日本オートルート室堂to上高地1day スキーモ
日本オートルート室堂to上高地1day スキーモ
時間
室堂3:15
五色ヶ原山荘5:10
スゴ乗越コル6:45
薬師岳9:05
太郎平9:40
北ノ俣岳10:40
黒部五郎12:10
三俣蓮華13:50
双六小屋14:25
槍ヶ岳山荘18:10
槍沢ロッジ18:35
河童橋22:25
オートルート
18日雷鳥荘に前泊
雷鳥荘のスタッフの方々が僕が日本オートルートに挑戦することを知っていてくださり、朝早く出発する事から個室を用意して下さり、周りの方々にご迷惑をおかけすることなく準備ができました。お気遣いをいただき本当にありがとうございました。
朝ごはんのお弁当はいつもはちらし寿司との事でしたが、行動中食べやすいようにおにぎりを多めに作ってくださりました。
とても助かりました。本当にありがとうございました!
日本オートルート挑戦
19日朝2:30起床。
興奮なのか不安なのか一睡もできなかった。
朝起きてから作っていただいたおにぎりとバナナを食べる。
軽く脚をマッサージし、レース前のルーティンである上半身のストレッチをする。
前日乾燥室で乾かしておいた靴下とブーツを玄関で履き身支度をする。予報通りではあるが山小屋がギシギシと音を立てるほど外は風が強く吹いている。まだみんなが寝静まる中、暖かい雷鳥荘に後ろ髪を引かれながら3:15板を履き雷鳥荘前からスタート。
強風で視界もない中ではあったが憧れたオートルートにはワクワクしかなく天気も回復傾向の予報のため何の躊躇いもなくはじめの一歩を踏み出した。
一ノ越までは15m/s程の風。そこまで風の影響を受ける事なく進むが視界は5mもない。トレースや竹ポールがあるので迷う事なく最短ルートで一ノ越へ到着。風に堪えながら進んだので30分で到着したかったが36分かかる。しかし稜線にでたら更にここで風が強くなる。立っていたら飛ばされそうなくらい。
龍王岳の稜線上は轟轟と風の音がするのでなるべく避けるため一度鬼岳の沢との出会いまで滑り、沢を登り返すルートへ変更。
獅子岳の登りは朝の冷え込みと強風に叩かれ、カチカチに凍っているがブーツのトレースがあったのでたどらせて貰う。幸いアイゼンを使うほどではなかったが真っ暗な先に伸びる底の見えない急斜面に脚がすくむ。
山頂に着くとトレースの人は別の方角へ降っている跡があった。ここからは誰のトレースもない自分の道を辿るのみ。
獅子岳山頂で既に風速20m/s。そして視界1m。不安が募るが、学生の頃に立山センターで働いていた時に五色ヶ原まではたくさん通ったのでルートは頭に入っているためそのまま進む。しかし、分かっていても視界1mとひたすら続く真っ暗な世界。ザラ峠までの急な下りの斜面が標高差200mしかないのに全く到着しない。それくらいゆっくり降ることしかできなかった。
ザラ峠に到着。
峠はもちろん風が抜けるため止まることなくすぐにスキンを板に貼り、五色ヶ原へ向かって登ってゆく。ようやくうっすら明るくなってきた。五色ヶ原では小屋に向かって歩くのだが、その小屋がどこかすらわからない。時折ガスが抜けるタイミングで方角を確認する。広大な五色ヶ原は目印がなく早々に大きく遠回りしてしまうなど時間を使ってしまった。既に明るくなりヘッドライトを消す。1時間50分ほどで五色ヶ原山荘を通過。
鳶山からの下りは稜線から雪がついておらずハイマツをかき分けて少し降りると雪が繋がっていたのでそこからスキーで降る。越中沢岳も登りはガスがかかるも稜線上を登るだけなので風を堪えながら難なく登れるが、下りがどうしようも視界がないのでGPSを辿りながらでしか下れないためスピードが出せない。
雪がついておらず夏道が出ているところもあるのでブーツで歩いて降りる。
スゴの頭を超えた先のコルまでは3時間を予定していたので若干時間はかかるも順調に進む。コルまで3時間30分。6:45。そして一旦長めにガスが抜けて、スゴ乗越小屋方向が見える。
ここまで風が強くガスも濃かったので先が思いやられるが天気予報は回復の予報で晴れ間も出る予報だったので晴れ間までもう少しの我慢と自分に言い聞かせ再スタート。
しかしここからの薬師までの稜線が本当に苦しかった。
スゴ乗越山荘までは難なく通過、しかしここから一気に横殴りの風。そして視界1mの濃いガス。ひたすら横風に耐えながら稜線の縁を横目で見ながら一歩一歩歩く。時折見えるハイマツや小さな黒い石が頼り。目の前に突然現れる雪庇に怯え、急斜面に脚がすくむ。
