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フジコ・ヘミングを懐かしむ

フジコ・ヘミング。
私にとって、彼女は、生きる希望であった。
中学生の頃、不登校の私の心に寄り添い、温めてくれたのが、彼女の音色であった。
2017年、2019年にはコンサートにも行った。
彼女の奏でるピアノの音色は、美輪明宏に言わせれば『上質な真珠が鍵盤の上をコロコロ転がる様な』ものである。
私も、美輪の表現に同感である。
フジコは、非常に遅咲きのピアニストであった。
片耳の聴力を失ったり、国籍を失ったり…あまりにも苦労の多い人生を送ってきたが、1999年にNHKのドキュメンタリーが放映され、一躍、著名ピアニストとなった。
彼女は生前、自分は霊感で弾いていて、自然と手が動くのだと言っていた。
敬虔なクリスチャンで、常に「神さま」と共にある日々を送っていた。
彼女の代表曲は、フランツ・リスト作『ラ・カンパネラ』である。
これは非常に難しい曲であるが、同時に、高い評価を得ている。
数多くのピアニストがこの曲を演奏しているが、フジコのカンパネラは独特である。
楽譜からは大きく外れているのだが、音が乱れているわけではなく、むしろ心地よい。
ゆったりとした中に力強さがある、魅力的な演奏だ。
彼女の音色に、どれほどの数の人々が、癒しを与えられたことであろうか。
彼女の遺した名演の数々は、これからも、人々に愛されていくであろう。
心より追悼の意を表する。

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