「ゲーム機の恐怖」第九話
やるぜ
一つ。目標を立てること。
あれだな。同じ気持ちってことだからな。ちょいと目標を立ててみねぇか?いや、そんな難しいことじゃねぇ。そうだな、前みたいに裕哉に笑ってもらうっていう目標なんてどうだ?
学校ってとこで何があったか分かんねぇけどよ、何かそこで問題が発生したっていうのは事実だ。かと言って、チチオヤーみたいに強制的に行かせようったって無理だ。何より俺たちは車も金もねぇ。学校って場所も分からねぇ。
俺が思うにはよ、あいつはずーっと頑張ってきたんだ。学校ってとこも、ここ家でもよ。ほら神経質なとこあるじゃねぇか、コントローラーと違って。だから今は心が丈夫じゃねぇと思うんだよ。
だからよ、俺たちができるのはその心の充電を手伝うことだ。おめぇは楽しかった記憶を思い出させるし、俺はこの瞬間を笑顔にできる。
まずはこの目標からやってみようじゃねぇか。
一つ。未来を見せること。
アルバムさんよ、裕哉が笑顔になったらどうなると思う?
そうだよ、俺たちも笑顔になんだよ。おめぇにしちゃ、立派な答えじゃねぇか。
んで、その後は?
なに?その後は額縁に入って?飾ってもらえる?コラてめぇ、俺はどうなるってんだよ。どうしておめぇってやつは目先のことに夢中になるかね。裕哉が笑顔になるってことは、家の中、チチオヤーもマザーも笑顔になるってことなんだよ。分かるか?
ってなるとどうなる?
そうだよ!新しい写真を挟んでもらえるんだよ!てめぇも段々分かってきたじゃねぇか、鳩より利口だな。あはは。
おぅ、その後は?
さすがじゃねぇか。家の中が明るくなるってことはだよ、俺たちも明るくなるんだよ!
一つ。因数分解
なに?そのためにはどうしたらいいかって?バカ野郎、それを考えるんじゃねぇかよ。
俺たちの目標は裕哉を笑顔にすることだ。笑顔ってことは”楽しい”っていうことだ。”面白い”ってことじゃねぇ。面白ぇっていうのは…おぃ、寝てんじゃねぇよ、この野郎。
まぁ、ジジィだから話が長くなっちまうな。すまねぇ。とにかくだ。
俺たちは裕哉が楽しいっていう場所を作るんだよ。そりゃ簡単じゃねぇ。でもな、大きな問題は細かくしろって聞いたことねぇか?
例えばよ、アルバムがたくさん開いてもらえるようになるのはどうしたらいいかって考えるのは大変だけどよ、一週間に一回開いてもらえるにはどうしたらいいかって考えると色んな考えがでるだろ?
ほら、いつも開いてもらいやすい場所に置いてもらうとか、楽しい時間を増やすだな。じゃあな、開いてもらいやすい場所に置いてもらうためにはどうしたらいいんだ?そうだな、そのカビくせぇ体を磨いたらチャンスは増えるだろうよ。
つまりはだ、たくさん開いてもらうためにはよ、そのカビくせぇ体を磨くってことから始めてみろってことなんだ。
・・・。
・・・。
また、寝てやがる。
・・・。
起きろ!
・・・。
起きろっつってんだろ!
・・・。
ダメか。昏々と寝てやがる。無理ねぇやな。こいつもこいつなりに頑張ったしな。
でもよ、アルバムが前向きになってるからよ、俺ぁ嬉しんだ。
・・・。
俺だってよ、裕哉に笑ってほしいっていうのはあるけどよ。あるけど、本当はな、裕哉とかアルバムに忘れられちまうのが怖くってな。
てめぇは良いよ。なんだかんだ言ってもちゃんと思い出してもらえる。まぁそれがこいつの仕事だけどよ。少なく見積もっても年に一度は引っ張り出される。
だけどよ、俺ぁ次のやつがきたら良くてあの場所、上手くいきゃぁBOOKOFF。悪けりゃフネンゴミってやつだ。
俺はよ、いつか必ず裕哉にもアルバムにもギターにも忘れられちまうんだ。おめぇらと違って”世代交代”ってやつがあるからよ。
本当はよ
それが怖くて仕方ねぇ。