっしゃるとのこと。勉強になります。ご教示くださりありがとうございました!
変更前:神様は本当さ酷なお方だ。
変更後:神様は本当に酷なお方だ。
福島弁を調べているうちに、お気に入りの方言も見つけました。
したっけ→そしたら
んだ、ほだ → そうだ、そうですね ほでね(否定)そうではない
(引用:Wikipedia)
これらの方言は、東北地方全体で使われているようです。「したっけね」で「それではまたね」「バイバイ」という意味。ぜひ使ってみたいです。
ちなみに方言といえば、猫野サラさんの #方言note の企画が記憶に新しいです。私は参加された方のnoteをひたすら拝読するという読み専となっていたのですが、最終的に全都道府県をコンプリートされていらして、読み手側まで嬉しくなりました。
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ここからは前回の「ボウキョウによせて」のタイトルに添えた自由律俳句についてのお話を少し。
コーヒーと不安を一緒に飲み干す
この自由律俳句は、第二話での主人公の一動作を切り取っています。
救急搬送された父の元へ向かうべく、主人公がいわき行の特急列車に乗車している時の一場面。主人公の不安な気持ちがよく伝わる南葦ミトさんの心理描写がとても繊細で印象的でした。そんな印象的な一文章を、自由律俳句らしく切り貼りして作りました。
「コーヒーを飲んでいるシーンはどこだったっけ?」となった方は、是非もう一度読み返して探してみてくださいね。
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さて、今回は最後に「ボウキョウ」のおすすめの読み方についても触れたいと思います。そのおすすめの読み方というのは、南葦ミトさんの「ボウキョウ」と、元屋みやさんの「ボウキョウによせて」を同時に開いて読むという方法。
元屋みやさんの「ボウキョウによせて」には、ボウキョウの舞台について地図を用いながら解説されています。そのため「ボウキョウ」と合わせて読むことで、主人公達の軌跡が深く理解できます。物語の中に込められたメッセージを物語のままで終わらせない工夫の一つとして、ぜひお試しください。
それでは今回はここまで。第四回「ボウキョウによせて」でまたお会いしましょう。したっけね。
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