天気が好転していくからと外に出していたハイドレーションのチューブは凍り、ザックに取り付けてあるピッケルにはエビの尻尾ができる。鼻も冷たく痛い。
長く遠い北薬師に着いたのは出発してから5時間15分。そしてその30分後に薬師岳着。
細い稜線に濃いガスと25m/s以上の強風。登頂に喜ぶ暇もなく一刻も早く降りたい。
山頂からはすぐ降っていけた。
視界1mで薬師小屋に気付けず降りる。ひたすら横滑り。足元とGPSしか見えず、進んでると思ったら止まっており、止まってると思ったらスピードが出ている。
恐怖でゆっくり降ることしかできなかった。
薬師平付近まで落とすと視界が一気に開け、風もどこかにぶつかっているのかそこまで気にならなくなった。
そして景色が見えた時の安心感。
6時間景色も見えず真っ白の中強風に耐え、精神をすり減らしながら進んだ僕にはガスが抜けて景色が見えた時の感動は何にも変え難いものだった。
太郎平からはまだゴールの槍ヶ岳は見えなかったが、これからのルートが少し見えただけで諦めかかっていた僕の気持ちに火をつけるには十分だった。太郎平で補給をしっかり取る。9:40太郎平着。スタートからちょうど6時間30分。予定では4時間15分。
既に2時間以上もオーバーしてしまった。
太郎平で約2300m。北ノ俣岳は既にガスに覆われて真っ白だ。後ろを振り返ると薬師岳は雲の中。
一度は折立に下山を考えていたが天気が好転すると信じ意を決して旅を続ける。
北ノ俣岳は案の定変わらず暴風とガスの中だが黒部五郎の肩に乗っこす登りでだんだんと日がさすようになり、肩に乗る頃にはすっかり天気。
風はスキンを剥がしたらしっかり持っていないと腕ごと飛んでいってしまうくらい強い。
黒部五郎岳には登らず黒部五郎小屋に向かってトラバースでおとす。
今日一最高の斜面。稜線では休む暇が無いのでノンストップで進んできたので流石に疲れた。五郎小屋の風の当たらないところで少し長めの休憩。
ハイドレーションのチューブも五郎への登りで気温が上がってようやく飲めるようになった。
五郎小屋まで滑ってきた一枚の斜面を見ながら雷鳥荘の方にいただいたおにぎりを頬張る。
茨城で買ってきたぬれ煎餅が程よい塩分で美味しい。
しばらく目を瞑って呼吸を落ち着かせる。
三俣蓮華までは+400mの登り。雪は今までよりも緩んで今日初のザラメ。+200登って稜線に乗っこしたらひたすらダラダラ長い+200を山頂に向かって登る。
長い長い。
稜線に出るまでは風のそこまで当たらない斜面で快適に登れたが乗っこした瞬間爆風。そこから三俣蓮華までは10歩歩いては座り込んで休んで。それくらい体力の消耗が激しい。 前に進む力よりも横風に耐える力を多く使う。三俣蓮華までは全く進まなくて悔しくて何度も1人で笑ってた。
この稜線は何も覚えていなく気づいたら三俣蓮華岳に到着。山頂からは槍ヶ岳だけ雲に隠れているがその下の稜線は見える。残りの道が頭に刻まれる。
ふと思ったのは「あと2時間もあれば槍に行けるじゃん。」 実際はそんなわけもなくこれまでの工程が長く苦しかったので景色が見え、とても近く感じたんだと思う。
一刻も早く稜線から降りたいので双六岳には登らず双六小屋に直接滑る。我ながら完璧なラインどりで少しカニ歩きしただけで小屋に到着。
木村ひろしさんと北アルプス走った時に朝早く出たから眠すぎて双六のベンチでご飯食べて2時間爆睡したよなぁと思い出しながら板を担いでブーツで登る。
このルートはたくさん歩いたけど、その時のその場所での感情ややったことが横を通るたびに思い出す。それも山のいいところ。
双六小屋を過ぎてから西鎌尾根はほぼブーツ歩き。雪の出てる歩けそうな稜線はすっかり雪が緩んでブーツだと膝まで埋まるので、板を履いて軽快に進む。
西鎌の夏道が出ているところは夏道通りに進むも、時折斜面に残っている雪のトラバースが緩んでいやらしい。
ズボズボと埋まり歩きづらく余計に体力を使う。
何度西鎌の稜線で座り込んだか、横に後ろに前に踏ん張った足腰の疲れが一気にきた。
太陽が当たり気持ちが安心したからか、槍ヶ岳が目の前に見れて気持ちが緩んだからか。もう全てが終わった気がした。記録のことを忘れて山の景色を遠目に観て純粋に愉しんでいる自分がいた。
千丈乗越であと+300。西日に落ち着き、オレンジ色に染まる槍を眺めながら、今まで歩いてきた道を眺めながら、登山道に腰掛け大きく深呼吸。17:00。
