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日本の中高生へのお金の教育を考える①

最近、お金の教育について色々な記事が目に留まります。ただ、このトピックは、今始まったわけではなく、少なくとも私が学生であった30年前ぐらいからずっと話されてきました。お金の業界にいる人たち、多くは金融業界や不動産業界と思いますが、その中では当たり前のトピックでした。

「日本人はお金に関することが苦手で、知識も行動も不十分だ。それを何とかしたい」

という話です。これには二つの側面があったと思います。一つは自分達の業界の発展のため、つまりより商品を売って、給料とボーナスをもらう為です。もう一つは、幅広い個人の幸せのため、ひいては社会全体の厚生のためです。自分達が毎日頑張っている仕事の社会的意義を見出すためという意識もあったと思います。

どちらの意識が大きかったのかは人それぞれですが、自分達の為だけでなく人や社会の為に何かをしたい、という話題に広がるのが「お金の教育」というトピックでした。会社組織の中でも、上司部下など会社内のヒエラルキーには関係なく、対等な立場で議論ができる、そして業界や組織の多くの人が興味と関心を持っていたと思います。また、お金の業界ではない方とお話ししても、

「お金は人生で必ず付きまとう。基本的な知識を学生の間に教えて欲しかった」

という賛成の声は確実にありました。ただし、反対の

「子供にお金の話を教えるなんてトンデモない。汗水垂らして社会の為に働くことがより大事だし、もっと他に学ぶことがある」

という声もありました。いわゆるお金を儲けるマネーゲームを教える、あたかもギャンブルを推奨するようなことは絶対してはならない、という声です。実際、金融業界が「短期で儲ける」「人を出し抜いて儲ける」ような事を商売の一つの核としていたので、業界の人が金融教育などと言っても信用されないもは当然だったとも言えます。

ここ数十年は、この賛成と反対の声の狭間で、いろいろなことが整理されてきたのだと思います。「投資と投機は違う」という説明が整理されて、今や、お金の教育はギャンブル教育ではない、少なくとも「学校で教えるようなものはギャンブル教育であってはならない」という考えは浸透したのかなと思います。

実際、私が金融のキャリアを始めた2001年、書店にいくとその9割は短期のお金儲けの本でした。当時の私は、ほぼ毎日、本屋に行っていたと思いますが、お金に関する本は全て目を通そうと、立ち読みを含めて読み漁っていました。今では増えてきましたが、当時は長期で資産運用をしよう、資産形成をしよう、なんていう本に出会うのは稀でした。そのような本であっても、中身の一部は短期のお金儲けの方法論が書いてあったりして、読後感としては「やはり儲けるのが全てなんだな」という印象でした。序文だけは社会的な投資の話が書いてあるが、本文は投機の方法論であることもとても多かったです。また、投資の実経験がないと、難しすぎて内容が理解できない本も多かったことを覚えています(これらに良本は隠れていた事を気づくのは10年ぐらいしてからです)。

今では、ただただお金を儲けよう!的な本は、ざっくり全体の半分ぐらいまで減りましたでしょうか。ただ、まだ半分はそうですし、SNSでも同じだと思います。そんな中で、お金の金融教育をという論調が盛り上がってきたのが、今現在です。

<私がお金の勉強について何を悩んできたかを振り替えってみる>

私自身、投資の仕事を長くしてきて、お金の勉強もかなりしましたし、その教育の話はとても身近にありました。自分自身が学ぶのにも悩みましたし、この仕事は世の中に役に立ってるのだろうか、という自問自答も繰り返されてきました。

社会人となり、家族や子供をもち、そして40歳も超えていい年になってきたころ、学校などから依頼を受け、学生さんに何かを教えるようになってきた。ここ7年ぐらいです。

学生さんに不定期に教えていたのが定期になり、若い人向けに書籍も書きました。ただ、書籍のタイトルとしては若い人向けですが、実際は狙い通り年配の方にも多く読まれました。

お金の教育に拘らず、教育には正解はないし、改善に終わりもないのだと思います。時代によって伝えるべきことや、効果的な表現は大きく変わると思いますし、考えれば考えるほど、何かを教えてそのフィードバックを受けることで変化していきます。

そんな中で、お金の教育について、自分なりに大切にしていることは固まりつつあります。

次回に続く

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