2022年の飲食業界を総括!
今年の終盤からは外国人観光客も通常通りに受け入れることができ、政府も外出や飲食を楽しむことを抑制するようは発言を控えるようになりました。これまでの緊張感から解き放たれた感覚を持っている人も多くいると思います。この12月は、街中も活気を取り戻してきたようです。飲食店が立ち並ぶエリアでは、この2、3年の間はほとんどなかった大人数での飲み歩きを見かけるようになりました。この様子をみるとコロナショックからの復活へのきっかけとなるような1年だったと思います。
しかし、この3年間の飲食業界がほとんど営業をできなかったことと人々の生活が変わってしまったことは大きい変化で、その影響はじわじわと飲食業界に顕れてきています。
今日は、この2022年が飲食業界にとってどんな年だったのかを振り返ってみます。
1. 値上げの嵐
ロシアのウクライナ侵攻や多くの国のインフレ、急速な円安など、さまざまな原因がありますが、これほど短期間の間に色々な経費が値上がりすることは過去に例を見ません。水道光熱費、人件費、食材費、値上がりしていないものはない状況だと思います。そして、その値上げ幅はとても大きく、このレベルになってくると経営努力によって吸収するのは到底不可能だったことでしょう。
日本には古くから値上げをする際にお客様に対してお詫びをするのが通例となっています。
「これまでなんとか吸収して参りましたが、度重なる原料の値上げでどうしても価格を維持できなくなりました。大変申し訳ありませんんが、来月1日から一部商品を値上げいたします。」
これが定番の告知方法です。
しかし、ここまでくるとお詫びする必要があるのかという議論にもなってきており、そもそも飲食店の収益モデルを考え直さなければ、存続できない状況になっていると考えるべきです。
今後、円安が落ち着こうがコロナウィルスが消滅しようが、このコスト高が収まることは非常に考えにくく、世界的な人口増による燃料と原材料の価格上昇は免れないでしょう。
また、人件費は労働人口の減少に伴って、さらに高騰し下がることは考えられません。
以前から話しているように、東京飲食店のスタッフの時給は最低でも1500円になり、座ってちゃんとしたランチを食べるのなら最低2000円は必要になるのもほんの少し未来だと考えられます。
今年起こった全ての経費の急激な値上がりは、偶発的に起こったわけではなく、これから5年10年かけてじわじわとくるはずだった値上がりが一気にまとまって来たと考えていいと思います。遅かれ早かれ起こってしまう現象が早まったと言っていいはずです。
時給1500円の人を雇い、ランチを2000円で売るビジネスの形作ることが必要になってきます。そして、安さが売りのお店は、巨大なチェーン店だけのものになり、一部の超優良店が高単価でも繁盛していく傾向に拍車がかかることは間違えないでしょう。
そして、中途半端な価格帯のお店は、テイクアウトや惣菜店に取って代わられ、ポジションを失うことになります。
2. 行政からの支援が完全に終了
コロナショックから約3年間続いた行政からの支援が終わり、飲食業界のコロナショックは今まさに始まったと言っていいでしょう。
いよいよコロナとの本当の戦いが始まったと言っていいでしょう。
感染防止協力金や雇用調整助成金、融資に対する利子補給など多くの金銭的な援助があった飲食業界は、これまで非常に特殊な環境下に置かれていました。
店舗の規模によっては、普段より多くの利益を残しているお店もあり、周りの関連企業や他業種が倒産寸前に追い込まれる中、飲食業界はなんとかなってしまう状況が続いていました。(一部の店舗を除きます。)
しかし、この状況も今年で完全に終わりです。
すっかり変わった世の中に相対して営業を本格的に再開することになったのです。
このコロナ禍で、協力金をもらいながら休業したり、営業時間を短縮した間に取り組んできたことがこれからさらに試されることになります。
協力金などの支給対象にならずに苦しみながらも、新業態や新商品の開発に多くのリソースをかけてきた大企業は、続々と新業態をはじめたり業態転換を図ったり、一部では成果を挙げています。
個人店や小規模の店舗でも、コロナ禍で色々な取り組みをし、新メニューの開発や多店舗展開を仕掛けていることろもあります。
その一方で、休業補償をもらいながら生活することに慣れきった経営者の中には支援が打ち切りになったと同時に廃業を選ぶ者もいました。
コロナショックが終わりを迎えつつある中、本格的にコロナショックと戦うことになる不思議な年でもありました。
3. デジタル化の急加速
機械じゃ味気ないとか、やっぱり人の手で作らないとなど、そういった温かみを大切にすることは飲食業にとってとても大事なメンタルだと思います。
しかし、これもそうも言ってられないような状況の変化が起きていいます。
