『管理しない会社がうまくいくワケ』①内向きマインドセットからイノベーションは生まれない
『管理しない会社がうまくいくワケ』
アービンジャー・インスティチュート 著
会社で働き始めてから理解したのは、自分一人だけでできる仕事はほとんどないということだった。上司がいて部下がいて同僚がいる。彼らと連携して行動しなければ、良い成果を残すことはできない。
他人は自分が思うように動かすことができない。そして、他人を無理やりコントロールすると失敗する。自分の利益だけを考えていては組織で成果を上げることは難しいだろう。
他人は変えられない、しかし、自分は変えられる。そして自分が変わると結果的に他人に救ってもらえることも多くなる。この本からはそのための考え方、外向きマインドセットを学ぶことができる。
外向きマインドセットとは
自分以外の人に関心を寄せること。そして彼・彼女らの課題解決を目指すことこそが外向きマインドセットである。
対外的には顧客、社内では上司や同僚。彼らが望んでいるものは何だろうか?それを理解することが真の課題解決に繋がるのだ。
それとは反対に、商品の押し売りや、相手の立場を無視した命令的な指示は内向きマインドセットの表れである。相手を人間ではなくモノとみなし、自分の利益のみで行動する。このような思考では短期的な成果を上げらえるかもしれないが、長期的な成功を収めることは難しいだろう。
ノルマの罠
本書には外向きマインドセットを作るためには、組織の評価制度設計も重要であると書かれている。
ノルマやインセンティブは内向きマインドセットのきっかけとなるのだ。個人の収入が顧客への売上と完全に連動していた場合、顧客事情を無視して高額な商品を買わせようと動く者がいるかもしれないからだ。
高額なA商品と安価なB商品があったとする。顧客の課題解決のためにはB商品が適切だったとしても、個人の利益を優先してA商品を売りつける。これは完全に内向きのマインドセットだ。
損得勘定が強く殺伐とした環境では、課題解決から遠のいていく仕組みが出来上がってしまっている可能性がある。視野が狭くなり、改善やイノベーションを妨げることにもなる。
以前見たTEDでも同様のことが説明されていた。ここではインセンティブの効果が説明されている。ノルマを達成すれば報酬を与える。このような考えは逆に内向きマインドセットが形成されるきっかけになるのだ。
真の課題解決よりも売上高やスピードを優先すれば、内向きマインドセットが組織に広がるようになる。そうすれば、業績が下がってしまうリスクもある。
ダニエル・ピンク 「やる気に関する驚きの科学」
https://www.youtube.com/watch?v=rrkrvAUbU9Y&t=187s
感想
僕自身はノルマに追われるという経験はないが、時間に追われるという経験はしばしばあった。その当時は僕自身内向き志向に陥っていた。
皆が業務に忙殺され、できるだけ早く仕事を終わらせて帰りたいと思っていた。殺伐とした空気が流れ、他人を助けることよりも自分のタスクを完遂させることを優先するようになった。このような状況では顧客のことなんて微塵も考えられないし、役立つサービス提供について考えることも難しかった。
厳しいノルマを課す会社や残業が多い企業は、ひょっとしたら自らイノベーションの可能性を遠ざけているかもしれない。心身の「ゆとり」があってはじめて、外向きマインドセットは身に着けられるものだと思う。