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かあさんは小さいころ夕張に行った

 かあさんの首にいぼができたとき。それは小学生くらいのときだったが、命にかかわるものではないからと、だれもなんも気にしなかった。その当時、かあさんの生まれた村には病院がなかった。病院どころか診療所もなかった。隣の大きな町には病院があって、大けがした時とかは担ぎ込む。それはあった。働き手とか、お金持ちの人とか。それは特別な事だった。
 熱が出た時や痛いときは知恵者のおばあさんが安生してくれた。
 それでもみんな元気にしてた。

 夏休みに夕張のおばさん(かあさんのおかあさんの妹)が帰省した時
「何ね、こんなになるまでほっといて。女の子なのに」
と憤慨してくれて、
「うちに来なさい」
と言ってくれた。そうして、おばさんが帰るとき一緒に行くことになった。

 数日後、おばさんに連れてもらって夕張に行った。
 夕張はきれいだった。着いたのは夜だったけど、夜もキラキラしていた。
 商店街があって、夕張のお金で何でも買えた。

 翌日、おばさんが病院に連れて行ってくれて、
「ああ、簡単なのですぐ切ってしまおう」
と言って、その場で切開した。麻酔が効いて何もいたくなかったのが不思議だった。その日は入院して、翌日おばさんが迎えに来た。
 おばさんちに1週間ばかり滞在した。
 映画を観た。
 金魚すくいもやった。
 盆踊りも参加した。
 洋服を買ってもらった。
 オシャレさんだったかあさんにはそれが一番うれしかったらしい。

 かあさんは笑いながら話を切った。
 そのときは、かあさんは『私も夕張に嫁にこよう』と決心したらしい。

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