サブスクとリモートアクセス:道はどこまでも真っすぐ延びている (メディアと教育と図書館と no.57)
読みたい本や情報は,図書館・書店・Amazonn・インターネットによって,閲覧・貸出・購入・契約できる。自宅を拠点にして,「いつでも,どこでも,(だれでも,)なんでも」アクセス可能な情報化社会の時代である。今回の写真は自転車での散歩コースの道。田園の中を伸びる整備された道は,知識社会に生きている我々にとって,サブスクとリモートアクセスで舗装された高速道路である。
しかし,高速道路の先に「あらゆるものが存在して,ないものはない」としても,在野研究者を自称する一個人が,何もかも入手できるわけではなく,経費を負担できないため,手が届かないものもある。といっても,何もかもが必要なのではなく,「かなり切実に」必要な本や情報が,「効率的に」入手できれば良いのである。
というわけで,CiNii,J-STAGE,Google Scholarなど,料金の発生しない学術論文が,かなりの割合で全文入手できるサイトは当然利用する。一方で,個人での契約はハードルが高すぎる,新聞や学術論文のフルテキストDBなどは手が出ない(内閣府の統合イノベーション戦略推進会議決定による,2025年度新規公募分からの公的資金助成による学術論文等の即時オープンアクセス義務化に期待。統合イノベーション戦略 2024 ,参考資料や,千葉大学,鈴木康子氏の解説がある)。
試みに調査研究用のために,JapanKnowledge,G-Search,医中誌 Webの 3 つの DB を,退職後に個人契約してみた。3 つ の契約金額の合計は1ケ月 5,000 円以下 (G-Search の出力件数による従量課金は除 く)で,スマホに支払う金額程度であるが,個人での維持は不経済なので解約することになった。
JapanKnowledgeはコトバンクで代用することにして解約した(割引があって年間契約していたので途中解約でも残り月の返金はなかった。サブスクにおいて年間契約は要注意である。no.56 での新聞解約も,新聞は読み続けるので契約更新を繰り返す手間を省力しようと年間契約にしたため,同様に途中解約しても返金はなされなかった)。
G-Searchは,全国の新聞を必要な記事だけ入手できるので何回か記事を買ったことがあった。いま改めて調べると,1年以上使っていないことに気付いて,継続的に毎月の固定費が数百円かかるので,これも速攻で解約した。個人レベルでは無理ということである。
医中誌 Webは検索のスキル維持などのために契約したが,翌年には解約した。医学分野は全く使わなかった。
調査研究を離れた教養・娯楽系では,Queens Public Library の電子書籍・雑誌が貸出可能になる e-Card (登録は州外は年間50ドル,カード決済)である。食の月刊誌『dancyu(ダンチュウ)』には辻仁成さんのエッセイが連載され,経済や建築の雑誌もある。Dragon Ball Z(英語版)は全巻eBookで揃っている。現在,書店で買ったり,書店で立ち読みする時間を勘案すると費用対効果が良く,最も使っている。とはいうものの,次の契約更新時の年明けには,やはり解約を考えるべきだろう。
Amazon Prime に付随する Prime Video は,映画もアニメもかなり視聴できるので,dアニメ,HuLu,Netflix,U-NEXT などは契約していない。dアニメは Primeで視聴できないアニメを観たかったので数年契約していたが,時間も取れないので解約した。それにしても,Kindle での書籍購入や,生活用品からパソコン関連のあらゆる買い物が,送料無料の Amazon Prime に依存しすぎるのは問題である。昨年末の引っ越しで蔵書の整理をして以降,買い物も控え気味なので,送料無料の損得勘定が必要である。
-49- 個人蔵書と今後の読書傾向 から考えて,図書館と Kindle だけと付き合えばよいのかもしれない。しかし,「小説を読もう!」があれば,転生ものに限らず,娯楽小説は代替え可能な気もしている今日この頃である。
サブスクとリモートアクセスの高速道路について,個人での実践例を書いていたものの,結局,フリーなサイトを頼ると決めてしまえば,契約解除に一直線という,何とも情けないオチになってしまった。
参考資料
「図書館笑顔プロジェクト」による図書館への提案
- 公立図書館における情報リテラシー支援と地域資料のデジタル化
図書館評論. 2021, no.62, p.74-87.
図書館問題研究会 第47回研究集会(2021/02/21)
要綱 発表ビデオ(Youtube)
- 公立図書館におけるリモートアクセスでの商用DB提供の展望.
図書館評論. 2020, no.61, p.3-21. まとめの図
- 未来の図書館:調査する住民の立場から.
図書館評論. 2019, no.60, p.54-75.