今日のこの稜線は僕だけのもの。終始誰とも会わず歩いてきた15時間。長い旅ももう終わる。最後の登りを登ってしまうのが寂しいからなのか、ただ体が動かないだけなのか。槍に向かう足は動かなかった。
ここで上高地に着いたよ!とけいすけから連絡がある。
『19:00ゲート閉まっちゃうんでそれまでに来れますか?』
無理だよ。今千丈だから。笑いあって緊張が解けてようやく最後の登り。
穏やかな雰囲気で休んでいたから忘れていたけど歩けば稜線は20m\s以上の風。岩の隙間をものすごい勢いで雲が流れていく。
槍ヶ岳山荘の稜線に乗っこし振り向くと、そこから見えた景色は今日の登りを締めくくるのに1番のご褒美だった。
風でまとまらないスキンをぐちゃぐちゃのまま胸に突っ込みいざ最後の下り、槍沢へ。
雪は硬くしまっており滑りやすい。何度も振り向き小さくなる槍を眺めては写真を撮る。ただ記録を求めるだけに山に入ったのにこの景色を見てしまうと写真を撮らざるにはいられない。
大きく雪崩れたデブリを進みながらババ平まで。
そこからはお決まりの超タイトなツリーラン。夏道を辿り枝が頭に体にぶつかるが気にせず滑る。
槍沢ロッジまでは問題なく滑れた。
その下も雪はまだまだ残っている。50mほどさらに滑って降るが、すぐに夏道、と思ったらまた雪。ここから横尾までは雪があるとこないとこで板の脱着も大変なためブーツでヒタ歩く。
ザブザブの雪が疲労の溜まった脚に応える。
横尾までこんなに長かったっけと思うくらい雪で進まない。しばらく無になって歩いていると前からヘッドライトの光が。既に20:00過ぎで登山者もいないから何だろうと思ったら上高地まで迎えにきてくれたけいすけがトレランシューズを履いて走って迎えにきてくれた。
待ってくれてる人がいるから頑張れるのに迎えにもきてくれた。もう頑張るしか無いよね
「横尾まであとちょっとですよ!」と言われ気分上がるも、一向につかない。「すいません、尾根一個間違えました」オィ!
そういうやりとりも今の自分の足を動かすには充分な原動力。
横尾についてブーツからシューズに履き替える。
最後ザブザブの雪を歩いたためブーツの中に水溜りができている。脚もふやけて少し痛い。足を乾かして少し休んでよし行こう。
黄砂なのか冷たい風を吸い過ぎたのか、喉が完全に潰れて呼吸が痛く鼻呼吸しかできない。
横尾からは走ることができず全歩き。
途中左岸に迂回したり、橋の上を通ったり知ってる長い道とは違ったけどヒタ歩く。
ようやく終わるという気持ちももちろんあるけど、ずっと楽しみにしていた山の旅があと少しで終わってしまうことに寂しさの方が大きかった。
林道は徳沢までけいすけが一緒に歩いてくれて励ましてもらう。
「先にテント行って夕飯作って待ってます!」
とスタコラサッサと走って行ってしまった。
「今日のご飯はなめこ汁とこごみジンギスカンなので頑張ってくださいね!」と。
なにそれ、最高すぎて頑張るわ!
徳沢から約6km弱走れない代わりにストックでひたすら体を前に前に押し、速歩きで歩き続ける。途中3回ほど座り込むもなめこ汁のために歩き続ける。
あと1kmを切ったところでけいすけがまた戻ってきてくれた。
最後舗装路に入り、河童橋へ向けて力を振り絞って走る。
22時25分河童橋到着。
槍沢ロッジから思ったよりも時間がかかってしまった。
予定していた時刻より5時間オーバー。
なかなか厳しい山行だった。
それでも今回の条件で全ての行程を完遂できたことは自信になったし、なによりも憧れたルートを辿れたことが大きな誇りになった。
悔しいなんてものでは収まりきらないけど、
1番憧れたこのルート。
日本オートルートに挑戦できたこと。
久しぶりに自分のやりたい山ができたこと。
オリンピックに向けてスプリントの体づくりをしている今だけど
雪山を縦横無尽に動き回れるスキーモの自由さ、この競技の可能性を大いに使ったスピードツーリングが大好きだ。
PDGやピエラメンタなど代表的なレースはまだ出たことないけど、それらに負けないくらいの代表的なルートだと思う。
大袈裟に14時間目標とか言ったけど、
全てが完璧に整った場合でも16時間台だなぁ、
いや、槍沢ロッジからキッツイよ
次はもし挑戦するなら2年後かな
もしやるとしたらね
長い!
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