海とともにある街 葉山
ゴールデンウィーク最終日、おなじみのカフェの特等席でしあわせだった10日間を振り返っている。自分ひとりの時間も友だちとの時間も文句なしにすべてが楽しかったなあ。
そんな連休、最後のお出かけ先は葉山でした。
ということで今日は葉山紀行を書こうと思う。
葉山といえば海の街。私は、どことなく異国の香りがするこの街がとてもとても好きでした。
海辺で読書する中年夫婦、ヨットを愉しむ大学生、大型犬を連れた若いカップル、シャベルを持った子ども。人びとを寛がせる海の力よ。
そして、海の前では建物も大胆で開放的になるみたい。大きな窓やデッキがあるのは何もカフェに限ったことではなく、一戸建てやマンションにもそれらはあり、毎日ドラマが生まれるような贅沢な空間をつくっていた。
驚いたのは、まるで言い合せたかのように街全体が海と融合することを求めていること。その士気の高さのようなものにぐっときた。色味や質感にこだわった服や家。ランプやツツジのビビッド。無造作かと思いきや効果的に魅せることを緻密に計算されたガレージ。
それだけ、葉山の人びとにとって海はすべからく真ん中にあるもので、暮らしも恋も嗜みもすべてはそこから始まるのだと知った。ある種の土着性は外部の人間を疎外すると同時に圧倒的な憧憬をも抱かせるものなんだなあ。
1ヶ月前に始めた趣味のカメラ、大活躍でした。画像より言葉、とかなんこか前の記事で書いておきながらおいおいって感じですが、はまってしまいました。写真撮影に付き合ってくれた親友に感謝。
住宅街を抜け、喫茶店パッパニーニョにてお茶。色とりどりの器とこまごまとした内装、オーナーのアロハシャツ。可愛いがぎゅっと詰まったお店。
ポスターには“Stop for a cup of coffee!”の文字が。うんうん、大事よね。
ひと息つき乾いた喉も潤ったところで夕食をとるためにレストランへ向かう。
夕食は海辺に佇むラ・マーレで。40年あまり葉山のシンボルであり続けるラ・マーレは、私が人生で最も訪れたいレストランでもあった。
というのも、私の最も好きな作家江國香織さんが、読者の質問に答えるという企画でこのお店の名前を挙げていたからだ。
読者の質問は、『神様のボート』の続編はあるのか、といった内容で、
(『神様のボート』は利発で美しい母娘が「あの人」を求めて旅を続ける緩やかな狂気の物語。「あの人」は、母「葉子」の元愛人で、娘「草子」にとって父にあたる。ちなみに私が小学5年生の頃手にとった、はじめての江國作品でもある)
江國さんはこれに対して、続編はないが、あの話の直後、葉子と草子そして「あの人」は3人でラ・マーレにて食事をするのです、と答えていた。
それも、月も星も出ているきれいな夜に。なんてロマンティックなんでしょう。
私はこれを読んでから、大人になった自分がすてきな男の人とラ・マーレで夕食を味わう姿を幾度となく思い浮かべたのですが、夢ばかりが膨らんでしまいそうなので、親友にお付き合いいただき、ついに行ってきたという次第です。
結論。
本当に素晴らしいところだった。夜は1階でイタリアンのアラカルトを、2階でフレンチのコースをいただけるようになっていて、3階はバンケットルームだった。
テラス席だけでなく、店内からも海を眺められる。私と友人は日没の頃合いを見計らっていったのだけど、大正解だった。分刻みに繊細に移ろう海街の夜景は、夕食の時を豊かに盛り上げてくれました。
ラ・マーレは、出てくるものも本当に美味しいし、一緒に訪れたその人との食事をその都度一度きりの最高のものにしてくれると確信。なのでこれからはもう少しカジュアルに人を誘って行こうと思う。
最後の一枚は、常連さんと思しき老夫婦がお店の方とご挨拶している瞬間。絵になるなあ。
たくさんの物語が生まれる憧れの街、葉山。連休のゆったりした時間のなかで行けてよかった。これからも足取り軽くいろんな街へ出かけ、そこにある空気感や物語を感じていきたいな。
2週後には台湾へのひとり旅行も控えている。赤を美しく撮れるようカメラの練習も続けていきたい。
ひとまずは、連休のおいしい夢を糧に明日からの日常を生きぬくぞ。
おしまい。
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