かねてからの重労働イメージはやはり払拭されず、飲食店での勤務希望をする若い世代はどんどん減っています。また、外国人労働者の円安の影響で、コロナ前と比べると絶対数が減り、日本の飲食店は例年以上の人手不足となっています。
この状況を打破するために、特に大手企業を中心として急加速しているのが飲食店業務のデジタル化です。
こういったシステムの導入などにあまり前向きではない中高年の経営者もPCやiPadを利用するようになってきています。また、小規模な店舗の経営者もデジタル化を進めるようになり、この傾向はかなりの変化だと考えていいでしょう。
クラウドタイプのPOSレジやタイムカードの導入だけでなく、セルフオーダーシステムやテイクアウトや来店の予約受付などを導入する店舗は増え続けています。
これからは、これらのデジタルツールを当然のように利用する設定でビジネスを組み立てる飲食店が急増するでしょう。もっと言えば配膳ロボを利用する前提で店舗のレイアウトや設計をすることが当たり前になるのも3年はかからないと思います。
今年一年のこのようなデジタル化のペースをみてみても、飲食業界全体が人材不足にちゃんと向き合う覚悟ができたように感じられる1年でした。
4. テイクアウトとデリバリーの成熟
今年に入って、テイクアウトとデリバリーを以前からやっている飲食店が売上を確実に伸ばしているのがはっきりとわかります。
中でもマクドナルドの躍進はかなり強烈でした。
要因として挙げられるのは、コロナ禍に入ってからテイクアウトやデリバリーをにわかで実施した飲食店が、そのスキルの無さからいいサービスを出来なかったことです。このことが以前からテイクアウトとデリバリーのノウハウを持っていた店舗への高評価につながり、今になって重宝されています。
さらに、こういった以前からテイクアウトとデリバリーをする体制とスキルを持っていた店舗は、コロナ禍で見事に顧客を囲い込み、さらに最近になってイートインの需要が復活したことから、売上を増大させているようです。
また、これまでイートインしかやってこなかった店舗の中でも、素早く研究開発を重ねて、高レベルでテイクアウトやデリバリーに対応したところもあります。
この絶対数がかなり増え、それに合わせて消費者もこれらを利用することに慣れてきた3年だったため、今年になり、さらに成熟したと思います。
この1年で新規開業した飲食店も、テイクアウトの渡し口を設けたり、オーダーシステムを当初から入れるといったテイクアウトありきの飲食業態は飛躍的に増えてきました。
5. 復活の兆しは本物か?
10月以降は、特に全国旅行支援の影響やインバウンド需要を中心に復活の兆候がところどころに見えてきており、一部の業態では急激に売上を伸ばしているというデータが出ています。
また、特に行動制限がない年末年始を久しぶりに迎えることから、ある程度はリバウンドが起き消費行動は増えていると思います。
しかし、この3年間の人々の生活習慣の変化はとても大きく、この戻ってきたかのような消費行動がいつまで続くかは疑問です。この年末年始に一通り飲み歩けば、また反対のリバウンドが起き1、2月はかなり消費が落ち込むことも想像できます。
そして、居酒屋業態や2次会利用される店舗の客数はそこまでの回復を見せていません。特に今年の原材料の高騰によるメニューの値上げによって売上金額に上がっていることも多いのが現状です。この要因が盛り込まれたデータを見てみると、実際の売上金額は上がっていないのそう見えているだけという店舗が数多くあります。客数はコロナ以前には到底届いてないということになります。
また、前年比30%アップといった景気のいい記事も見ますが、前年比の前年は2021年度であり、休業や短縮営業が多く、単純に比べられるようなデータではありません。ここはしっかり検証するべきです。
まとめ
今年も残り1週間となりますが、この12月の売上はどうだったでしょうか?私の周りではこの12月の売上次第では、閉店を考えると話す人もいる一方、この12月の飲食業界の活気をみて、それ次第では新店をオープンしようと話す人もいます。
これまでの3年間、休業中に取り組んできたことが試され、それが結果として出るのがこの年末だったのかもしれません。
そして、来年の1、2月が本当の売上のそことなると思います。
この消費が一気に長く冷え込む2ヶ月がお店の評価をはっきりとさせるでしょう。
その裏で、これから新規開業するにはこうするべきだと研究し、業態や商品を開発し続けていた人や企業は相当数います。その人たちの研究材料になる貴重な1年だったとも感じます。
コロナ、戦争、円安、これからもこのような有事が必ずやってくるでしょう。
それでも継続できると答えられるような変化することに躊躇のない店づくりをしなければならないと思います。
私もまた自身のお店を開業したいというエネルギーが出てきました。
来年が『飲食復活元年』にしたいものです。