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やる気スイッチは子ども、自身でつけるもの(6)

「おはようございます、船長、姉さん、使ってください。」

挨拶をするやいないや、僕は二人に、CDホルダーを渡した。

中には、CDとDVDが一枚ずつ。

連休前、居残りで夢中になって踊る子ども達を見て、

何か僕ができることは無いかと考えたが、

自分たちからやる気になりだした子達にできることは、

そのやる気が存分に活動できる満足感になるように、

環境を整えたり、ケガなどがないように見守ることくらいしかないなと、

そう考えもまとまった。しかし、あれだけ激しいダンスは、

学年集会に使っている教室でも、8人で3分の一くらいのスペースがないと、

周りを気にせずに練習する事はできない。

おそらく連休明けからは、日を追うごとに自主練したくなる子どもも増えるのではないだろうか。

そんなことを感じたので、僕はその日、船長にお願いしてDVDを貸してもらい、

連休中にダビングを各クラス分+2枚、作ってきたのだった。

体育館での練習がいつでもできれば、それに越したことは無いが、

学校行事である運動会で、1つの学年が体育館をずっと使えることは不可能である。

であれば、それぞれのクラスの体育の時間や、休み時間など、

限られた空間(空き教室など)で踊る場所を探すことになるだろう。

そうなったときに、ソーランのDVDやCDが、最低でも各クラス分あれば、

練習したいときに、その都度船長にお断りして、

練習している教室まで取りに行くという時間のロスがなくなるし、

1枚しかなくて、失くしたら大変、なんてことにもならない。

環境を整えるために僕ができることは、それくらいしかないけれど、

これで、5年生の子達の中で、ソーランやる気スイッチが入った子が、

「練習教室がいっぱいで練習できない。」

「自分の教室でも自主練がしたい。」

などの要望が出てきても、すぐに対応できる。

ちょっとしたことだが、だいぶ違ってくるだろうと思いながら、

連休明けは、始まった。

校舎に入る玄関があいてまもなく、やっぱり連休前に居残りした子達は、

一番に学校に来ていて、早々と朝やることを済ませて、練習ルームになっている教室の前に集まっていた。

「先生早く。」

鍵を開けに急いで駆け上がった僕だったが、

子ども達のやる気に追いついていなかった。

「ごめんごめん、すぐ開けるね。」

と、教室の鍵を開ける。子ども達は、申し合わせたわけでもないだろうに、

てきぱきと手分けして窓を開けていき、テレビの位置を調整する。

「みんな、再生してもいい?」

「いいよー。」

手際よくダンスルームの準備を整えて、朝一番から明るい声が練習ルームに響く。

明日からは、玄関が開くまでに、鍵を開けに上がっておこうと思った。


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