サケの遡上/幼稚園の時
とっちゃんは山間の村で生まれた。
大きな川が流れていて、鮭が遡上する。両の手で捕まえていたら全身びっしょりになるので、足でけり上げて捕まえる。
目の前の川を毎日見に行く。幼稚園に行く前の毎朝、長靴を履いて川まで駆けて行った。そろそろ鮭が上がる、とおとうさんも言っていたし。
鮭の遡上確認。黒い背中がビューと川をさかのぼる。
「ヨシ」
とっちゃんは心でヨシと確認する。
急いで家まで取って返し、持って帰る段取りを背負う。バケツを持って、タモもいるし。
川の真ん中、ちょっと浅い場所に仁王立ちになる。
タイミングを合わせて足先で鮭を引っ掛ける。力いっぱい投げ上げる。と言っても、高く上げてはだめだ、引っ掛けるようにして岸に落とす。
2匹も取れたら十分、我が家の朝飯になる。
食べるだけ取ったら家まで運ぶが、それが5歳児にはなかなかの重労働だ。
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