
大失敗も大成功も味わい尽くそう(1)
エプロンがあっという間に出来上がって、
子ども達は、早くエプロンを付けての活動がしたさそうな様子だ。
エプロンを付けての活動、そう、調理実習である。
6年生での調理実習は大体が二回、多くて三回あって、
一学期が『朝食を作ろう』という単元で、油を使った炒め物の良さを学ぶ。
エプロン作りで主になったあゆ先生に、引き続き『朝食を作ろう』でも、
主になって授業をしてもらいながら、子ども達に調理について、
どのくらいできるか、どんな料理が自信があるかなどを確認する。
すると子どもたち、ここでも素直に率直な気持ちを伝えてくれた。
「料理はやったことないから自信はない。」
「去年の調理実習の時は、交流だったけど、お皿とかフライパン洗うだけで、他のことはさせてもらえなかった。」
そんな気持ちをあんちゃんが寂しそうに話してくれると、みんなも、
うんうんと、自分もそうだったからわかるといった様子で、首を縦に振る。
交流中の通常学級の子ども達を責めるつもりはないが、
やはりそれはすごく寂しい事だっただろうなと、胸が痛くなった。
「じゃあ、あゆ先生。いっそ5年生の時の調理ももう一度やっちゃおう。」
横から僕が提案する。あゆ先生も嬉しそうにうなずき、
「いいですね。ご飯とみそ汁まで作れば、完璧な朝ごはんですね。」
そのやり取りを聞いている子どもたち、
寂しそうだった目はキラキラ光り、その表情は、
わくわくでいっぱいになっている気持ちがにじみ出してきていた。
「できるんですか!?やったぁ!」
と、あんちゃんが両手を上げて喜ぶ。つられてあま君も両手を上げていた。
はや君は机の下で、よし!と握りこぶしに力を入れてにぎり、
かずくんはそんなはや君に笑顔で「楽しみだね。」と声をかける。
まなさんは気合の入った声で「うぉっしゃぁ!」と叫んでから、
「あ、なんかヤバい声で喜んでしまってすみません。」と恥ずかしそう。
そうくんは
「本当にやるんですか?どうしよう、皿洗いしかしてないけど。」
と、不安げだったので、
「その完璧なエプロンを付ければ、一流コックになれるよ。」
と励ますと、
「そんなわけないじゃないですか!大丈夫かな。」
とやはり不安そう。
新しい事への向き合い方も個性豊かな仲良しさんクラスの面々は、
こうして、以前の理科の時のように、調理実習でも取り戻すべく、
炒め物だけでなく、ゆで野菜、みそ汁、ご飯の炊き方ももう一度、
あゆ先生とおさらいをして、調理実習に臨むこととなったのだった。