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『完全教祖マニュアル』楽しい組織文化づくり

『完全教祖マニュアル 』
架神恭介 著, 辰巳一世 著

タイトルの通り、本書は教祖になるための完全マニュアルでございます。

「多くの人をハッピーにしながら、大きな尊敬を受ける。教祖ほどステキなビジネスはほかにありません。これを読めば立派な教祖になれること間違いなし!」という謳い文句の一冊です。

怪しさと胡散臭さが満載ですね。

肝心の内容ですが、意外にも古今東西の宗教の成功理由がそれっぽく分析されています。読み物として素直に面白いです。

本書をnoteで取り上げてよいかどうか正直迷ったんですが、マネジメントのヒントになるものもあるかもしれないと思い記事にすることにしました。

若干のこじつけ感も否めませんが、そういうことにしておいてください。

よく言われることですが、宗教と会社って似ているところもあるんですよね。創業者や経営者も教祖みたいに扱われている方もいます。


『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者であり、僕の尊敬してやまないJim Collinsだって「カルトのような文化」が必要であると言っていますし。

というわけで今回は、本書の中から僕が組織づくりに使えそうだと思った部分をピックアップして報告します。

簡潔な教えを用意しよう

本書によると、宗教の教えは簡潔でなければならないとのことです。わかりやすい例として「南無阿弥陀仏と唱えれば極楽に行って成仏できる」という仏教の宗派が紹介されています。

どんなにありがたい教えであっても、難しすぎる内容であれば受け入れられない。組織内で最も理解力が乏しい人でも理解できる簡潔な教えでなければならない。確かにごもっともです。

企業も同じです。多くの企業には「これを目指せば幸せになれる」という「企業理念」「社是」があると思います。それらは簡潔な内容になっているでしょうか?

横文字がズラリとならんだスローガンは、あまりよろしくない事例かもしれませんね。

危機を煽る

宗教組織が団結するためには、危機感を持つことが重要だと言います。

「教えを守らないと地獄に落ちる」「そのまま生活していればやがて立ち行かなくなる」など。とにかく危機感を煽り共有する。

その後、不安に対しての解決方法を共有することで、組織内の価値観や行動をコントロールしていくことができます。その解決方法も「これさえやっておけば大丈夫!」というようなシンプルなものが望ましい。

日常生活でもよく見られる手法ですね。「今年お前は厄年だ」「でも、お祓いをすれば大丈夫」とか。

余談ですが、悪徳ビジネスにある「これさえ買っておけば大丈夫」なんかも似たような手法なので注意が必要です。

義務を与える

上述した「これさえやっておけばとりあえずオッケー」な行動を義務化します。その際に重要なことが、その行動を行うことによってどのようなメリットがあるかどうかを理由付けすることです。

ぶっちゃけ理由の内容が科学的に正しいかどうかは問題ではありません。組織メンバーが納得できる内容であればOK。

企業でも「これさえやれば生産性が上がる」という義務を作ってしまうことで、メンバーの行動を制限できるかもしれません。その義務によって実際に生産性が上がるかどうかはそこまで重要ではありません。それよりも、生産性が上がるんじゃないかと期待させることが大切です。

製造業の場合・・・

本書ではほかにもありがたい教祖論、もとい組織づくりのアイデアが展開されています。興味のある方はぜひ手にとって読んでみてください。

で、ここからが僕の考えです。本書の学びを実践してみようかと考えたとき、実は製造業界には既に宗教みたいな概念が浸透していることに気づきました。

そう。それこそ「5S」です。これこそまさしく本書の内容をカンペキに実践しきったお手本ではないでしょうか??

製造業関係者以外の方も読んでくださっているかもしれないので「5Sとは何かについて説明します。

5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字のSをとったものです。覚えやすくシンプルな教えですよね。

5Sを行うことは工場作業員の義務です。徹底して「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」を身に沁みつけさせられます。

5Sが不徹底なものならそれこそ大バッシングです(企業によって程度には差があるとは思いますが...)。「生産性が下がる」はもちろんのこと、「現場や服装の乱れは心の乱れ」「5Sを守れない人間はルールも守れない」なんて言われてしまう始末。

逆に5Sを徹底的に行っていれば、心の平穏を得ることができます。なんだか仕事もはかどりそうな気もしてきます。これは一種の信仰なのではないでしょうか?

5Sを行ったら生産性が上がるのかどうか、実際のところどうなのかはわかりません。乱れた服装で作業するほうが気分がノッて楽しく働けるかもしれません。清掃時間を作業時間にあてたほうがお金を稼げるかも?

重要なのは科学的根拠ではありません。「5Sは正義」「5Sをやれば救われる」。そう信じることで報われるのです。

まとめ

「5S」は宗教だった?

僕は好きですけどね。5S。これからも実践していこうと思います。信じる者は報われると信じて。

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