メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん―古典から東洋医学を学ぶ―』第174号 新企画 ─「よもぎ」のテーマ読み ─ 2 「艾葉」(内景篇・胞・単方)
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第174号
○ 新企画 ─「よもぎ」のテーマ読み ─ 2
「艾葉」(内景篇・胞・単方)
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。「よもぎ」のテーマ読みの続きです。
前号同様、よもぎで項目が立てられた部分を読みます。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「艾葉」 p162 下段・内景篇 胞)
艾葉
主崩漏及帶下煎服之血崩熟艾〓子(〓鶏の左、右に隹)
大阿膠珠五錢乾薑炮黒一錢同煎服本草
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
艾葉
主崩漏及帶下。煎服之。
血崩、熟艾〓(鶏の左、右に隹)子大、阿膠珠五錢。
乾薑炮黒一錢。同煎服。『本草』
●語法・語(字)釈●(主要な、または難解な語(字)句の用法・意味)
熟艾(じゅくがい)経年を経たよもぎ
▲訓読▲(読み下し)
艾葉(がいよう)
崩漏(ほうろう)及(およ)び帶下(たいげ)を主(つかさど)る。
煎(せん)じてこれを服(ふく)す。
血崩(けっぽう)に、熟艾(じゅくがい)
〓(鶏の左、右に隹)子(けいし)の大(だい)。
阿膠珠(あきょうじゅ)五錢(ごせん)。
乾薑(かんきょう)炮黒(ほうこく)一錢(いっせん)。
同(おな)じく煎服(せんぷく)す。『本草(ほんぞう)』
■現代語訳■
艾葉(がいよう)
崩漏及び帯下を主治する。煎じて服用する。
血崩には熟艾を鶏卵の大きさ分、阿膠珠五銭。
乾姜(炮黒)一銭。以上を一緒に煎じて服用する。『本草(ほんぞう)』
★ 解説★
よもぎのテーマ読み、前号同様に項目として立てられた部分を読みます。
前号では同じ内景篇の「血」の章の単方に項目がありましたが、次はこの「胞」の章で、同様に単方に項目立てがあります。
テーマ読みで部分部分を読んでおり、また紙面の都合からも「胞」とは何か?などの疑問に答えることができませんが、その点は本文が説いてくれており、この「胞」の章の通し読み、また「胞」とは?というテーマ読みに切り替えて「胞」の章を読み、さらに読み深めることが可能です。
また例によって熟語、例えば「崩漏」「血崩」などは訳語を充てずにそのままにしており、こちらも参照読みに切り替えて、別項を参照しながら読み深めができますね。
そしてこちらでは「単方」の項目でありながら、生薬の組み合わせの処方も挙げてあり、少し発展形が説かれていることもわかります。
つまり、
崩漏・帯下 → 艾葉単体
血崩 → 熟艾・阿膠・乾姜(炮黒)
ですね。「単方」は必ずしも単体の生薬だけでなく、このように処方も挙げられていることがある、という一例でもあります。
ここで改めて、読みやすいように翻訳部分のみを前号部分と並べて記載してみます。
艾葉(内景篇・血・単方)
吐血、鼻血、便血、尿血など、全ての失血を治す。
搗いて汁を取り飲む、乾燥したものは煎じて服用する。『本草』
艾葉(内景篇・胞・単方)
崩漏及び帯下をに主として用いる。煎じて服用する。
血崩には熟艾を鶏卵の大きさ分、阿膠珠五銭。
乾姜(炮黒)一銭。以上を一緒に煎じて服用する。『本草』
冒頭の「血」だけでもすぐにわかりますが、よもぎはなるほど、まずは血に関係する生薬なのだな、ということがまずここまでの読みでわかったわけです。
このようにしてよもぎが登場する部分のデータを積み上げていき、よもぎはどのような性質・効用を持ち、またどのような処方に使われるのか、などを理解し実際に使えるようにしよう、というのが現在行っている「テーマ読み」の眼目というわけです。
今までの通し読み、参照読みはどちらかと言うと東医宝鑑の編者さんが用意してくれたレールの上に沿っての読みですが、このテーマ読みは反対に自身でテーマを設定し、東医宝鑑を自身の視点と切り口で読みまた料理していくという点で、前号で「一歩先の読み方」と書いた、より高度な読み方と言えます。
◆ 編集後記
ようやく新パソコンが届き、今号は新パソコンで執筆配信しています。
今号は環境の設定などに時間がかかったため、前号と同じ、項目立ての部分ひとつでお届けしました。
さすがに新しいパソコンは処理が速く、パソコンもネット回線も快適に使えています。
ただ前にも書いたように文字の変換がさらの状態で、このメルマガを筆頭に私の用いる語彙は特殊なものが多いですので、私の変換のクセを熟知してくれていた旧パソコン君に比べると、また処理にひと手間かかって時間がかかります。
まあその解決も時間の問題と言え、処理の速さが変換の遅さを充分補ってくれている感があります。
処理の速さに便乗して、執筆内容もより充実した形でお届けできるよう、再び研鑽の日々を送りたいと思います。
(2016.07.02.第174号)
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