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不登校先生 (8)

なんとか、どうにか、まずは最初の二つの課題をクリアできた。

本当だったら、自分自身に、よくやった。

そんな思いを感じても良いはずだけど

決して、自分が成長するための行動ではない。

受け持った子どもたちと向き合うための前向きな行動ではない。

命を手放しかけた自分を必死につなぎとめて、

とっさに同じことを起こさないように、

繋ぎとめるために必要だと思った二つの課題は

クリアしたからと言って喜べるような課題ではなく、

そもそも、その達成感だとか、自分自身をほめてあげたいとか、

そんな思いを、生み出してくれた心が、

今完全に砕け散っているのだ。

自分が、感じたい。思いたい。そんなことすら湧いてこない。

まるで、ナウシカの腐海の最深部の様に

完全に砕け散った白い砂浜のようになった心には、

何とか、自分の位置を見失わないための、

小さな灯りだけが灯っている。

見つめる僕は、ほっとして、

ようやく、涙を流した。

ありがとう。君が冷静に、必死に、僕を救ってくれた。

僕の人生の中での、何度もしてきた失敗を全部背負ってくれて、

『まだ大丈夫だから。』

『去年よりいい年になってよかったね。』

『宝物がまた増えて嬉しいよ。』

僕の失敗をいつも笑顔で、

『それは僕が背負っとくものだから、こっちにちょうだい。』

と言って、僕と一緒に僕の人生を歩いてくれている僕の中のもう一人の僕

君がようやく流した涙を、今度は僕が引き受けよう。

僕は泣き虫で、弱虫で、今回も君に助けてもらった。

『まだ、僕らの人生は終わらせたらだめだよ。』

いつも僕の苦しい部分を、涼しい顔で引き受けてくれる君に、

いつも僕は迷惑をかけてばかりで、

それでも君は、今回も冷静に、でも必死に。

ぼくたちがいる場所を守るために。

背負ってきた荷物の中から使えそうな知識を総動員して。

ぼくたちの人生がまだ、時間の流れから取り残されないように。

何とか安心できるところまで、

繋ぎとめてくれた。

ありがとう。

この小さな灯りの下で、

しばらくはじっとしているかもしれないけど、

僕は、自分のいる場所を見失わずに、

しっかりとここにいるから。

↓次話



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