UI Crunch 「デザイン経営」宣言 レポート
本日はUI Crunch「デザイン経営宣言」に参加させていただきました。いつもながら高倍率のイベントだったようで、私の身の回りでも来れなかった方が居たので、レポートを書かせていただきます。
▼こんな方におすすめ
経営者
・自社の企業価値を高める方法を学びたい方
・デザイン経営を実践したい方
デザイナー
・デザイン経営を実践している方
・ デザイン経営を自社に取り入れようと活動している方
経済産業省・特許庁から出された「デザイン経営」宣言について
▼こちらの資料に関するTakram 田川氏からの概略です
http://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002-1.pdf
●「デザイン経営」宣言が出された背景
・世界の潮流は第四次産業⾰命。
・あらゆる産業が新技術(インターネット等)の荒波を受ける
・そんな時代に、顧客に真に必要とされる存在はどんな組織か?
→世界の名だたる有⼒企業が戦略の中⼼に据えているもの=デザイン
・そこで特許庁も日本の政府ではじめてチーフデザインオフィサーを置いた
・ヒューマンファクターをきちんと行政に根付かせていくための一歩として「宣言」としてまず世に出し、デザイン経営についての議論が起こる状態にした(世間に対する意識付けを行った)
●「デザイン経営」の効果とは?
・ブランド⼒の向上(ブランド価値をあげることで企業と顧客の関係性を強く)
・イノベーション⼒の向上(プロダクトやサービスが機能するためヒューマン・ファクターを考慮する為)
※デザイン資源を「ブランド」と「イノベーション」どちらに注力するかにより企業のキャラクター(個性)がでる(無印はブランドが強い)
●デザインの投資効果
・デザインに投資している会社は普通の会社に対して2.0倍の成長率がある(10年間で株価が約2倍に)
・欧⽶ではデザイン投資を⾏う企業パフォーマンスについての研究が⾏われている→デザインへの投資を⾏う企業が、⾼いパフォーマンスを発揮していることが明らかに
●「デザイン経営」の定義
1.経営チーム(意思決定者)の中にデザイン責任者がいること
2.事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること
●デザイン経営の為の具体的取組
1. デザイン責任者(CDO,CCO,CXO等)の経営チームへの参画
2.事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
3.「デザイン経営」の推進組織の設置
4.デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒
5.アジャイル型開発プロセスの実施
6.採⽤および⼈材の育成
7.デザインの結果指標・プロセス指標の設計を⼯夫
最終 パネルディスカッション
登壇者:特許庁長官 宗像(むなかた)さん
Takram 田川さん、DeNA 南場さん、DeNA 増田さん、Goodpatch 土屋さん
●特許庁の役割を教えてください
発明、デザイン、商標などの知的創造の成果を保護・活用し、産業の発達に寄与することを目的としています。(by 宗像さん)
●特許庁でスタートアップ支援をはじめました
・特許審査の超ファストトラック
→ 通常1年から1年半かかるところ、スタートアップ向けに1-2ヶ月で特許を取れるサービスを開始
・ほかにも知財メンタリングやスキルアッププログラムもあります
・https://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/startup.htm#shien2
●特許庁にデザイン経営を取り入れたことでメンバーから出た感想
付箋にアイデアを書いたりするデザインプロセスは気恥ずかしい気がしていたが、そういった手法を使うことで普段無口な人が実はイラストでものを伝えるのが上手だったり、面白いアイデアを出したりと、デザインには組織をエンパワーする力があると感じた
●田川さんは左脳派の人にデザインを理解してもらうのはどうしてるの?
・前提:デザインがインパクトを与える産業とそうでない産業がある
・インパクトを与える産業=インターネットと交わる部分の方々
・それは世の中の大半の産業、時代認識が重要
・ユーザー視点を企業に取り込み、サービスをアップデートしていく姿勢で事業を行わないと今後勝てなくなってくる
上記のことを丁寧に繰り返し説明していくしかない
●デザインプロセスを踏むと不思議と「組織の統合が行われる」
・なぜならユーザーから見るとサービスはひとつだから
・しかし組織側から見ると事業実態はリソース、ポジションetc…それぞれ別れている
・デザインプロセスを踏むとユーザー中心に設計し直す必要があるため
分断されてた組織を再統合せざるを得ない
●デザインの定量化・効果判断をどのように行っているのか
デザインの費用対効果はやはり簡単に定量化はできない、経営におけるエビデンスは足りていないが、中長期的には必要なのは確信として分かっている。すぐに定量化できないが確信があるという点で、ダイバーシティな組織が成功するのと親しい現象がある。by南場さん
初期投資は少ないし、費用対効果を考えるレベルの規模になれば体感としてわかっているケースが多い。by田川さん
●apple問題(費用体効果や戦略をどうプロダクトに落としているのか?)
