お盆の空に浮かぶ懐かしい面影
こんにちは。
マヨネーズが苦手なとよぞうです。
お盆の空を見上げてふと昔を思い出した。
心に寄り添ってくれた先輩
空港に慌ただしく溢れかえるお盆帰省の人々を見送る傍ら、青く澄み渡った空に懐かしい面影を感じました。
私にはかつて大変お世話になり、生涯忘れることの無い「Nさん」という公務員時代の先輩がいました。
年金事務所にいた頃、私のことを認めてくれた唯一の上司でもあったNさんでしたが、今から10年ほど前に旅立たれました。
配属されて間もない頃、強烈なクレーム対応に苦戦する私の背後からさりげなく相手を和ませつつ、しっかりと話を聞いて納得させてくれた。
叱られたことは一度もない。
部下に優しく上の人間には言うべきことをびしびし言う。
(昔はそういう人ってどこにも居たような気がする。)
そんなNさんは幹部になった後も変わることはなかった。
キャリア官僚である事務局長に対し手揉みする取り巻き達を尻目に、容赦なく意見を言っては嫌われ脇へ追いやられ、結局早期に退職することになっていった…。
まだ「消えた年金問題」で社保庁が大炎上するほんの少し前までは、「OB会」なる退職後の元幹部連中が、入れ替わり立ち替わり印籠を引っ提げては昼食時間頃の年金事務所を昼飯をたかりに訪れていた。
しかし年金問題の社会的な騒動が始まった途端、OB会員たちの昼食訪問はピタリと成りを潜めた。
そんな輩たちと入れ替わるようにして、ただ一人退職後のNさんは我々を気にかけてよく来てくれた。
「俺たちのような不甲斐ない先輩のために苦労かけて申し訳ない」「腹を切ってお詫びしたい」
ことあるごとに年金問題で叩かれ続ける我々を労ってくれた。
何度も何度も…。
私が辞めた後もずっと気にかけてくれた。
半年に一度は東京に用事があるといっては顔を見せてくれた。
私はその都度寿司やステーキを奢ってもらった。
40歳を過ぎて公務員を辞め、あても無いなかで再就職した時も「お前はたいしたやつだな」と言って持ち上げてくれた。
家族を除いて誰よりも寄り添ってくれた。
いま思えば年金事務所でクレーム対応を積極的にやれたことも、部下に不正を強要して責任逃れするアホどもにしっぽを振らなかったことも、ずっとNさんの媚びない生き様に憧れていたからなのかもしれない。
時代遅れも甚だしい、今どき流行らない浪花節。
…でも、何かを、大切なことを教わってきたことだけは間違いない。
私の心はそう言っている。
ただ、組織では不器用だったという共通点。
心の声に耳を傾け、寄り添い生きていくことが生き様なんだろうと思う。
心の声に耳を傾けて生きていく
いま、公務員を辞めたいと思ってる人もいることでしょう。
そんな人たちはきっと「もっと人間らしく生きたい」と心が訴えているんだとも思います。
心の声が聞こえるのなら、聞こえないふりをせずに耳を傾けてみよう。
聞こえないふりは止めてみよう。
ひとつしかない心が壊れてしまう前に…
もしかしたら公務員を辞めなくたって解決策は見つかるかもしれません。
今夜はNさんが好きだった「甲子園ダイジェスト」でも観ながら一杯飲ろうかな。
地元の代表校は勝っただろうか…。
いつかあっちの世界で再会したときに言ってやろう。
「あなたのせいでちょっとだけ苦労しましたよ。でもおかげで楽しい人生だった」と。
そう報告できるようにこれからも人間らしく生きていくつもりです。
お盆の暑い一日の終わりにそんなことを想いながら空を見上げた。
ひときわ大きな雲にNさんの面影が重なった。