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大迫力のクラウディ鬼・面白可愛すぎるあんちゃん鬼(3)

「あんちゃん、すごかったねぇ!」

「うん、すごく上手な鬼だった。」

「かっこよかったよ、あんちゃん。」

鬼の練り歩きが終わった後、クラスの仲間達から喝采を受けるあんちゃん。

照れている顔も可愛い。

「あんちゃん、楽しかったですね。グッドジョブです。」

クラウディオとのハイタッチ、やり切ったあんちゃんの顔は

汗と、達成感できらきらしていた。

「クラウディオ、ありがとう。フジさんもありがとうございます。」

「こちらこそ、楽しかったよ。僕にも声かけてくれてありがとうね。」

とフジさんも急遽のお願いでも、楽しくしてくださったのがわかった。

「ととろんブラザー、本当にありがとう。こんな風に節分をできたのは、初めてだから、思い出になりました。」

日本のことも大好きで、ステイしてまで旅に来てくれたクラウディオに、

仲良くなってもらえた僕は、一つでも多く日本の素敵な思い出をあげたい。

そんな思いがあったので、やはり、その言葉が嬉しかった。

そしてあんちゃんにも、ねぎらいと称賛を

「あんちゃんが言ってくれなかったら、今年は鬼はあきらめていたのだけれど、こうして楽しくできてうれしかった。あんちゃんが一年生に、上手にやられながらも鬼をやっているはすごくよかったよ。」

そう話すと、あんちゃん、興奮気味に

「これは絶対やる価値がある!みんなもやればいいのに!」

この愛嬌と素直さが、あんちゃんの魅力だ。

そして、そのノリをそのまんま具現化しちゃえるのが、

仲良しさんクラスのいいところで、そのまま6時間目は、

鬼を交代ごうたいにやって豆まきをするという、

クラスの中での鬼合戦に突入していくのだった。

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クラウディオのALTの勤務が2月の下旬までとわかったのはその数日後、

これだけ親しくクラウディオに、何か思い出に残るお礼がしたい。

そんなことを思って考えていると、財布の中のあるカードが目に入った。

それは豆腐懐石料理店のポイントカード。

前任校の時、今の勤務校の2年、トータル5年間、

折々に、このお店で、飲み会をしていたので、

2万円ほど使えるポイントがたまっていた。

講師で薄給の僕だけど、これなら、豪勢にクラウディオの送別会ができる。

使うのは今だと思い、特別支援クラスの先生たちに、送別会を提案すると、

皆さん快くOKしてくれたので、クラウディオを誘うことにした。

「クラウディオ、この一年本当に沢山仲良くしてくれてありがとう。子ども達の楽しみもクラウディオのおかげで倍にふえたよ。でね、今度の勤務の日に、クラウディオとステファン一緒に、送別会をしないかい?」

「ととろんブラザーありがとう。そんなにしてもらってもいいのですか?」

「うん、もちろん。そしてこれは先日の鬼もそうだけど一年間の感謝を込めて、僕からのごちそうで招待します♪」

「嬉しいです。ぜひ行かせてください。」

豆腐懐石料理店は、店名通りに華やかで、美味しく、

その上、お座敷の雰囲気なども実に「和」な感じだ。

クラウディオとステファニーは、料理屋雰囲気を満喫してくれたようで

「本当に日本での素敵な思い出になりました。ありがとう。」

と言葉をくれた。素敵な思い出をもらえたのはこちらの方だよ。

ありがとう。と僕は思った。

そして一週間後、クラウディオ最後の勤務の日

「ととろん先生。ちょっといいですか。」

「ん、どうしたん?クラウディオ。」

「この前の日曜日に、ステファンと一緒にデパートに行って、ととろんブラザーに、お礼を選んできたんだ。もらってくれるかい。」

「クラウディオ。気を遣わせてしまったね。ありがとう。ぜひ頂くよ。」

クラウディオがくれたプレゼントの袋を開けると、

お箸だった。奇麗な木目の檜で、漆塗りの丁寧な箸箱と、

少し長い漆黒にまで塗られた丁寧な漆塗りのお箸。

持ち手には、一本に満月、一本にうさぎの金箔画が施されていて、

何とも「和」なお箸だ。

「今日から大事に使わせてもらうね。」

この日から7年。僕の学校でのお箸はずっと、

クラウディオをステファニーからプレゼントされたお箸である。

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