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LIFULL PRチームが「PR活動による事業貢献」の可視化を諦めずにチャレンジした話

多くの企業の広報さんにとっての悩みとして、「PR活動がどれくらい事業に貢献しているか分からない」というのがあるのではないでしょうか。
一生懸命メディア発表会やプレスリリースの企画をしたりメディアプロモートを行ったりで、ヘトヘトになりながら勝ち取ったメディア記事の露出・・・嬉しい!やったね!Happy!✌️
ですが、どこからともなく聞こえてくる声があります。「その露出で、売上はどれくらい上がるの?」※実際に言われたわけではありません


PRは露出を獲得して終わりというわけではありません。それは分かっている一方で「1本露出が出ると、いくら売上が上がります」という方程式もなく、どうPR活動の事業貢献を可視化すればよいのか私たちLIFULL PRチームもずっと悩みを抱えていました。
このnote記事はLIFULL PRG遠山・小田が「PRの業績貢献可視化」という難問にチャレンジした奮闘記です。これが答えだ!と言うつもりはありませんが、同じように悩める広報さんがいたら少しでも参考になりますように。


PR指標と事業指標の相関を調べ、PR活動の事業貢献を測ってみた

相関分析に関しては小田からお届けします!
以前もメディア露出の効果検証に挑んだ話&モヤモヤっとした結果(笑)を披露したのですが、その進化版(と信じてる)のお話です。

<相関分析の流れ>
STEP1:指標洗い出し

・まずは
①アクション(PR活動に関する指標)
②アウトプット(露出に関する指標)
③アウトカム(経営に関する指標)
に分けてそれぞれの指標を洗い出しました。
・アウトカムについては社内でコミュニケーション活動(PRに限らない)の貢献項目とされている指標を置いています。
※「重要メディア掲載数」は社内でメディアパワー・事業親和性を基準に定めた「重要メディア」への転載含む掲載数です。
※「特定KW(キーワード)メディア掲載リーチ数」は社会課題解決・不動産テック関連のKWを含むメディアの掲載リーチ数で、これらのKWを含む露出を質の高い露出としています。

STEP2:指標取得体制の構築
昨年のnoteでも
>あらゆる可能性を鑑みてデータをストックしておく
大切さに言及しました。

「どんなデータを集めるべきなのか?」「そのためにはどんなツールを導入すべきなのか?」を話し合い、当社としてはビルコムさんの広報・PR可視化ツール「PR Analyzer」を導入することにしました。
https://www.pranalyzer.jp/

アウトプット指標に入れ込んだ「メディア掲載リーチ数/特定KWメディア掲載リーチ数」「SNS波及数」はPR Analyzerの導入によって新規取得できるようになったものです。これによりメディア掲載によってどのくらいの人に見られたかというボリューム(量)と私たちが獲得したいパーセプションに沿う記事内容だったかという質の両方を見ることができるようになりました。

STEP3:相関の分析
①と②、②と③の相関をみることでPR活動の事業貢献を測りました。

<分析結果>
※以下、「強い相関」=相関係数0.7以上、「相関あり」=相関係数0.4以上0.6以下、「弱い相関」=相関係数0.3以下としています。

(1)①アクション指標と②アウトプット指標の相関
アクション指標の2項目「リリース本数」「PR TIMES UU数」はいずれも「重要メディア掲載数」と強い相関が見られました。

他のアウトプット指標とは分かりやすい相関が見られませんでしたが、
(※「重要メディア掲載数」以外については短期間(3ヶ月)のデータだったため相関が見えにくかったと考えられます。)今までの活動量がアウトプットに紐づいていることが分かり、一安心です。

(2)②アウトプット指標と③アウトカム指標の相関
先ほど各アクション指数と強い相関が見られた「重要メディア掲載数」は、すべてのアウトプット指標と相関がありました。
また、「メディア掲載リーチ数」「特定KWのメディア掲載リーチ数」は企業イメージ指標に強い相関がありました。((1)で記載の通り、データ取得期間が短いのでもう少し継続して見ていく必要性があります。また、事業指標との相関が出なかったのは「特定KW」における露出数がまだまだ少ないという当社の課題も浮彫にしていると考えています)
※「メディア掲載リーチ数」に関しては、TV露出の質(尺の長さや紹介内容)に差が大きく、相関が薄まってしまうため、WEBに限定しました。

<分析から分かったこと、まとめ>
「事業指標」=行動変容、「企業イメージ」=認識変容(正確に言うとイメージ≠認識ですのでご注意ください)と置き換えた場合、重要メディア掲載数等、「露出の量」は行動変容、認知に強い相関が見られました。一方、特定KWのメディアリーチ数という「露出の質」は企業イメージ評価に相関がありました。

本田哲也さんが『パーセプション 市場をつくる新発想』などで提唱しているPRのピラミッドの考え方、「PRは下段のパブリシティ―(認知)、中段のパーセプションチェンジ(認識変容)、上段のビヘイビアチェンジ(行動変容)から構成される、3段のピラミッド構造になっている」「特定のビヘイビア(行動)は特定のパーセプションによって起こる」ということに照らし合わせて考えると、露出の量も担保すると共に、質の高い露出により認識を変えることで、より強固な行動変容を生み出せる可能性がある、と考えます。

ここまでの相関分析によって、PR活動は事業に貢献していることが見えました。


実際に記事を読んだ時の態度変容をアンケート調査で調べてみた

ここからは遠山よりお話しします。

続いて、より事業への貢献度の高いPR活動を行うために、どのようなメディア露出が事業貢献度が高いのかをアンケート調査によって調べました。

LIFULLのサービスについて露出のあった3本のインターネット記事を読んでもらい、その後の態度変容を調査したものです。
その3本の記事とは、それぞれ下記の内容の記事でした。