・組織2位のエグゼクティブオフィサーがデザイナー
・この人達がひたすらユーザーバリューと向き合っている
・どうやったらユーザーが満足するモノを量産可能な形でつくるのか
・そうゆう部分とひたすら向き合ってあのプロダクトが出来上がっているby田川さん
●CDOに求めるスキルセットはなに?
・ピープルマネジメント
・Head of Designer(現場のデザイナーの責任者)と解像度高くコミュニティーできる能力 → 結局はものをきちんと作りきった経験がある方でないと機能しない
・細かいUXUIの実作業はHead of Designerに任せる
・デザイナーとはデザインの言語で会話ができ、経営者とは経営の言葉でビジネスの会話ができるスキル
・(ちなみにPMは関係者が多いのでマルチ言語を扱える)
・デザイナー→PM(プロジェクトマネージャー)→PM(プロダクトマネージャー)→CDOとかのキャリアアップだとスムーズかも
●宗像長官がデザイナーと組もうとデザイナーのことを信頼出来た瞬間は?
・デザイナーは人間への洞察力がものすごく鋭い(親しいデザイナーの方と接してそう感じた)
・特許庁にはユーザー目線やUIUXの概念がない状態、ゼロからの可能性は無限大なのでやるしかないと思った
追記 : 印象的だったエピソード
●ロジカルモンスターが経営にCDOを置いた結果
DeNA 南場さん(経営者)
「デザイン経営って言うは易しですが、実践するのは非常に難しいですね。どんなに自分(経営者)がデザインに対して価値を見出していても、いざ経営会議となるとどうしてもCDOを理詰めに詰めてしまうんですよ(笑)
そのデザインでどれくらいの結果(数字)を出せるの?と。
経営会議の場ではどうしても数字やロジックの部分を中心に議論されてしまいます。でも、だからこそ「人の気持ち」「手触りの良さ」や「感覚」を右脳で感じて言語化できる人が経営者(意思決定者)の中にいることが、サービスを良くしていく上で重要なんです。CDOは「ユーザーにとってどうなのか?という視点」を常に引き戻してくれます。いくら戦略が良くても、プロダクトの触り心地が良くなくて上手くいかないことは多々あります。戦略が悪くてもプロダクトの触り心地が良くて大成功することもあります。ユーザーエクスペリエンスは時として事業戦略以上に大切です。また、経営者がデザインの力を信じることも同じくらい重要なことです。」
※ 南場さんは周囲からロジカルモンスターと呼ばれるほど左脳派だそうです。
●レガシーな組織がデザインの力でエンパワーメントされる話
デザインプロセスを踏むと「分断されていた組織の統合」が行われてしまいます。なぜかというと答えはシンプルで、ユーザーから見るとサービスはひとつだからです。組織側から見ると複数に分断されてしまっているリソースも、ユーザー視点を取り入れると越境して課題解決せざるを得ない状況になります。そうやって周囲を巻き込んで進めるプロセスのなかで、取り組んだメンバーからは「最初は正直めんどくさいと感じていた取り組みだったが、意外な人がアイデアマンだったり等発見が多くあり、組織がデザインの力でエンパワーメントされるのを感じた」という意見も出ました。
by 田川さんと宗像さんのお話から抜粋
●経営とブランディングの話
Goodpatch 土屋さん
「5年後に目指すデザイナーとしてのキャリア」アンケートを取ったところ、経営に関わりたいデザイナーは12%と少ない中、ブランディングのスキルを付けたいと答えたデザイナーは多い割合を占め、非常にギャップがある結果となりました。ブランディング(CI/VI)には経営への理解が必須です。ブランディングをするためには、社会・ビジネス・サービスについて経営者と解像度の高いコミュニケーションを行うための高度なビシネスコミュニケーションスキルが求められるからです。そんななかデザイナーに必要となってくるものは、領域を超えていくチャレンジ精神やアントレプレナーシップ(起業家精神)です。また、経営トップがデザインの力を信じることも同じように重要となってきます。
そして、デザイン経営を実践していく為のキーマンとなるのはプロダクトマネージャーです。プロダクトマネージャーは「プロダクトの価値を明確にし、狙った市場に届ける為」に「ユーザーへの誠実な姿勢を持ってチームメンバーへリーダーシップのあるコミュニケーションを行う」役割だからです。
おわりに
イベントが終わって、一晩寝てもまだ胸に残っていたエピソードを追記として記載しました。こんなに優秀な人達にさえも、やはりデザインの費用対効果は定量化できるものではないんだなと感じる一方、中長期的にデザインの力を信じで取り組んでいくこと、そして結果を出していくことの大切さを改めて感じました。外からは効率良く素敵に聞こえるエピソードも、現場では泥臭く苦しみも多かったことと思います。
デザイナーとして関わる社会が確実に以前より良い社会になることを信じて、明日からまた頑張れるエネルギーを分けてもらえるイベントでした。
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