「ゲーム機の恐怖」第十四話
異変
容姿端麗、華奢だけど背が高く頭脳明晰。
なんだよ、こいつは。
おぃ、なんだよ。
アルバム!おぃ、アルバム!
なんだよ、このでけぇやつは。
てめぇよりでけぇじゃねぇか。あらぁ、まるでブオーンだね。山よりでけぇや。
おぃ!
おぃ!新入り!
その黒いやつだよ!
そう!てめぇだよ。これまたでけぇなてめぇは。なに?高いところから失礼します?良いんだよ良いんだよ、そんなことは。おめぇは何をする機械だ?プリンターか?それとも俺の外部拡張さんかぃ?
最近、物忘れも老眼も酷くてよ、ちょいと教えてくれねぇかぃ?
なんだよ、てめぇはよ?
なに?ゲーム機?
ちょちょちょ、家紋見せてくれ。ZONY...。
お、おう、立派だなおぃ。
・・・俺と一緒の家紋してやがる・・・。
どこから来たんだ、てめぇは。アマゾン?そんな遠くから!?遠路はるばるだね、こりゃ。と、ところでその家紋は?
俺の弟分…。俺の…?弟分…?
ってぇと何かい?俺は兄ぃってことか?
それも違う?やめろやめろ。先代なんて呼ぶなよ、縁起でもねぇ。俺は裕哉の城代家老だ。なに?面を?上げてるよ。失礼なやつだね、自分が背が高ぇからって。なに?いや良いんだよ、そういうつもりじゃねぇならよ。俺もちょいと口が悪いとこがあるからな、気にしねぇでくれ。な。
ところでよ、何しに来たんだ?ここによ。ここの裕哉守は俺一人で良いんだぞ。取り立てて困ってることもねぇし。な。ほかの場所行ってくれ。
なに?
てめぇが家老になる?ちょちょちょちょちょちょっとまて。俺がいるんだ。ここに家老は二機もいらねぇよ、な?アルバム?
なんでぇ、いつもならうなずくなりなんなりするのによ、聞こえないフリしやがる。まぁいいや。結局のところ実力よ。どうだい、自信あんのかい?
ある?そ、そうか。ちょっと見せてくれ。
・・・。
・・・。
すげぇな、おぃ!写真みてぇだよ。どうやったんだよ、今の。
おぃなんだよ今の、とんでもねぇ速さで動きやがった。
・・・。
・・・。
完璧じゃねぇかよ、記憶力もよ。さっきやったこと再現してやがる。どうなってやがんだよ。
俺なんか太刀打ちできねぇじゃねぇかよ。すげぇな、おい。
負け戦
おっ!裕哉が来やがったぞ。いくら綺麗で早くてもよ”信長の野望”の続きは俺にしかできねぇからな。おぃ、秘書、コントローラー!用意しろぃ。
なに?
電源、入らねぇ?
ぶわぁ!なんだよこのぬるい風は。
こいつ…動くぞ!
・・・。
裕哉のやつ、嬉しそうじゃねぇかよ。
・・・。
ちょいと、アルバムさん。裕哉のやつなにやってんだよ。え?
そうかぃ、”信長の野望”か。新しいやつみてぇだな。信長公、生きてやがる。
まぁ、仕方ねぇやな。あいつは腕も立つし頭も良い。それに背が高ぇ。平べったい俺が言うのもなんだけどよ、カッコいいんだよ。
あれだな、不思議と悔しくねぇもんだな。悲しくもねぇ。なんつぅか誇らしい気持ちだ。
アルバム!どうだ、裕哉のやつ。笑ってるか?
そうか。そうか。いや、良いんだ。笑っているならよ。
対話
新入りさんよ、俺ぁおめぇのこと嫌いでも好きでもねぇ。だからこそ言っとくことがあんだよ。いや、妬み嫉みじゃねぇよ、バカ野郎。なんとなくよ、伝えるべきだって気がしてよ。もう疲れて大きい声でねぇからよ、ちょっと近くまで来てくれよ。な。
そう、それでいい。悪かったな。呼び出しちまって。いや、本当に文句を言う訳じゃねぇから安心しな。大丈夫だよ、殴ったりしねぇからよ。
そりゃあおめぇが来た時よ、正直よ、正直ムカっ腹が立ったよ。コントローラーぶん投げて倒してやろうかと思った。おう、思った。だけどよ、裕哉の顔見てたらどうでも良くなったんだよそんなこと。あ、関係ねぇけど、おめぇのコントローラーはコードっつぅのねぇんだな。すげぇな。ほらうちのは四六時中こいつが付いて回るんだよ。使えねぇ野郎でよ。あはは。
違ぇんだ、俺が言いたいことは。
あのな。裕哉はほんの少し怒りっぽい。結構怒りっぽい。すごく怒りっぽい。めちゃくちゃ怒りっぽい。短気で少し難しい性格をしてる。だから正直叩かれたりする。けどよ、あいつも悪気があってしてるわけじゃねぇんだ。ほら、学校ってとこでよ、色々面倒くせぇことがあったらしくてよ、裕哉のやつ少し疲れてんだ。だからよ、もしそういうことがあったらよ、俺に免じて少しだけ許してやってくれねぇか?この通り。頼む。
ほいでよ、疲れてるからよ俺たちには馴染みのねぇ言葉だけどよ”心”っていう場所の充電が必要みてぇなんだよ。だからよ。さっきも言ったけど、少しだけ許してやってくれねぇか?ほいでよ、その心の充電をさせてやってくれねぇか?
分かってくれるか。そりゃよかった。いや、それだけだよ。俺が言いたいことはよ。ちょいと疲れちまった。久しぶりに喋ったからな。あはは。
悪ぃ。人のために動いてもねぇけど、先に休ませてもらうよ。
悪ぃな。
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