①LIFULL HOME’Sランキング記事
「注目の都内サウナに通いやすくて家賃が安い駅ランキング」プレスリリースからストレート記事になったものです。
LIFULL HOME’Sでは従来の尺度だけではない住まい探しを提案したいと思い、ライフスタイルに寄り添った様々な視点で情報発信をしています。この”サウナランキング”以外にも”年パスで通える水族館のある家賃が安い駅ランキング””図書館の数が多い区ランキング”など、多くのメディアに取り上げていただいています。

②LIFULL HOME’S FRIENDLY DOORに関する記事
2本目はLIFULL HOME’S FRIENDLY DOORの事業責任者であるキョウのインタビュー記事です。LIFULL HOME’S FRIENDLY DOORとは「外国籍」「LGBTQ」などさまざまなバックグラウンドを理由に住まいの選択肢が限られてしまう「住宅弱者」の方々に対して理解があり、相談に応じてくれる不動産会社を検索することができるサービスです。こういった取り組みはLIFULL HOME’Sの競合サービスとの差別化につながると考えています。

③LivingAnywhere Commonsに関する記事
LIFULLが地方創生事業の一つとして運営するコミュニティ型多拠点コリビングサービス「LivingAnywhere Commons」を紹介する記事です。LIFULLは「LIFULL HOME’S=住まい領域」のイメージが強い方も多いかもしれませんが、介護や地方創生などさまざまな領域に事業拡大しています。住まい以外のサービスを展開していることを知ってもらうことでユーザーにどんな認識が生まれるのか調査するために選択しました。

<各記事による印象変化>
いずれの指標でも②LIFULL HOME’S FRIENDLY DOORに関する記事がトップでした。「LIFULLの理解が深まった」は特に高い数値が出ており、企業理解へ大きく貢献していることが分かります。

<企業姿勢・事業内容>
いずれの記事も「LIFULL HOME’Sを運営している企業である」の理解が最多となりました。2017年の変更前の名称「ホームズ」で覚えていただいている方も多いため、LIFULLがLIFULL HOME’Sの運営会社であるということの理解向上はLIFULLブランド認知につながる大事な指標で、②が全項目において最も高いスコアだった一方で、①③は「多様な事業・サービスを展開している」のスコアが高く、記事によって獲得できる認識(パーセプション)の違いも明確に見えました。
また全項目において最も高いスコアだったのは②LIFULL HOME’S FRIENDLY DOORに関する記事でした。

<各記事によるサービス利用意向のリフトアップ>
①と②についてはLIFULL HOME’Sの、③についてはLivingAnywere Commonsの利用意向について、記事提示前後でどの程度変化があったかを見たところいずれも対提示前110%以上、特に②LIFULL HOME’S FRIENDLY DOORに関する記事は対137%と大きなリフトアップが見られました。

<調査から分かったこと、まとめ>
いずれの指標においても②LIFULL HOME’S FRIENDLY DOORに関する記事が貢献効果が高いと出ましたが、その理由として「記事内でどれだけLIFULLのサービスに言及されているか」「LIFULLのブランド、企業姿勢に触れられているか」の露出の質の高さがあると考えています。

指標相関分析からも「質の高い露出により認識を変えることで、行動変容を生み出せる可能性がある」という事がわかりましたが、やはり事業貢献を生むためには「メディア露出の質の高さ」が大事なポイントであると言えそうです。

とはいえ、サービスやブランドについて多く語られる質の高い記事は獲得するのにかかるリソースも大きくなります。例えば①LIFULL HOME’Sランキング記事も②LIFULL HOME’S FRIENDLY DOORに関する記事と比較すると低いものの、貢献効果があると出ています。生活者の方とブランド・サービスの接触機会を増やすためのものとして、両方の露出をバランスよく獲得していくことを目指していきたいと思います。

チャレンジしてみて思ったこと

混じり気のない本音で言うと、「貢献効果、ちゃんとあるって分かって良かった!!!」です。小田さんと2人で分析や調査を進めながら、貢献効果見えなかったらどうしよう。。相関見えなかったらどうしよう。。わ、わたしの仕事ってもしかして意味ない!?と日和った場面もありました。この結果が出て私たちLIFULL PRチームのモチベーションアップにも繋がったかなと思います。PRがやれること、貢献できる事はたくさんある!という気持ちを強くもって、自信持ってやっていきたいなと思います。(遠山)

混じり気のない本音で言うと(笑)、「PRの事業貢献って可視化できるんだ!!!(驚)」でした。セミナーに参加したり、他社広報さんとの会話で「PRは事業貢献との相関は見えない。それはもうしょうがない。」という言葉をよく耳にしました。そして私もさも努力した人のように「広報と事業貢献を可視化させるのはムリゲー」と口にしてきました。でも、それで日々の業務にモチベーションを持って臨めるのでしょうか?それでPRの重要性を社内に示せるのでしょうか?心のモヤモヤを晴らすためにぜひ一度チャレンジしてみることをオススメしたいです!(小田)

小田&遠山

これからのチャレンジについて

ここまで書いてきた内容はLIFULL29期(2022年10月-2023年9月)の間で実施した分析・調査です。
30期に入り、より多角的・長期的な業績貢献可視化にチャレンジを始めました。また新たな発見がありましたらご報告したいと思います!

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