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組織で考える女性たちの健康課題|【2】ヘルスリテラシーの向上と組織改革

前回は、働く女性が抱える体の特性と悩みを紹介しました。

今回は、働く女性の健康問題に企業がどう取り組むべきか考えます。


ヘルスリテラシーの向上へ向けて

ダイエットと節約をしているので、あまり栄養の良いものは食べていない。

26歳 大手保険会社勤務 女性の声

家庭と仕事で忙しく、睡眠時間は、毎日5時間程度です。

38歳 大手メーカー勤務 女性の声

ヘルスリテラシーとは

ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する情報を収集・理解・意思決定できる力を指します。

単に健康や医療に関する情報にアクセスしたり、医療機関の予約を取ったりするだけではなく、得た情報を理解し、評価し、効率的に活用する能力です。

ヘルスリテラシーを高めることの重要性

①女性
パーソルキャリアの調査によれば、ヘルスリテラシーが高い女性は、低い女性に比べて「働く喜び・楽しみ」「目標達成度」「仕事の満足度」が高い傾向にあります。

自身の健康について正しい知識を持ち、自己管理ができる状態になることが、生活と仕事の質(QWL=Quality of Work Life)の向上に繋がります。

一方で、ヘルスリテラシーの低いと、長期的に健康と生活に悪影響を与えることがあります。特に、仕事と家庭を両立させる女性は、時間に追われがちで、十分な睡眠や運動、健康的な食事などの基本的なセルフケアを行う余裕がなく、健康に気を使えないことが現実です。

そのため、自身の不調や将来の健康リスクについて積極的に学び、知識を深めることが重要です。ヘルスリテラシーを高めることで、健康的な生活を送るための努力ができるようになります。

②組織
組織全体で女性特有の健康問題に対するヘルスリテラシーを高めることは、社員の健康管理や生産性の向上、さらにはダイバーシティ&インクルージョンの推進に繋がります。

とはいえ、この問題は職場では話しづらいトピックとなりがちです。男性社員や管理職が、女性が日常的に直面する健康問題が職場に与える影響を理解することで、女性社員はよりオープンに相談しやすくなります。

これにより、必要なサポートや柔軟な対応(例えば、フレックスタイム制度や休暇制度の活用)が受けやすくなり、女性社員の健康と仕事の両立がよりスムーズになります。

結果として、すべての社員がより快適に働ける環境が整い、企業の持続可能な成長にも寄与します。

次に、組織が具体的にどのように取り組むべきかを検討します。

個人の思いやりの先にある組織改革

会社の制度はあるけれど、上司に話しづらく、使っていません。

30歳 大手不動産会社勤務 女性の声

女性一人の部署なので、諦めています。

35歳 金融機関勤務勤務 女性の声

経営層・管理職を巻き込んだ意識変革

制度を整備している企業も増えていますが、実際には利用しづらさを感じている女性も少なくありません。制度を整えるだけではなく、運用面での工夫も求められています。

女性特有の健康問題に企業として取り組むには、経営層を巻き込んだ意識変革が欠かせません。経営層が積極的に参画し、指揮を取ることが、意欲ある女性人材の採用・リテンションにも繋がります。

女性が不調を伝えやすい職場は、目標達成率が高いという調査結果も存在します。

男性上司が知識を深め、話しやすい環境を作る努力が必要です。また、女性管理職も自分が経験した健康問題だけでなく、世代別や多様な健康問題の知識を身につけ、対応することが求められます。

経営層・管理職向けのトレーニングを実施し、女性特有の健康問題に関して話し合う方法やスキルを習得することは、健康問題を相談しやすい職場環境を作るために重要です。

さらに、女性が利用できる企業制度やサポートを管理職に周知させることで、サポートが必要な女性部下への対応がスムーズになります。健康問題による離職の防止に向けて、このような経営層や管理職の意識改革は欠かせません。

健康ケアのための担当部署の明確化

「YourConcierge」が、多くの企業と話をする中で見えてきたのは、女性の健康に関する施策において一貫した体制を築けていないという問題です。

判断を下す際に複数の部門や関係者が関わるため、最終的に誰も判断できずに進展がないという事態が発生しています。

これまで、健康に関する取り組みは主に健康保険組合が担当してきました。企業としては、人事部門が健康診断の受診率向上に取り組んだり、福利厚生の一環として女性特有の健康診断を企業補助で受けられる制度を整備してきました。また、労働組合や女性従業員有志が独自に、女性の健康に関する啓蒙活動に取り組んでいる事例もあります。

それにもかかわらず、企業内での健康課題に関しては、複数の関係者がそれぞれの活動を行っているものの、連携が取れず、企業全体での取り組みが盛り上がりに欠けているのが現実です。

また、経営層との意思疎通不足という課題も存在します。女性活躍推進への注目が高まる中で、女性の健康問題やエンゲージメント、生産性向上に取り組む関係者が共通の問題意識を持ち、女性の健康問題に取り組む担当部署を明確にし、ゴール設定と予算を確保することが求められています。

組織全体のヘルスリテラシーの向上

男性は「女性の健康に触れてはいけない・触れづらい」と感じているかもしれませんが、男性が女性特有の健康問題について知識や理解を深めることが、組織全体の意識変革に繋がります。

例えば、医療専門家を招き、女性特有の健康課題への知識・理解を深める健康管理の研修を実施することは、周囲の女性の健康を考慮・サポートするために非常に効果的です。男女共にヘルスリテラシーを向上させることは、健康についてオープンに話し合える組織文化を醸成するために重要です。

また、ヘルスリテラシーを向上させることは、従来のオフィス空間を再考するきっかけにもなります。例えば、男性の体格に合わせて設計されたお手洗いの個室は、妊娠中の女性には狭すぎる場合があります。

男性中心に設計された制度や環境を再構築するには、健康の知識や理解を深めた上で、女性を巻き込んだオープンな話し合いの場を設けることが必要です。

性別特有の健康問題はこれまで、「話しづらい」「自己責任だ」「我慢すれば良い」といった考えが根強く、組織内で公に語られることはほとんどありませんでした。しかし、女性たちが一生を通して経験するヘルスイベントは、個人のウェルビーイングにおいて非常に重要であり、キャリアの継続にも大きな影響を与える問題でもあります。

まとめ

女性の健康問題に関して、経営層や管理職の意識変革を進めることが重要です。また、女性の健康を担当する部署やチームを分散させるのではなく、プロジェクトとして明確にし、イニシアティブを取って進めなければ、状況は改善されません。

担当部署の明確化と共通目標の設定、そして女性・男性社員のヘルスリテラシーを高めることが、健康問題に対してオープンかつ支援的な組織へと変わるための鍵となります。組織全体で健康問題に取り組むことこそが、意欲ある女性たちが長期的にイキイキと働くことを後押しする要因になると考えます。

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