大失敗も大成功も味わい尽くそう(5)
「うん・・・・確かに味がない、というか、極薄だね。みそ汁の色にはちゃんとなっているから味噌は入ってるよね。なんでだろう?」
「わかりません、ちゃんと分量も量って入れたんだけど。」
張り切ってみんなを引っ張ってきたあんちゃんは、
ちょっと悲しそうな表情で、僕の方を見上げている。
「あゆ先生、これちょっと味見してみて。」
2班に、ゆで野菜の盛り付け方をアドバイス中のあゆ先生を呼んで、
一緒に味を見てもらう。
「うっすいですね。でもおかしいな、味噌はちゃんと先に量って渡しましたけど、出汁も…うっすらといりこ出汁の味はありますね。」
何でだろう、なんでだろうとみんなで考えていたがどうにも要領を得ない。
「ちょっと2班のみそ汁も味見してみよう。」
そう声をかけて、2班のみそ汁をみんなで味見してみる。
しっかりみその味を感じる。良い出来だった。
「美味いね。うん、確かに美味しい。」
「じゃあ水の量入れすぎたってことかな。」
「え、でも、ととろん先生が、はや君たちに話しているのを聞いていて、僕、お椀で数えて水入れました。」
と、あんちゃんがすぐに応える。
だがその後、まなさんが追従するように口を開いた。
「私も、ととろん先生と2班の話を聞いていたので、お椀で量って水いれました。間違いないです。」
そして、そうくんも、同じようにかぶせてくる。
「僕も、2班がととろん先生に量り方を教えてもらっているのを見ていて、すぐにお椀で量って、水を入れました。」
・・・・ん?
一見問題なさそうに感じた発言だったが、何かおかしい。
「えっと・・・、1班は、みんなでお椀の水を量って入れたのよね?」
1班の面々、はい!とはっきり返事をする。けどこれは・・・・
「あまくんはどうしてたの?」
「僕は、その2班の話は聞いてなかったので入れてません。」
あまくんは申し訳なさそうな声で応える。
「いや、怒ってるとかじゃないから安心して。あまくん「は」、水を入れてないんだね。」
1班の子ども達は、あま君が話を聞いていなかったことで、
叱らるのかもしれないと慌てたのか、
「あまくんは、その時包丁してたので入れられなかっただけなんです。」
「あまくん、ほうれん草のおひたしがんばって切ってました。」
「うん、あま君を責めてるわけでも叱るわけでもないから、安心して。ただちょっと気になったことがあるので、みそ汁の鍋見せてもらっていい?」
みんなで鍋を覗いてみると、そこには、大き目の鍋一杯のみそ汁が。