「ゲーム機の恐怖」最終話
充電
される者、尽きる者
結局よ。誰でもボーっとしたい時、ヤな時、くだらねぇ時、いろいろあるけどよ、そいつに合った心の充電方法があんじゃねぇかって思うわけよ。
それが俺みたいなゲーム機の場合もあるだろうし、ギターをつま弾くのも良いだろうし。おぅおぅ、もちろん写真を撮るんだっていい。なんだって良いんだよ。
そいつのやり方で充電できればよ。
親ってのは、まぁ親に限らずだけどよ。時間が経つとてめぇのことを忘れてくんだよ。あの時こうだったとか断片的には覚えてやがんのによ。こまけぇとこまでは覚えてねぇんだよ。
てめぇのことすら忘れてんのに、子どものことを知った気でいる。こんなおかしいことないね。子どもより立場が上だとよ。
思い出してほしいね。てめぇたちがよ、辛かった時、悔しかった時どうやって心の充電したんだよって。昔はゲーム機なんてなかっただろうから理解できねぇかも知れねぇ。その親の親の頃はTVすらなかったかも知れねぇ。その親の親の親の頃はラジオすらなかったかも知れねぇ。
時代は流れるんだよ。だからこそ思い出してほしいね、てめぇはどうやって乗り切ったのかをよ。それを”今”に置き換えて考えてほしいね。
辛気臭くなっちまうなったく。俺も年取ったってもんだ。
聞こえてるか、アルバム。お前の役割は将来の笑顔を作る事なんだよ。今すぐには裕哉を笑顔にできねぇ。それが悪いって言ってんじゃねぇよ。事実だ。だけど、裕哉が親になった時に裕哉のガキに伝えるんだよ。お前の父ちゃんな…って。
後輩、てめぇもよ、周りのみんな良い奴ばっかりだ。困った事あったら相談しなよ。俺ぁ、多分だけど、もうここにはいねぇよ。十中八九そうだ。
でも安心しな、てめぇの周りにも同じ気持ちのやつがいるからよ。
なんでかな。なんつぅか。悲しくねぇ。忘れられるのはちょいとチクチクくるけどよ。上手く言えねぇけど。俺ぁ、笑顔だ。
な。
終演
おぃ。
前が見えねぇよ、ここはよ。
また長ぇこと喋っちまったな。
年寄りは仕方ねぇやな。あはは。
まぁいいや。
少し眠るよ、俺はよ。
あいあい。
おやすみ。