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原価率3割の呪いをブッ飛ばせ!【ラジオ書き起こし】

▼ このnoteは、5/23にお話ししたこちらのラジオの書き起こしです。

今日は、『原価率3割の呪いをぶっ飛ばす』というテーマでお話しようと思います。飲食店って、メニューの原価率を3割に抑えなきゃならないっていうような話が昔から半ば神話みたいにあります。僕が飲食業界に入った30年前から言われてる定説みたいなもんですね。 原価率は3割で、人件費も3割、合わせて60%ぐらいに抑えるべきだって話で、FL比率なんていう言い方をしたりもしますけども。

これ、果たして今の時代にマッチしているんでしょうか?この30年、社会全体の給料はほとんど上がってないのに、食材費とかは年々値上がりしていて、そもそも原価率30%をどれだけのお店が達成できてるのかというと、 かなり少ないんじゃないかと思います。

原価率を30%に抑えるっていう話は、飲食店の利益率を10%残すためにはどうしたらいいか、どういう構成だったらいいのか、という話からスタートしています。

まず最初に考えてもらいたいのは、全ての料理・飲み物を原価率30%に近づけようとする間違いを起こしてしまう人が結構いるんですが、これは、原価率50%のものがあってもいいし、10%のものがあってもいいっていう、バランスを取るって話ですね。

よく例えられるのが、イタリアンのランチでパスタが3種類あって、値段の安い順に、ペペロンチーノが900円、ボロネーゼが1100円、ペスカトーレが1400円となっていて。一番人気は大体、真ん中の価格帯のボロネーゼっていう理論もこれは別の話としてあるんですけど、その一番出やすい料理の原価率を30%より低い27%とか25%に抑えて利益をなんとか出そう、あとの2つは35%とか40%になっちゃってもいいや!みたいな定番の方法がありますよね。この方法自体もどうなのかなと思うんですけど、こんな感じでバランスを取って、全体で原価をある程度抑えるっていうことです。

未だに全てのメニューを原価率30%に近づけようって、常に躍起になっちゃうお店が結構あるので、考え直した方がいいと思います。特に、新たにお店をオープンする人がそこにこだわりすぎちゃう人が割と多いです。もはや原価率と人件費率を合わせて60%に抑えるってこと自体が根本的に難しいので、 65%になってその分利益率が10%から5%に減ってしまったとしても、持続的にお店を経営できるようにするのか、人件費率を下げても何とかやっていけるシステムを作るか、もしくは売上を根本的に上げて分母を大きくして、利益を取るように考えていくのか。 自分の店はどの方向に進むのかを、もう一度考えなきゃいけないなと思います。

あと、お酒の値段の付け方についても割と間違いが横行してるなと思っていて。 例えば、グラスのワインで600円のワインと1200円の場合があったとして、どっちも原価率30%に移行しているようなパターンです。これ、どちらの場合もグラスに注いで持っていくまでの労力は変わらないんですよ。 仮にグラス1杯1500円とか2000円のワインだったらいろいろ問題出てきますよ。2000円のワインだったら、600円のワインと同じこんなちっちゃいグラスでいいのかとか、そんなサーバー方法でいいのかとか。そもそもそんないいワイン飲むなら、もっとちゃんとしたお店で飲んだ方がいいんじゃないかとか。まあそれは例外としても、 600円と1200円の場合、どっちも原価率30%っていうのは本当に呪われてるというか、呪縛になっちゃってる気がします。

なんでそんな設定なのって聞くと、「お金を使いたい人がたまに頼んでくれるとラッキーだから、ワインは高めに設定してあります。」っていう風に答えが返ってくるんですけど、結構考え方おかしいと思うんですよね。高いワインを頼まれても人の手が余計にかかるわけじゃないんで、その高いワインを飲んでくれる人に割安感を感じてもらって、 また来やすくするっていう方が絶対いいと思うんですよ。ある意味、ちょっといいワインを頼んでくれる人を少し馬鹿にしてるというか。それで、お金を持っているから高いワインをただ頼む人は本当に少数で、その人たちってそういう価格帯のものを注文し慣れている人も多いので、銘柄見て「これは良心的だな」とか「高すぎるだろう」とかって結構真剣に見られてるんですよ。それを絶対に忘れないでほしいです。

ついでに言うと、600円のグラスワイン1杯しか飲まない人に比べたら、1200円のワインを頼む人は倍の金額を使っていて、1200円のワイン、1杯一度の作業で600円の2杯分の利益をもたらしてるんで、やっぱりディスカウントするぐらいの気持ちでいないといけないんじゃないでしょうか。その辺をちょっと考え直してメニュー構成を見てみましょう。

海外の輸入ビール、もしくは、クラフトビールとか結構高級なものがありますが、仕入れが300円のビールだったとして、900円で販売すると原価率3割ですよね。粗利だと600円ぐらい残るわけです。 でも、これを750円で販売する。 てなると、これ原価率40%で、粗利も450になっちゃいますよね。かなり厳しいんですけど、でも900円のビールと750円のビールで、同じビールだったら、2杯頼む確率は絶対に750の方が高いんですよね。 もし750円で設定されていたら、バーに入るのが1500円、粗利は450円×2なんで、900円上がってくるわけですよ。つまり、原価率に囚われすぎて、お酒をちょっと飲みたいお客さんに対して親切な設定ができていないことによって、もったいないことをしていることがかなり多いんじゃないかと思います。損して得を取れって言葉がありますけど、まさにこれをちょっと考え直してみてほしいですね。

原価率30%って理論は、お店の側の都合であって、お客さんの立場としては何ら関係ないんですよね。 僕が相談を受けるクライアントさんでも、やはりお店の都合だけで理論武装しちゃってる店が結構たくさんあって、そういう店はほとんどが満足度の低い店で、美味しいものを出してるのに経営が難しいというような状態です。 お店としてを経営し続けられて、さらにお客さんも店に通い続けられるような価格設定を探っていかないといけないなと思います。

今日は『原価率3割の呪いをぶっ飛ばす』というテーマでお話しましたが、原価率3割って何時代の話をしてるの、そこに縛られていたら店は潰れちゃうよっていう話でした。

それではそろそろ開店の時間になります。
太田とよしきでした。ありがとうございました。

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太田とよしき🎈飲食店経営コンサルタント
飲食業は最高に幸せなしごと。