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不登校先生 (21)

ドボドボドボドボドドドド・・・・・・・・

湯船にお湯を貯めながら

ずーっと蛇口からお湯が出てくる様子を眺めていた。

二週間ぶりに入るお風呂。

あったかくなってきた時期なのに、

あの日以来。お風呂に入っていなかった。

お風呂に入る気持ちすらわかなかった。

入らなきゃという意識すら向かなかった。

そういえば、自分の体の匂いがだいぶ強い。

家に引きこもっていたとはいえ、顔も洗っていない。

ひげも伸びっぱなしだ。

通院する以外に外出もしていないし、通院時は、マスク着用だから

もはやひげが伸びてようと見えやしないので、

ひげをそろうという気にもならずにいて、

家の中で暮らしているのに、原始人みたいな顔になってしまっている。

汗をかいている自覚が、昨日までなかったとはいえ、

昨日の通院時は、体臭がきつかったのではないだろうか。

そんなことを思いながら、ぼーっと蛇口を眺めていると、

ドボドボドボドドドドド・・・・の音がだんだんと、

ジョーボジョボジョボジョボジョボジョボボボボボボボボボ・・・・・

お湯がたまるにつれて、音がどこかくぐもったような、小さな音に変化する

お湯がたまっていくときに、音もこんなに変わるんだ。

そんなことを感じながら、ずーっと蛇口に目を向けていると、

だんだんとお湯がたまるにつれて、浴室の温度と湿度も上がってきて、

じとーッと額に汗か水滴かがたれ始めて、

寝苦しかった気持ち悪さに反応して、体がかゆくなる。

乾癬で赤い湿疹になっているところがかゆく感じて、

がりがり掻くと、ボロボロと角質が落ちる。

ほんと、心が空っぽで体を動かす、何かしら清潔にするなど、

そういう回路も止まっていたのがわかるかのように、

急に肌の触覚が戻って、一秒でも早く全身を洗いたい気持ちにせかされた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

全身を、固いタオルでごしごし洗って、もうなんだか洗っても洗っても

垢は出てくるかもという圧迫感に迫られるように体を洗って。

頭もワシワシ洗って、ひげも剃った。

かつてないほどにほっといた髭は、いつもの小さいジョリジョリ音ではなく

すごく大きな「グッジョリ、グッジョリ」と、

なんだか手ごわい草抜きが顔で行われているような音を立てて、

ひげを剃り上げていく。

一つ一つの工程が、とても久しぶりで、なんだかとても懐かしくて

お湯の温かさの心地よさが、どうしようもなく心まで沁みて、

水滴でもなく、汗でもなく、浸かったお湯に涙の粒が溶けていった。

↓次話



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