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【Restaurant TOYO】ソムリエ徳重パリレポート【お客様に出会い、またワインと出会う。】

さて、突然ですが皆さんはどんなワインがお好きでしょうか?

軽くて飲みやすいもの、渋みがあって飲み応えのあるもの、さっぱりスッキリとしたテイストや香り豊かで複雑なものなど、ワインは非常にバラエティーに富んだ飲み物であり、また嗜好品でもあります。

現在世界にはワインに使われるブドウだけで約1,500種類、銘柄においては約100万種類のワインが存在するそうです。
そんな数ある中から自分の好きな香りや味のワインを見つけることは至難の業です。

それは私もまったく同じで、普段フレンチレストランで働きワインを扱っている身ではありますが、当然経験したことのないワインの方が多く、日々出会うワイン達に「初めましてっ!」と挨拶をしています。

そんな少ない経験の中でも、ブルゴーニュのどこどこのワインが好きだ、ボルドーならココ、イタリアだったら、、、と確かに好きなワインは存在します。

そして現場では、そのフォーカスをお客様に向けてその方がどんなワインがお好みなのか探ります。

東京店に在籍していた時は、フランスワインをベースに世界中のワインを組み込んだペアリングをしていました。
日本の市場はヨーロッパのワインのみならず、世界に開けていてまた、消費者も色々な国のワインを楽しみたいという傾向がありました。

しかし、パリに来てからはフランス以外のワインをお店で扱うことはほとんど無くなりました。お客様はフランスワインで十分満足していらっしゃいますし、そのようなお客様の嗜好、傾向があるので当然お店にも他国のワインはほぼありません。 その代わり、フランス人のお客様は〇〇という村でもどこの区画なのか?ということにこだわるようです。

そして、その村、畑の特徴を生産者やヴィンテージなどの情報と共に楽しんでいるようです。 フランス以外にはあまり興味はないが、その代わりその村の地形や畑、また生産者のことについてとてもよく知っています。

ですので、私自身のワインへのフォーカスポイントも日本にいたときからすると自ずと変わってきました。
例をあげるとすると、ブルゴーニュ、コート・ド・ボーヌの赤ワインならば、日本にいた時はポマール村とヴォルネイ村でいったらどちらかというとヴォルネイ村のワインが好きでした。


ヴォルネイ村のワインは、可憐な香りの中にもにも上品さがあり、加えて口当たり滑らかな味わいが非常にスムースに感じられ、絹を思わせるような性格を持ち合わせています。よく女性的なワインとも形容される理由はここにあります。


対してポマール村のワインは、男性的。 泰然としていてかつ優雅な香りを備えており、 少々タニックなテイストは味わいに力強さを感じさせます。

日本人の方はどちらかというとヴォルネイ派が多めな印象。 しかし、こちらに来てみるとフランス人のお客様はどうやらポマールの方がお好きなようで、自ずとポマールのテイスティング機会が増えて、「あっ、美味しい‼︎」と思うように、、、。

張りのある酸味がクランチーなテクスチャーをつくり、飲んでいてとても心地よいのです。
お客様のお好みに合わせていく中で、私自身のワインの感じ方も変わっていく、、、。 とても面白いなと感じています。

これと同様にコート・デュ・ローヌのワインも日本より召し上がる方が多いような気が致します。特に、白ワインですとサン・ペレイやシャトーヌフデュパプ、赤ワインですとコート・ロティやコルナスといった地域もワインリストにオンリストしていると、すぐに注文が入ります。

私自身コート・デュ・ローヌの白ワインには少し苦手意識がありましたが、繰り返し飲んでいくと、慣れていき、そのワインの持つ底知れぬ魅力に段々引き込まれていきました。今では、自分用に購入し休日などにゆっくり楽しんだりしています。

このようにそのワインへの感じ方は、その方の持つ元々の味覚の好みもありますが、ワインを召し上がる頻度やそれに基づく経験値、またこれまでどんなシチュエーションの中にワインがあったのかでまったく変わって来るものだと思います。いつ、どこで、誰と、どんなワインを飲んだのか。それはまさに「一期一会」と言えるでしょう。 そしてこれから先もまた変化し続けていく。

ワインとは、本当に美味しくて楽しい、また複雑で知的でもある。我々の五感にこんなにも働きかけてくる飲み物は果たして他にあるでしょうか?
そんな魅力的な存在であるとワインとお客様との出会いのキューピッドが出来る毎日に、私はとても幸せを感じております^ ^

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