不登校先生 (15)
助けてくれたのはもう一人の自分だけか。
実際に、一人でここまで何とか踏みとどまるのは、
本当に一人だけでは、無理な事だった。
3人の親友。
3人の親友に助けられた。落ちそうになる自分の腕を
引っ張り上げて落ちていくのを何とか救ってくれた。
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一人目のゆかさんは、僕に心療内科を紹介してくれた親友。
昨年度1年間一緒の学校で働いた、栄養教諭の彼女は、
僕より半年だけ誕生日の早い、ほぼ同い年の人だ。
彼女は、コロナ禍で制限の厳しくなった給食の時間を、
毎週のように動画を作って放送し、
黙々と食事をする時間に、楽しくなる工夫を全力で取り組んでいた。
また、僕のクラスで10月ごろから
毎日のように行われる百人一首の話をすると、
自分の娘さんも百人一首を長くやっているので、
読手さんになろうかと、子ども達の活動を、一緒に楽しんでくれた人だ。
いつも笑顔が絶えない元気な印象の彼女だが、
昔、管理職のパワハラにとことん心をやられて、
彼女自身も、病んで、病休、休職と経験したことがあった。
そんな彼女は、いつでも周りに元気を届けてくれるほど元気だけど、
それ以上にいつも自分自身で自分の楽しみを見つけて、
自分の心の充電を、上手にできる人でもあった。
「ととろんさんの良さを全くわかろうともしないままに、はじいたわけだから、そういう職場に、悪いとか、申し訳ないとかは考えなくてもいいと思うよ。」
そういって、自分の話を聞いてくれていた彼女に、
病院がなかなか見つからないことを相談すると、
「以前私も病んで休んだ時に、診てもらって、今も定期的に見てもらっている病院があるから、電話をかけて確認してみるといいよ。」
そう言って、心療内科を何件も断られていた時に、
自分が診てもらっていた病院を紹介してくれた。
おかげで、僕は、命をつなぐことができた。
救われたのだ。
ゆかさんはいつもの笑顔で、「よかったねぇ。」
と自分のことのようにほっとしてくれた。
自分のことをそんな風に心配してくれて、
救われたあなたに何も返していなくても、
「よかったねぇ。」
と笑って言ってくれるゆかさんが、
いつか今度は落ち込んだりするときには、
僕はこの人のためにできる限りのことをしたい。
そう、思った。
↓次話
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